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ネギ坊主

 市場に出回らない食材が手に入ることは、自家栽培の魅力の一つだ。
 今の時期収穫できるものに、ネギ坊主がある。ネギの花の部分のことだ。にょきっと長く伸びたネギのてっぺんに、坊主頭のような丸いつぼみをつける。ここまで育つとネギのとうが立ってしまうため引き抜いてしまうのが普通だが、その前に、是非収穫したい。
 開花すると坊主頭がアフロヘアーになり、パサパサの口当たりになってしまうので、必ずつぼみの時に摘み取るべし。

 藤子・F・不二雄氏のアニメに、コロ助というキャラクターがいる。彼のあだ名は「ネギ坊主」だ。さむらい語をしゃべるロボットで、頭のちょんまげがネギ坊主そっくり。彼にこのあだ名をつけたのは八百屋のおやじさんだという。さすが八百屋の着眼点である。

 ネギ坊主は、炒め物にしても揚げ物にしてもお浸しにしても美味しい。中でも私のお気に入りは天ぷらだ。サクッと揚げて塩で食べれば、ちょっとお高い和食屋に来たような気分になる。ネギの味とつぼみのほろ苦さ。山菜に通じる大人の味だ。

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 農作物は、皮などの捨ててしまう部分に高い栄養価があることは良く知られているが、その栄養価の数字が本当に正しいのかどうか、自分で確かめることはできない。
 けれど、味は自分で確かめることができる。野菜は、通常捨てられてしまう部分が美味しい。味が濃い。深い。だから栄養価も高いはずだ。私はそう信じている。

 この時期、畑のわきを歩くと、花開いてしまったネギ坊主が並んでいることがある。可愛い坊主頭たちは、きっとこのあと引き抜かれてしまうのだろうなと切なくなりながら、私は横を通り過ぎるのだ。(了)




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ながたみかこ(著述業)
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