GIGAスクールで、「教える授業」から「考える授業」への変化を加速させる
GIGAスクール構想で生徒一人一台PC・タブレットが配布されました。
生徒はいつでも学習教材アクセスすることやアウトプットを共有することが可能です。
これで、これからの授業デザインが大きく変わるのは間違いないでしょう。
先日、研究指定校の中学校の視察の機会がありました。
仕事柄、ICT活用の現場を長年見てきましたが、今回だいぶ様子が変わったことに気づきました。
何が変わったか。
それは生徒たちのICT活用の「自由度」と「普段使い」です。
まず「自由度」
ある英語の授業で「単語の過去形を学ぶ」単元でドリルを解くシーンがあったのですが、タブレットの使い方が生徒でまちまちで多様なのです。
・ある生徒は、タブレットにペンで直接書き
・ある生徒は、紙に鉛筆で書き
・ある生徒は、答えをタブレットで見ながら、紙に丸付けを行っているのです。
先生は机間指導をしたり、進捗をチェックして困っている生徒のフォローは行いますが、ICTをどう使うかは生徒たちに任せてられています。
ちなみに10年前の授業は教員コントロール型です。
「はい。タブレットを出してください。」
「はい。次にこれに回答しましょう。」
「はい。プロジェクタに投影しますよ。」
「はい。タブレットを机にしまってください。」
といった具合です。子どもたちは先生の指導通りしか使っていませんでした。だいぶ変わりましたね。
次に「普段使い」です。
昼休みのことですが、生徒たちの手にはタブレットがあります。
・生徒会で議事録を共有しながら会議を進行したり
・放送部が全校生徒からの意見を集計したり
・情報検索して学級新聞をプレゼンソフトで作ったり
・部活の予定表をドライブで共有して配ったり
まさにICTの「普段使い」が当たり前になっているのです。これはクラウドシステムの利用が大きく寄与しています。
この「自由度」と「普段使い」という変化を捉えたときに、授業の進め方も転換期を迎えるでしょう。もう生徒たちの使いこなすスキルは問題ないのですから、次は教員側が授業をどう変えるのかということになります。
それは
「教えられる授業」から「自ら考える授業」への変化
です。
「21世紀型能力」の前に「21世紀型教師力」と言われて久しいですが、まさに、一人一台PC・タブレットとクラウドシステムがあることで、簡単に考える授業をデザインできるようになったと言えます。
学習指導案という、教員が指導するための設計図があります。先生は誰でも作ったことがあるでしょう。
GIGAスクールの時代の指導案とはどういうものでしょうか。元々指導案は教える流れが書いてあるものですが、これからの時代は
「如何に学び合うか」
「探求できるか」
が重要ですので学習指導案には
「場づくり」
と
「発問」
といったファシリテーションが盛り込まれるはずです。正解が1つでない多様な学びの場を創り出す技術です。生徒のやる気を引き出す共感的傾聴もその1つですね。
これからの教員は「学びのデザイナー」と言えるでしょう。
ティーチャーからファシリテーターへの転換として、例えば知識を与える部分は教えるのが上手い先生の動画を生徒と一緒に見たあとに、学び合いのファシリテーションを行うという授業もあっていいと思います。
それは決して教員の在り方を否定するものではなく、むしろ賞賛されるべきものかと思います。
(英語のデジタル教科書が小中学校に無料配布されますが、正しい発音を伝えるのに有効な手段となるでしょう)
そして、「自ら考える授業」をより深くするために
・生徒自身が教材を作ること
が有効である考えます。
学習は教わるよりも教えている方が定着します。何より楽しいですし、感謝されるので喜びもあります。
勉強を友達に教えたり、お互いに学び合ったりすることは、最高の「考える授業」と言えます。
すでに、先進校では、生徒が生徒に教えるための「動画」を作って活用していますし、学校を超えて他校の生徒とディベートで学び合う「コラボ授業」を実践している学校もあります。
知識に関してはインターネットにあります。教科書だって情報の一部にすぎません。お決まりの知識では「つまらない」ですし、生徒たちが作った教材は「面白く生きた教材」となるでしょう。
これが進めば、これからの教室は先生が勉強教える場から生徒同士が学び合う場に変わる可能性だってあります。
まさに、薩摩藩の「郷中教育」ですね。
GIGAスクールによってこのようにパラダイム転換が起きようとしています。
今の中高生が社会にでるまであと数年。そのとき、社会も大きく前進すると思われます。
これからの教育変革には期待大ですね。