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【備忘録 1】ゆめちゃんの物語

ゆめちゃんはその朝、四方の円を描いていました。
それは名前曼荼羅。
自分のまわりの者の名前を円の上につなげていくと、しりとりのように
名前の曼荼羅ができます。
そう、そして最後の名前を書き上げた時に、彼女はペンを置きました。
さあ、水浴びをして、お気に入りの服を着て、出立の刻です。


彼女は広い広い草原を馬に乗って来ました。
彼女は緑の玉を守るもの。
彼女は緑の玉を生むもの。
彼女は緑の玉を授けるもの。

古来、この玉を授かったものは玉座に座ることができました。

彼女は一人でずっと歩き続けていた時もありました。
荒野を、太陽のみを頼りに、ずっと歩き続けていたこともありました。
ボロボロで、とても心細いこともありました。
でもそんなことも言って入られません。
とりあえず、歩くこと。それが大事だということだけはわかっていました。

仲間がいた時もありました。
女の仲間の中で彼女は男のように、男の仲間の中では女のように振舞いました。
八方美人に。
八方美人という言葉は、今は悪い言葉のように言われますが、元々はそうではなく、八方を司る女たちのこと、それは一人である時も、複数である時もありましたが、
ゆめちゃんのことを
玉を運び、守るゆめちゃんたちのことを言っていました。

どこからか、シャラララ・・と鈴の音が鳴り響いたある夜に、
ゆめちゃんはあの言葉を思い出しました。
「あの場所で会おう。またあの場所で会おう。」
遠い昔、そう約束して別れた友たちのことを。
地平線まで続く、草はらの真ん中で、懐かしい旋律に合わせてダンスしたことを。
彼女はそのことを思い出しました。
そして、大きな安堵とともに、涙が流れました。
再び会うことは叶わないかもしれない友たちのことを思いました。
でもここは多重構造の世界。
2度と巡り会えないと思っていた人々も、本当はとても近くにいるのかもしれない。
そういう不思議なまちだから、また会うこともあるかもしれない。
そう思って、彼女は眠りに落ちました。

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