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「週刊金曜日」(2023年12月1日号)に今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』(中公新書)の書評を書きました。

この本の素晴らしいところは、「言語とは何か」を身体性の方向から考えるところなんですね。著者の二人はその考察の鍵を「記号接地問題」という人工知能研究の最重要テーマから取り出します。

「記号接地問題」とは、言葉は身体感覚と接地していなければならず、記号の意味を記号だけで記述することはできない、とする考えのこと。ここから取り出した「言語の本質」を解明するための鍵を、では、どこへ差し込むのかというと、なんと「オノマトペ」なんです。

人類が言語を習得し、扱う、その知的な活動を行う上で身体的な感覚がどのように寄与してきたのか。そのことを考えるとき、「オノマトペ」は格好の材料となる。なぜなら、言葉と身体の親密な関係性、言語を言語たらしめる性質、言語が進化する動態、それら全てがそこには詰まっているからです。

「オノマトペ」の考察を通じて、人間が言葉を身につけた謎を解く著者の二人は、やがて、議論を「アブダクション」(推論)の秘密へと移行させます。この論述がとにかくスリルフルで刺激的。「言語とは何か」をめぐる議論は、人間に固有の「アブダクション」という能力の解明へ向かい、気づけば「人間とは何か」という主題に移っていく。この流れに陶然とさせられること必至です。

AIが跋扈する時代にあって、人工知能と人間の認識能力の決定的な違いを教えてくれる一冊。まじかよ、やべー、やべー!!を連発しながら読みました。2023年の「マイベスト新書・オブ・ザ・イヤー」を差し上げたいと思います。

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