そうゆう見え方なら。【短編】
ご観覧有難う御座います。
6、7分でサクッと読めます!
もしよかったら読んで行ってください(´∀`)
「、、、なんでだよ。くそっ。」
男は車を運転しながら独り言を言う。
時間は23時。
最近は毎日帰るのがこの時間だ。
当然残業になる時間だが。
男が勤めている会社は残業として認めず。
残業がつかない。
しかし男にはやっと見つかった仕事だったので。
この環境にしがみつくしかなかった。
会社から車を走らせて20分。
家に着いた。
「はぁ。」
男は一人暮らし。名前は橋田という。
帰るなり昨日作ったカレーを温める。
37歳。彼女はいない。
早く帰れる日は飲みに出かける。
橋田は飯を食い終わると部屋の窓を開けてタバコに火をつけた。
ーふぅー
ゆっくりと煙が充満する。
橋田は何に先程までイライラしていたのだろう。
実は仕事中にこんな事があった。
ー日中ー
橋田「阿部。この仕事、明後日までだけど、進捗どうだ?」
阿部「え、それ僕の仕事でしたっけ?橋田さんがやるって言ってましたよね。」
阿部という部下は平気で嘘をつく。
橋田「メールで飛ばしたよね。その後話もしたし。先週のグループミーティングでも話したよな。」
阿部「そうでしたっけ?すいません。何もやってません。」
橋田「そうか。わかった。俺がやっとく。」
橋田「今、案件2つぐらいだったよな。」
阿部「そうですね。結構いっぱいいっぱいです。」
橋田「そうか。どこで悩んでいるんだ、、、」
ここから1on1が始まった。
現在の進捗、調整具合、全て確認し合い目処をつけて阿部から離れる。
時刻は19時過ぎ。
阿部「お先に失礼しまーす。」
橋田「はーい。」
橋田は阿部から引き取った仕事を進めていた。
部下を働かせるのも大変だ。
とは言っても殆どの部下が優秀で、とても仕事が早い。
阿部だけが雑で遅いのだ。
しかし橋田はそれに心底疲れてしまっていた。
日中こんな事があったのだった。
橋田「どうするかね。」
橋田は一人つぶやいた。
最近仕事にやりがいを感じなくなってきていた。
窓の外に向かって煙を吐く。
橋田「他の仕事なんか、俺にはねぇよなぁ。」
橋田はよく腐る。
しかし他人に愚痴は吐かない事にしている。
不器用なのだ。
何回かチャレンジした事がある。
他人に愚痴を吐く事に。
だが見事に失敗した。
自分が吐いた後にすっきりすると思った。
他人から出てきた、返ってきた言葉は。
橋田がその時に欲しかった言葉ではなかった。
そして心にはモヤモヤが残った。
結果的に橋田はそれから愚痴を吐く事を辞めた。
これは仕事においても一緒だ。
自分が部下に求めるもの。
部下が上司が求めるもの。
自分がその他のものに求めるもの。
期待している通りに結果が返ってくるものだと思っていると。
大抵良い結果にはならない。
橋田「まあ、明日もあるかー。」
橋田は缶ビールを空け、寝についた。
ー次の日ー
橋田「おはようございますー。」
阿部「おはようございます。」
橋田は席につく。
阿部「橋田さん、昨日の件なんですけど。」
橋田「あぁ。もう終わった。それより他の案件どうだ?」
阿部「、、すいませんでした。」
阿部が謝ってきた。
今までそんな事がなかったから少し驚いた。
橋田「う、、うん?いいよ。大した事じゃないし。」
阿部「でも昨日遅くまで残ってやってくれてたじゃないですか。僕明後日までって思って、明日手伝えばいっかと思って帰ったんです、、」
橋田「、、、そっか。チェックの時間も欲しいからな。今日は資料の再確認に時間を使う。」
阿部「それ、やらせてください。」
橋田「わかった。じゃあ10時から1時間よろしくな。」
阿部「はい。」
橋田(なにがあったんだ?まあまたミスがあるから油断はできないな。)
橋田は本当によくわからなかった。
渡辺「橋田さん、おはよーございます!」
橋田の部下の渡辺だ。阿部とは年が近い。
渡辺「阿部、きてます?」
橋田「うん、こう言っちゃ悪いけど珍しく早く。」
渡辺「昨日若手で飲んでたんですよ。そしたら橋田さんの話になって。」
橋田「え、何。」
渡辺「そんな嫌がらないでください。笑 みんなして橋田さんいないと仕事に回らないよなー。って。」
橋田「へ、、、」
渡辺「阿部も何回かミスしてるけど許してもらってるのに甘えてるって自分で言ってて。昨日、最後の方で会社向かったみたいで。」
橋田「、、、」
渡辺「あいつが行った頃、橋田さん帰っちゃって行き違いになったって言ってて。」
橋田「なるほど、それで今日早く。」
渡辺「少しは真面目になるかもしれません。」
橋田「そうか、、、渡辺。有難うな。」
渡辺「いえ!後で資料のチェックお願いしますね。」
橋田は部下からどう思われているか正直分からなかった。業務の合間に聞く機会もなかったからだ。
正直少し古臭いスタイルで仕事していたので、もっとしんどく思われているかと思った。
渡辺から伝えてもらった事で、少し心が晴れた。
いつも仕事してる仲間のおかげで。
そうゆう見え方なら。
自分はこのままで良いかもしれないと思えたのだった。
長月 暁人