2025年のPEファンド投資の見通しに関する英文記事をまとめてみた
世界中にいるLP投資家たちは2025年はPE・VC業界にとってどのような年になると考えているのか。その考えがまとまった記事を2つ見つけたので、以下要点をまとめておきたい。
願わくば、1年後の2025年末にもう一度この記事を見返して、実際に起きたこと・起こらなかったこと の答え合わせをしたいと思っている。
36%のLP投資家は、昨年(2023年)のPE投資のパフォーマンスは目標値を下回ったという。これは2018年以降、PE International社が調査を始めて以来最も高い数字である。
一方で、LP投資家は2025年については楽観視しているようで、彼らの38%は、2025年のパフォーマンスは目標値を上回るだろうと回答している。
重要な点は、数あるアセットクラスの中で、PEファンドに過剰に投資しすぎだ、と考えているLP投資家は、現在ほとんどいないという点である。来年はむしろ、PEファンドへのアロケーションを増やそうとする投資家が増えるだろう。
ファンドマネージャーは投資先からのExitについて引き続き苦戦を強いられる:ファンドマネージャーはここ最近、投資先のExitにもファンドの資金調達にも苦戦している。そのような状況下で、後継ファンド(Continuation Fund)にいくつかの投資先の持分を以降したりすることで、なんとか投資先からのExitを進めてLP投資家への分配を進捗させようとしている。これらの手法はLP投資家にとっては「負担を他者に押し付けているだけ」である。
LP投資家によるPEファンドへの投資は増加する兆しが見られる:45%のLP投資家は2025年は2024年対比でPEファンドへの投資を増やそうとしている(7%のLP投資家は2024年対比での投資額を減らす見込み)。
後継ファンド(Continuation Fund)の数は増加する:後継ファンドとは、例えば10年のファンド存続期間が終了してしまった場合、その期間中にExitできなかった投資先の持分を移管し継続投資を行うためのファンドである。投資先からのExitが進まないファンドが増える中、後継ファンドはさらに増加する可能性がある。
PEファンドのパフォーマンスは改善する:おおよそ3分の1のLP投資家が、過去12ヶ月におけるパフォーマンスは目標値以下だと回答した。だが、38%のLP投資家が今後12ヶ月では目標値を超えたパフォーマンスを計上するだろうと、予測している。
キーパーソン条項についてより厳格に定める:キーパーソン条項とは、ファンドマネージャーのうち主要な構成員が死亡・離職等のため離脱した場合の手当が定められる条項である。手当とは例えば、1年間は投資活動を停止し、後任を確保しなければならない、後任はLP投資家の●%以上の賛成を持って選任される、等である。LP投資家はのうち36%は、キーパーソン条項があまりにもファンドマネージャーに有利である、と考えているようだ。
AIの活動:AI技術への投資ではなく、実際にファンドビジネスにAIを活用しようとする動きが見られる。ただし、57%のLP投資家は引き続きユースケースについて検証している段階で、実際にAIを実務に活用しているのはまだ5%程度の模様だ。
気候変動リスクは引き続き投資判断における重要な要素:46%のLP投資家は、PEファンドに投資する際に気候変動に関し投資先パイプラインをチェックしたり、ファンドマネージャーにおける気候変動リスクに向けた取り組み状況を精査する。こうした気候変動リスクについて、PEファンドへの投資時に考慮しない、と回答したLP投資家はわずか18%のみであった。
2025年は、57%のLP投資家はがファンドマネージャーとの接点・取引を増やそうとしている。この割合は2019年以来で最高値だ。
ロシアにおけるウクライナ侵攻の継続、米中経済冷戦、不安定な中東情勢等を踏まえ、LP投資家にとって、地政学リスクはPE投資を行う上での非常に大きなイシューである。
後続ファンドの数は増え、それに伴いLP持分の売買が進み、同分野におけるセカンダリーマーケットが拡大していく。