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著名VCの創業者によるスタートアップ投資の名言

"If you follow the trends, you don't end up funding outliers" (流行りのトレンドばかり追っていると、結局ホームラン案件を逃すことになる)

イランからの移民としてペルシア絨毯屋をスタンフォード大学の近くで営みながらベンチャーキャピタルファンド・Pear VCを設立したPejman Nozad氏の言葉がシンプルだけど響いた。自分自身も2019年に一度だけ同氏と非常に簡単な挨拶だけしたことがあり、またPear VCが開催するピッチイベントにも参加したことがあったのでつい懐かしくなった。
上述のコメントは、以下Pitchbookの記事の中でPejman氏が発言した内容で、Pitchbookの記者から「Chat GPTでAIが盛り上がっているけれど、それ以外にはどんな業界を追っているのか?」と質問された際の言葉である。

言わずもがなであるが、元々ベンチャーキャピタルは投資先の全勝を狙うビジネスモデルではない。特にアーリーステージ特化のVCにおいては一部のホームラン案件がファンド全体のパフォーマンスを牽引するモデルであり、Outlier(外れ値)となる投資先企業がファンド全体を引っ張っている。実例として、かの有名なアーリーステージに特化したVC、Benchmark Capitalの例を挙げると、BenchmarkがUberに投資したファンドにおいてはUber以外の投資先はほぼ全滅という状況だった。しかしUberのみが特大ホームランを叩き出した結果、ファンドとして莫大なリターンを計上している。
現在、Chat GPTを起点としてAIブームがまた起こり始め、NVIDIAのような上場企業だけでなくAIスタートアップもバリュエーション上昇の恩恵を預かっているように思われるが、Outlierを探すには皆が注目している業界だけではなく、盲点となっている業界・企業に目を向けることも必要だろう。特にPear VCのように、アーリーステージにおける投資に特化する場合、ミドル・レイターステージ投資と比べ、自ずとスタートアップ致死率は上昇してしまう。また、IPO等でExitを行うまでに自身の持分もある程度希薄化してしまう(フォローオン投資を加味したとしても)。途中で倒産してしまう投資先の損失と、最後まで生き残り成功した投資先の持分希薄化をカバーする手段として、Outlierの発掘は必然となっているのだと考える。

なお、Pear VCは2013年に設立、2019年に$160Mの3号ファンドを、2023年には$432Mの4号ファンドを立ち上げている。これまでDoorDash、Gustoといった企業(もちろんユニコーン)にアーリーステージの段階で投資を行ってきている。個人的には、Nova Creditという、移民向けクレジットスコアリングレポートを提供する会社がPear VCのポートフォリオ企業で一番のお気に入りだった(同社はY Combinator の2016年の卒業生でもある)。

さらに余談であるが、Pejman氏と同じく、ペルシア絨毯屋からスタートアップ関連ビジネスの世界に足を踏み入れた人物に、Plug & Play Tech CenterSaeed Amidi氏がいる。ペルシア絨毯屋の顧客層は基本的に成功した起業家や投資家が多く、この世界に踏み入れるには最適だったのだろう。この「ペルシア絨毯屋からスタートアップコミュニティに入る」というのもなかなかのOutlierである。


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