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89歳からのサプライズ

特別養護老人ホームかがやきに暮らすおばあちゃんの話。
おばあちゃんの娘さんが施設に来られたのは1週間前のことでした。
かがやきでおばあちゃんとの時間を過ごした娘さんから
「今回の結婚式、おばあちゃんは出席しないことにしました」という言葉をもらいました。

スイカを食べる今回の主人公

1週間後はおばあちゃんの大切なお孫さんの結婚式です。
娘さんとしても連れて行きたい気持ちは山々でしたが、様々な難しさを感じて断念せざるを得ませんでした。
しかし、娘さんの言葉を聞いたスタッフの心は動きました。

「なんとかしておばあちゃんを孫の結婚式に出席させてあげたい!」


その日のうちに娘さんに再度連絡を取りました。
「スタッフが付き添いますので、どうにか結婚式に出席できませんか?」と言いました。
娘さんは静かに「そこまでしてもらわなくても大丈夫です、その気持ちだけで十分嬉しいです」と返事されました。
娘さんの声からは、諦めの気持ちの反面、やるせない気持ちが伝わってきました。
そこで、スタッフは思い切った提案をしました。
「サプライズで会場に連れていきませんか?」
電話の向こうの娘さんからしばらく沈黙した後、「本当に良いんですか?」と涙声で聞き返されました。
娘さんの胸の奥に眠っていた本当の気持ちが、一気に溢れ出た瞬間でした。

それから、結婚式当日に向けた準備が始まりました。
スタッフたちは、おばあちゃんがお孫さんに贈るためのプレゼントを一緒に作りました。

スタッフと二人三脚で準備を進めました

手作りで一つ一つ丁寧にスタッフと協力しながら作りました


動画が作れるスタッフは、会場でのサプライズ登場のための映像を制作しました。
車椅子の動線やトイレの設備を事前にチェックするために会場にも足を運んでくれたスタッフもいました。
おばあちゃんを結婚式に参加させたいという娘さんの気持ちに寄り添い、スタッフ一人一人がその想いに共感して動きました。

スタッフの思いは、「介護が必要になっても、認知症になっても、当たり前の日常を当たり前に送ってほしい」という願いでした。
おばあちゃんにとって、その日常の延長に孫の結婚式がありました。

いよいよ当日を迎えました。

会場は温かな拍手と歓声に包み込まれました


おばあちゃんが会場に姿を現した瞬間、驚きの声とともに会場が感動の涙と笑顔に包まれました。
娘さんをはじめ、親族の方々も皆涙を流し、明るい表情で写真を撮り合っていました。
サプライズは大成功でした。

お孫さんとおばあちゃん


帰り際、親族の方々からは「ありがとうございました」という言葉が幾度も飛び交い感謝が絶えませんでした。
介護の仕事は、介護をするだけではありません。
デザイナーのように、その人らしさを見つけていくのも、また介護の仕事だと思います。
目の前にいる人がどんな状況にあっても、その人らしさを大切にしながら、新たな可能性を探っていきます。
日常の中のさりげない言葉や行動から、次のアイデアが生まれ、試行錯誤を繰り返していきます。
おばあちゃんらしさに出会い、幸せを感じたサプライズとなりました。

ご家族の皆様、ご協力いがだきありがとうございました。
また、思いを一つに、積極的に動いてくれたスタッフたちに大変感謝しています


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