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「虎に翼」とは何だったのか
「虎に翼」のテーマとは、ということを第1話からずっと考えてきた。
この木曜を終えて、
この作品は、三淵嘉子氏と法曹の仲間たちをモチーフに日本国憲法14条をドラマ化したもので、人と人との関係は平等であり、気持ちを利用した搾取はあってはならず(美佐江に通じる)、でも、思いがあってもすれ違うことがあり、だからこそ、思っていることをしっかり伝え合うことでより良い道を探すしかないのだ、ということを描き続けてきたのだろう。
と結論づけてみた。
「思っていることをしっかり伝え合おう」というのは、「俺には分かる」とずっと的外れなことを言っていた寅子の兄の直道の言で、それを今、一番実践している道男は直道の生まれ変わり、という物語構造なのだろう、と思う。
寅子はこの後、航一の子ども2人、そしておそらくは美佐江と対峙するわけだけれど、上記の方向性で解決していくのだろう。
結局このドラマは第1話からずっとブレずに、このことを伝えてきたのだと思う(そう考えると、ラスボスは美佐江ではなく、よねさんか花江さんなのかもしれない)。
おそらくこのままだと原爆裁判がクライマックスで、「あの戦争とは何だったのか」という寅子の言葉の答えは、「戦争というのは、国民の愛国心を国が搾取する行為であり、だからこそ許されない」ということなのではないか、と思う。
今、この作品の内容を非難している人たちの理由は様々だと思うのだけれど、それは結局は、愛国心を搾取された行為なのではないか、ということをメタ的にこの作品は訴えているのではないだろうか。
いや、実は、搾取している側と搾取されている側は、逆なのかもしれないけれど。
「うる星やつら」のフォーマットをハックした押井守の映画「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」、同じく「ルパン三世」のフォーマットをハックした宮崎駿の映画「ルパン三世 カリオストロの城」と同様、吉田恵里香ら制作陣は「朝ドラ」の構図をハックして、この作品を作り上げたのだと思う(敬称略)。