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これがリアル

よく筋肉を攣る。

色々理由はあるっぽいけど
僕の場合、睡眠不足だったり水分不足だったりで症状が出る。

「あ、今日水飲んでねーな。」
なんて考えている頃には既に攣っている。
そんな体質なので水分は十分すぎるほどに摂ることにしている。

そうすると皆さんご存知の尿意という新たな敵が襲ってくるわけで。


次から次へと百鬼夜行かよ。

尿意との付き合いは大変長くなるが、良い思い出なんてちっともない。

高1の夏、今でも忘れられない激闘を繰り広げたことがある。

部活の合宿で隣県へ行ってきた帰り。
監督の運転するバスはまぁ停まらない。
停まるだろうなぁってとこで停まらない。

早く家に着けるに越したことはないので、むしろありがたい。

と思っていた。

まさかたかだか10分後に思いを違えることになろうとは。

合宿地を出発する前のコンビニで、帰りのお供としてチョイスした1リットルのレモンティーがすこぶるよくなかった。

僕は大の紅茶好きなのだけれど、
紅茶は大の利尿作用持ちなのです。


そりゃあ頭ではわかってはいたさ。

でも今まで紅茶をチョイスしてミスしたことはなかったし、「自分は大丈夫」という謎の、しかしそれでいて絶大な信頼を紅茶には寄せていた。

滑り出しは順調そのものだった。
遠ざかる景色に青春を感じながら隣に目をやると、
中学からのチームメイトが自慢の天然パーマをこちらに向けニヤニヤしていた。

ああ、アホなんだな。と思いつつも、合宿終わりながら通常運転の彼に感心せざるを得ない。

何度も往復した道(監督の運転で)。
爆睡勢と、疲れてるけど全然寝る気になれなくて周りとわちゃわちゃしたいのにそこまで元気残ってる人がいなくて結局スマホに行き着く勢に分かれる構図はいつものことだ。

僕はいつもどちらかというと後者なんだけど、この日は新たな派閥だった。
そう、尿意と格闘勢である。

終着点である高校まで約2時間。
停まりそうで停まらないバス。
1年生だったということもあってなかなか言い出せずにいた。

途中で周りに打ち明けると親身になって相談に乗ってくれた。
空のペットボトルを差し出してくれた先輩も居たが、満員のバス内でのそれはリスキーすぎた。
よって却下せざるを得なかったわけだけど、それ以外に手段がなかったのも事実。

じゃあどうしたか。

耐えたのだ。

スマホの地図アプリを見ながら、少しずつ近付く
母校への距離に全てを託して。

気付けば尿意を感じ始めてから2時間が経っていた。

今までで1番よく分からないぐちゃぐちゃな感情に襲われながら、見慣れた建物に駆け込んだ。

本当に、ほんとうにギリッギリの勝負だった。

事を済ませ手を洗い、顔を上げる。

鏡に映ったのは、ギリギリでいつも生きていたい
わけではない僕のリアルフェイスだった。

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