上手な力の入れ方がわからない。
大学のときに入っていた市民吹奏楽団に、教え方の上手なお兄さんがいた。
中学から続けていたクラリネット。必死になったとか没頭したとかいうほど頑張った記憶はないけれど、弱小部でも練習は毎日あった。私は、ソロをもらうほど上手ではないけれど決して下手ではなかった。
楽団に入ると、セミプロ(あるいはすごく上手いアマチュア)みたいな人が何人かいた。そのお兄さんもそうだった。
レッスンなどほとんど受けずに何となくで8年くらい続けてきたクラリネットを、初めてきちんと人に教わった。
そのとき指摘されて気がついた。私は身体全体に力が入りすぎている。
クラリネットはリード(マウスピースの裏側に当てて振動させるもの)に歯を当てないように、下唇を巻き込んで下の歯で噛み、上の歯はマウスピースに立てる。リコーダーのように力を入れずに吹くのでは息もれしてしまうので、力を入れて息を吹き込む。
キーを押さえて音を出すのだけれど、このキーは他の木管楽器と違って、ボタン式でなく穴をふさぐようになっている。慣れなかったり手が小さかったりすると、うまく穴がふさがらなくて思う音が出ない。
こういう仕組みの楽器だから、ある程度力を入れる必要はある。けれど私の場合は必要のないところに力が入りすぎているのだという。
例えば肩がこわばってしまっていたり、キーを押さえる指ががちがちに固まってしまっていたり。マウスピースを咥える口も、そんなに力を入れすぎなくていいと言われた。
姿勢は自然に。力を入れると深く息が入らなくなる。指は添える程度でも大丈夫。頭の後ろ側に力を入れる点があるようなイメージで、口や顔はこわばらせずに吹く。
言葉で伝えられることの一つ一つが、自己流で当たり前になっていた癖を意識させた。私はきっと、必要ではないところに力を入れすぎていたのだろう。頭で理解して、自分を客観視して良いイメージを描けるようになった。癖は身体に染みついていたから、イメージを実践できたかはまた別の話。
思えば小さい頃から変わらない鉛筆の持ち方も、昔々に力を入れすぎだと言われたことがある。鉛筆が紙に対して直角になるくらい、立てて書いてしまうのだ。
一時期ハマっていた編み物も、知り合いのおばちゃんのところに作品を見せに行ったら「きっちりしてるねー」と驚かれた。私の作ったミニバッグは編み目がかなり詰まっていたらしい。おばちゃんの作ったものを見せてもらったら、ゆったりとした編み目に余裕が感じられた。
力みすぎないということが、私はまだ苦手だ。自覚している部分だけじゃなく、いろんなことに関してそうなのだろうなあ。文章にもそれが表れているような気がする。
できればゆったり余裕を持って、必要な部分にだけちゃんと力を使えるようになりたい。