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米国のスタートアップ投資減速の波はアーリーステージにも波及
上記リンク先のWSJの記事によれば、2023年第三四半期(7月−9月)の米国におけるプレシード〜シードステージの資金調達件数は820件だったのこと。これは2013年以来で、四半期の数字としては最低の数字である。
2022年の米国の金利引き上げに伴い、まず上場株式市場が下落した。その後、比較的上場に近い位置にいるレイターステージのスタートアップの評価額が下落した。レイターステージの企業の評価額は上場企業の類似業種評価額を参照することが多いためだ。こうして上場株式市場の下落をまっさきに受けたのはレイタステージの企業たちで、投資件数・評価額ともに減少していった。2021年時のプライベート市場で調達した時点の評価額よりはるかに低い評価額で上場したインスタカートや、昨年巨額の損失を出しポートフォリオ企業の売却を進めているTiger Global Managementなどはまさにこの市場の変動を影響を受けたわかりやすい例と言えよう。
一方でシードステージの資金調達は、基本的は評価額や件数について上場株式市場の変動には影響をうけづらいとされている。評価額は上場企業の類似業種に合わせて随時洗い替えを行うようなことは不要であり、プライベートエクイティ投資における会計原則に基づき、「直近ラウンドの評価額」を企業価値評価額にしておくことも会計上は可能である。したがって、上場株式市場の相場変動があろうがなかろうが、2021年頃に最後に資金調達したラウンドの評価額を今使う子存続期間も十分可能だ。
また、シードステージの企業はまだ売上も立っていないような創業直後の会社が多く、上場をするとしても最短でも5、6年先の話である。その間に株式市場の回復見通しシナリオおが立てば、5年以上先のExitを見据えて今から投資しておくことも十分可能である。
だが、こうした見通しも現状では立てづらいのか、多くのベンチャーキャピタリストはシード投資の件数も絞ってきた、ということがこの記事から推測される。
中東情勢不安、ロシアによるウクライナ侵攻、収束しないインフレと金利引き上げ等、将来の見通しがたたない外部環境要因もあってか、米国でのスタートアップ投資件数は足元少し減少してきている。もしかしたら2023年がベンチャー投資の底ではなく、2024年もさらに悪化する可能性も少し踏まえた方がよいかも知れない。