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「これ今どっかにカメラ置かれてる?」マインドを獲得した話
今年大厄らしいんですよ。それに見合うイベントに遭いまくってるので、最近はトラブル込みで何かしらを見積もるようになりつつある。多分今宝くじ買ったら当たるし、なんなら当たった瞬間雷に打たれるとか原付にぶつかるとかスプリンクラーの誤作動シャワーとかに見舞われる以上の災難に見舞われる気がしてならない。近々買います。
今日行ったレストランが最悪を超えて笑えてくるくらいのそれだったのを、この場を借りて供養したい。
場所は控えるけど、まぁイオンのレストラン街ですわ。友達と2人で普通に入って、席に案内してもらったまでは良かったんです。サムネイルの店じゃないですよ。下手するとネガキャンにしかならなかったので、クリエイターさんの公開されてるのを拡大したやつです。
注文を決めて、タブレットで注文確定して数分。
来ない。いつもなら無料で出てくるスープが、来ない。「いつもは爆速やのにおかしいよなぁ」とへらへらしてたのはいいんです。
来ない。待てどもそもそもセットが来ない。
後ろの自分たちよりも先に座っていた親子のまぁまぁいい年したお子さんが、呼び出しボタンをモールス信号くらい押してんですよ。なんやあの子、おかんも注意したりなやとは思いましたよ。
ごめんなお嬢ちゃん、俺たちが間違ってた。
後から自分たちも気づいたんです。店員さん、ボタン押しても来てくれないんです。
流石にそろそろ…押そうか…?とボタンを押したのは、明らかに自分たちよりも遅く注文した人たちのセットが到着していたのを目にした頃だった。
自分「こういう時の言い方って、むずくね?」
友達「まぁ分からなくもない。どうあがいてもクレームだもんね」
自分「これ自分が京都人やからあれやけどさ、逆に丁寧に言っても嫌味っぽくならへん?」
友達「なるね〜」
自分「ほなどう言お」ピンポーン
友達「ごめん押したし俺言うわ」
………来ない。店員さんが来ないんですよ。
段々面白くなってきた自分たちは、もうほぼ全ての飲食店注文待ちあるあるをした。「野菜のメニューやし畑から取りに行ってるんやろ」だの「今鶏仕留めにいくとこからやってんにゃろ」だの「こんなん生ビール言ってたら泡無いのしか出てこんて」だの「これほぼ自分らしかおらんのにこんだけ待ってるんやったら、満席のときどうなんの?昼飯晩飯になるやろ」だの、深夜のファミレスのようなやりとりも辟易するほどの時間を過ごした。途中から何かしらのドッキリにでもかかってるのではないかと話始め、誰ならネタバラシで出てきて今嬉しいかを話していたくらいだろうか。
近くのサイゼリヤなら間違いなく会計まで終わる頃、ようやく店員さんが来てくれた。注文の乗ったカートを押しながら。
いやその瞬間の呼び出し押しててそこそこ待ってて、ほんで配膳のついでみたいに「え?来ましたけど?」みたいな顔して来られてもこう、ちゃうくない??わかるよ?忙しいんかもしれないし、今日の営業のバイトは全員研修中かもしれない。そう思って店員さんの名札に研修中のマークとかがないか確認してしまった。むしろ研修中であってほしかった。
「お待たせしました〜、ごゆっくりどうぞ〜」
「「ありがとうございま〜す」」
そりゃありがとうございますですよ。もはや持ってきてもらうだけで自分たちの中では満足まであった。
食べ始めて数秒後までは。
自分「ちょ……っとこの玉ねぎ食べてくれん?」
友達「え?嫌いなん?…(咀嚼)……ぬるくね?」
自分「よな?」
人生で始めて店員さんを呼んで、やんわりとしたクレームらしきことを言った。
「すいません、ちょっっとぬるいんで温めて貰いたいんですけど……」と。
「申し訳ありません!」と同時に下げられたお皿を見送るしかもうすることはない。今考えると当たり前だけれど、ぬるい味噌汁を飲みながら待っていた。いやむしろ申し分あんだろこれ。どう考えても出すの忘れてたやろ。絶対ホールのところに所在不明のプレート2つあったろ。主菜だけぬるいわけなくない?
「お待たせしました。すみません!」
「いえいえ〜、ありがとうございます!」
ホールのバイトに罪はない。飲食バイトをして学んだことはただ一つ、客ならマジでキレていいことされるまでは黙って出てきたもんを食えという不文律だけだ。
確かにマジでキレていい時ではなかった。
がしかしよ。流石にね?もう奇跡的なモヤっとが重なってこんなに綺麗なリーチにドンピシャで鳴かれたらそれはもうロンですよロン。
ここまでを振り返りましょうよ。
・注文後に来るはずのものが来てない
・呼び出しベルが機能してない
・後から注文してた客たちの方が配膳されてる
この積み重ねにやたらぬるいセットですよ。
このお店は、自分たちがこれだけの奇跡に囲まれてもギリ許されるカスハラをしなかった客だったことに感謝をするべきだ。多分もうちょっと性格が悪くて我慢が出来ずにデカい声を出すことに躊躇をしないタイプの人だったら、こち亀の最後のページで両津にバチギレする大原部長の勢いで窓ガラスが爆散していた。
私たちは自ずと発狂するという行為に飢えながらも、どこかで我慢をしているのかもしれない。その我慢を我慢と感じずに済むだけの余裕があることに、愛おしさを感じなければならないだろう。そんなことを学んだ。
ちなみに温め直された主菜は、レンチン特有の表面だけ熱々のそれだったのでぬるさは変わらなかった。
それでも我慢をしなかったのはそう。この瞬間も裏ではカメラが回っていて「飲食店のミスを客はどこまで耐え続けるのか!?」みたいなドッキリの企画である可能性を捨てたくなかったから。ただそれだけだった。もはや欺瞞とすら思わせる忍耐は、店を出た瞬間にカメラが出てきて芸人なり俳優なりが出てきてくれることでしか満たされるものはなかった。
多分突撃してきたのがポッと出の地元ノリ学生YouTuberとかなら、ゲラ笑いしながらカメラのSDカード叩き壊してそのまま家電屋行って同じの弁償していただろう。
どちらかといえば「今緊急で動画回してるんですけど」をやるとしたら自分たちやろこんなん。
会計後、もちろん誰もいない出口を過ぎて、友達とくつくつと笑いながらイオンを出た。
友達「実際誰なら許せた?」
自分「映画の番宣とかで出てくる俳優か女優」
友達「芸人とかやったら?」
自分「多分あの席の会話の方が今出て来られても勝てるやろ」
それくらいに、あのやたらと長い待ち時間での会話は楽しかったのだから仕方がない。
今日を境に、何かしらの理不尽なことがあったらカメラが隠れていると思い込むことでやり過ごせるようになったのは大きい。これが公正世界信念のようなものなのだろうか。善くありたい、おもろくありたいと思いながら主体的に撮れ高をとりにいこうとさせる自分は、果たして正しいのだろうか。正しいです。今のところは。ままならないね。
ここまで書いて文字数を見たら3000字を目前にしている。修論ならそこそこな文量だ。この調子でさらっとそれなりな文字数を書くことに慣れていきたい。
すっきりしたので終わろうか。飲食店でのやんわりなクレームの言い方(※京都人らしさがない)を探している。勉強します。ほなまた。