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飲食店勤務経験ゼロからカフェを立ち上げるまで/保健所、消防署への手続き

久々になってしまいました。「飲食店勤務経験ゼロからカフェを立ち上げるまで」シリーズの5本目となります。
これまでの経緯は以下のリンクを。

というわけで、2023年10月24日、無事に物件を入手することができました。
概要は売主・買主間で合意していましたが、最終的な契約は不動産会社を通すこととし、日光市に行って書面の取り交わし。
司法書士の方にも来ていただいて、法務局への届出もやっていただきました。
後日、登記事項の証明書が都内の自宅に届きました。

さて、次のステップは、この建物を飲食店ができるように工事し、保健所や消防署に届け出ること。
これがクリアできてようやく、飲食店が開業できます。

この物件を購入した大きな理由の一つとして、売主の方が「結局、飲食店営業はしなかったのだけれど、一度、保健所の営業許可は取っている」とおっしゃっていたことでした。

飲食店勤務経験がゼロの身として、一番安心で手っ取り早いのは、元々飲食店を営業していたお店を居抜きで購入すること。
この物件に巡り合うまでもずっと、そうした物件を探していました。

今回の物件、実は、「一度営業許可は取った」とは言うものの、実際の営業はしていなかったため、シンクを取り外していました。
本来ならばもちろん、シンクも備わった物件を購入した方が楽だったのですが、「シンクをつけるくらいならば、とんでもない手間やコストがかかるわけでもないだろうし、許容範囲かな」と考え、購入することにしました。

結論からすると、このシンクがついていなかったことで、営業許可を取るまでの道のりはそれなりに大変だったのは確かですが、そうしたデメリットだけでなく、メリットも一応はあったので、受け止め次第なのかな、と思っています。

メリットとは何か、と言われると、端的に言えば下記の写真。

奥に冷蔵庫。庫内の温度が計れる温度計も写っています。手前には2槽シンクと手洗い設備

飲食店をやるには冷蔵庫が必要なのですが、もちろん、冷蔵庫は自前で用意しなくてはならず、仮にこの物件を購入当時にシンクが備えつけられていたら、冷蔵庫を入れるのに苦労していただろうなぁ……と。

冷蔵庫やシンクなどを入れる前の厨房。厨房には、床に写っている排水口も必要。写真に写っていない左側に、冷蔵庫を入れるスペースがあります

そういう意味では、シンクがなかったことにも良かった点があったかな、と思います。

さて、そのシンク。
私が受講した東京での講習会で配布された「食品衛生責任者教本 ー東京都福祉保健局監修ー」(一般社団法人東京都食品衛生協会。昭和53年6月30日初版発行、令和2年7月1日45版発行)には、「洗浄設備:飲食店営業の洗浄設備の流し(シンク)は、2槽以上なければなりません」とご丁寧に太字で書かれていたのですが、栃木県ではシンクは3槽以上、かつ、手洗い設備もないといけない、とのこと。
そう、飲食店営業に必要とされる設備って、自治体によって違うんですね。

渋谷区でバーをやっている友人に聞いたら、「渋谷区は、厨房の水栓はセンサー式じゃないとダメ」だとか。
いやあ、渋谷区で飲食店をやるとしたら、これはお金がかかりますね。

ただ、栃木県が基準の厳しい自治体か、と言われると、必ずしもそうではなく、他の自治体では、シンクの幅は45センチ以上とされることが多いのですが、「幅は別に基準はありません」と言われました。
ただ、手洗い設備は節約のために極力小型にしようとしたら、「それだと指先しか洗えないじゃないですか。手はしっかり洗っていただきたいので」とNGとなり、一回り大きいものに変更しました。
色々ですね……。

飲食店営業許可については、まずは全ての準備を始める前に、お店の住所を管轄する保健所に行って相談。
上記のように、それぞれの自治体ごとのルールがあるので、詳しく聞きましょう。
分からないことは、率直に色々と聞いた方が良いと思います。

保健所も消防署も、最終的には現地調査が入りますが、その前に図面の審査を受けます。
今回の私のように、シンクや手洗い設備を設置する工事が必要になることがありますが、工事の前に、「こんな感じのレイアウトにします」という図面を示して、「これならばOKですね」と了承を得ます。
図面は、絵を描くのが苦手な私としては、うまく真っ直ぐな線を引いて描ける自信がなかったので、エクセルの方眼を利用して作りました。

ただ、そのレイアウトも机上の空論ではいけないので、工事をしてくれる業者の方と連携を取りながらやることが大事です。
私は、日光市内で飲食店経営もされているリフォーム業者さんに依頼しました。
自ら飲食店経営をしているならば、シンクの条件などについても詳しい、と思ったからです。

保健所にレイアウトを見せ、好感触を得たら、業者さんに示して、実際に物件まで足を運んでもらって色々と測ってもらい、業者さん作成の設置案と見積もりをもらいます。
それを元に図面を手直しして、また保健所に見せて、「この図面の通りだったらOKですね」と了承を得て初めて、業者さんに工事を依頼。
工事が完了したら、保健所の担当者に現地調査に来てもらって、図面の通りに工事が済んでいることを確認してもらったら基本、営業許可が出ます。

ちなみに、水栓からちゃんと水が流れるか、も保健所はチェックします。私は元々厨房にあったシンクを三つ目のシンクにしたため、2漕シンクと手洗い設備を新設しました

さて、次は消防署です。
恥ずかしながら、消防署への届出も必要だと知らなかったので、店内にこたつルームを作った際、カーテンやカーペットはトップ写真の防炎マークのついた製品を使わないとダメだということが分からず、防炎じゃないものを買ってしまいました。

当初、防炎ではないカーペットを敷いてしまったこたつルーム。このカーペット、使い道を考えなくては……

また、店舗部分ではない2階のロフトのカーペットも対象に。
建設時から敷かれている「フロックカーペットもしくはコードカーペット」というものだと、例外的に防炎ではなくても認められるそうで、消防署の方に見に来ていただいたのですが、結局、NGとのこと。

糊で床に貼りつけられていた2階のカーペット。外すのが大変でした……

床に糊でがっちりくっついていたので、カーペットを切れるハサミをわざわざ買い、苦労して切り取って、新しく防炎のカーペットを敷きました。
防炎カーペットは普通のカーペットよりももちろん、割高なので、痛い出費でしたね……。

消火器は業務用が必要。
家庭用より若干高いようですが、こちらは消防署に確認したので、無駄に家庭用を買わずに済みました。

今回必要な届出は、

・防火対象物使用開始届出
・消防用設備等設置届出

で、そのために「案内図、位置図、平面図、設備の試験結果及び仕様書等」といった書類の添付が必要でした。
なお、提出用と自分の控えとで、正副2部を出すことになります(無事にOKが出たら、副本の方にハンコが押されて戻ってきます)。

消防署に書類を提出し、問題なかったら、書類通りかどうかの確認のために署員の方々が直接視察に来ます(事前に日程調整をします)。
それでOKが出たら、無事に営業できます。

こうして2023年3月19日日曜、無事に「カフェときどき」をオープンさせることができました。

【追記】
この記事は全文公開していますが、「カフェときどきサポーターズクラブ」対象記事にしています。
サポーターズクラブは月500円ですが、栃木県日光市で私が運営している「カフェときどき」で飲食していただいた際、お支払いいただいた額は割り引くので、一種の前売券システムのような形になっています。
ランニングコストのかかる飲食店では、サブスク的にいただけるお金は大変ありがたいもの。
「この取り組みを応援したい!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひご協力いただけますと嬉しく思います。

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