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LP投資家(機関投資家)による2025年のベンチャーキャピタル業界の予測

Forbesに「2025年はベンチャーキャピタルに投資を行う投資家たちにとって、どんな年になるか」との記事が出ていた。

いずれも定性的なインタビュー内容であり、残念ながらポジショントークばかりなので、客観的な数値やデータに基づくコメントはほぼ皆無である。唯一面白かったのは「趣味で始めたファンドや虚栄心にまみれたファンドは着ていく」である。

その他はポジショントークだなと思うものの、プロ投資家たちの意見として参考に読んでおく十分にあると思う。以下、記事の参考和訳を載せておきたい。

(以下、参考和訳)

2024年はベンチャーキャピタルファンドの資金調達額という観点で言えば、2015年以来で最悪の年になりそうだ。

2022年以降停滞しているIPO市況の影響を受け、ベンチャーキャピタルファンドも投資先からの退出がなかなか進まず、結果として同ファンドに出資するLP投資家に配当できない状況が続いているのだ。

多くのLP投資家たちは、これまで拠出してきた資金の返還を受けることもままならない状況下、ベンチャーキャピタルファンドへの新たな資金の拠出をに躊躇している。

ベンチャーキャピタルが2024年中に新たに組成するファンドの数はグローバルで1,300本となる見込みだが、これは過去最多であった2021年の4,000本から大きく落ち込んでいる。

特に、新興ファンドマネージャーにとって資金調達は厳しい環境が続く。Pitchbookによると、今年組成されたファンドの81%は、既存ファンドの後続ファンド(例えば、グロービス1号ファンドの後続の2号ファンド、JAFCO1号ファンドの後続の2号ファンド、等)であった。

そんな中、2025年はこの状況は変わるのだろうか?以下は機関投資家10名による2025年の予測である。

  1. DPIは増加し、ベンチャーキャピタルの資金調達環境は改善する。LP投資家によるコミットメントと、スタートアップ企業に対する出資は増加する。(Dominic Maier, Head of Fund Investing, Axa Venture Partners
    「月並みな予測かも知れないが、私は2025年はLP投資家に対する分配が進みDPIが上昇することを楽しみにしている。過去24ヶ月間はベンチャーキャピタルにとって厳しい時期であった。多くのLP投資家は新たなファンドに対する出資を絞ったからだ」

  2. 小規模なファンドと ブティック系ベンチャー キャピタルファンドが一大勢力として台頭する(Layne Johnson, Partner, Screendoor
    「将来成功するかどうかは未知数だが、小規模のファンドが増えてきていることは注目に値する。ブティック系ベンチャーキャピタルファンド、専門領域に特化したベンチャーキャピタルファンドベンチャー等、アーリーステージのスタートアップ投資に集中し、創業者と強い関係を築くことの利点につちて理解してる新世代のベンチャーキャピタルファンドが現れている。」
    「ここ数年、LP投資家への分配が停滞していたことを踏まえると、DPIの上昇がファンドにとって重要である。小規模なファンドのDPIは大規模なファンドに比べてより早く上昇し、Jカーブの中間により早く差し掛かる可能性がある」

  3. AIが桁外れのリターンをもたらす(Hana Yang, Co-Founder and CXO, Allocate
    「人工知能セクターを有望視している。人工知能の進歩により資本市場はさらに効率化し、また事業会社の経営の効率化も進展するだろう。2025年はこうした人口知能等のテクノロジーの後押しを受け、最もダイナミックばビンテージイヤーのひとつとなるだろう」

  4. 最先端技術に投資をするVCがリターンを生み出す(Mark Schmitz, Managing Partner, Equation Capital)
    「要素技術と商用化の狭間の段階で、資本を拠出するファンドマネジャーが増えている。科学的な大発見から生まれたテクノロジーは、今や単なる投資機会以上のものと見做している」
    「2025年が間近に迫った今、私たちは最先端技術にフォーカスする野心的なソロGPや、小型のベンチャーキャピタルを支援している。特に関心のある分野は、ロボティクス、次世代コンピューティング、合成生物学、エネルギー転換などである」

  5. 多様性が新たな投資機会を発掘する(Julie Pulda, Senior Impact Investment Manager, Ballentine Partners
    「近年、女性や有色人種が率いる企業やファンドの数が大幅に増加しているものの、こうしたベンチャーキャピタルファンドへの資本流入は極めて少ない。こうしたファンドは投資家にとって、仕事の未来、持続可能性、健康とウェルビーイング等の分野で、差し迫った課題に取り組む創業者を支援する大きな市場機会を生み出している。多様な才能に投資することは、賢明な投資である」

  6. Daryn Dodson, Founder and Managing Partner, Illumen Capital
    「市場のボラティリティが2025年まで続くと予想される中、LP投資家はポートフォリオ及びエクスポージャーを多様化し、この困難じな状況を乗り越えていく。既存ファンドへの投資を増やしたくなるかもしれないが、LP投資家は以前は見落としていたような運用会社が組成するファンドへの投資を検討し、新たなファンドへのコミットメントを進めるべきだ。ノーベル賞受賞者ダニエル・カーネマンが示したように、認知バイアスを理解することは投資判断を最適化する上で極めて重要であり、LPは今後、感情的バイアスの影響を最小限に抑えながら、より高い意識と客観性を持って市場分析と意思決定の両方に取り組むべきだ。

  7. LP投資家は、莫大なリターンを得るために真に差別化されたベンチャーキャピタルに投資する(Anu Adebajo, LP investor and Advisor
    「どのベンチャーキャピタルファンドもUSP(Unique Selling Point)が、つまりそのファンドを差別化するユニークなポイントがあるはずだと思っている。多くのファンドマネージャーが誇張して自分自身の差別化要素を語るが、実際にはどこも似たり寄ったりであることを多数のファンドに投資するLP投資家は気づいている。」
    「2025年、優れたLP投資家は、独自の道を切り開き真のアルファを実証できるベンチャーキャピタルファンドに注目するだろう。結局のところ、数学的には、誰もが上位10社のファンドになれるわけではないのだ(数字が上がっていないファンドは淘汰されていく)。」

  8. AIがベンチャーキャピタルの仕事を劇的に変える(Aakar Vachhani, Managing Partner, Fairview Capital)
    「2025年、LP投資家はエージェント型AI(自律性と意思決定能力を強化した人工知能システム)がベンチャーキャピタルとスタートアップのエコシステムをどのように変革するかを理解し始めるだろう。」

  9. 趣味で作られたや虚栄心にまみれたファンドは消えていく: 生き残るシード・マネジャーにはそれなりの正当な理由がある(Adam Marchick, Partner, Akkadian Ventures)
    「2025年はシード投資を行うファンドマネジャーにとって素晴らしいヴィンテージイヤーとなる。短期的な資金集めに奔走し、虚栄心の塊のようなVCファンド、そして趣味的に運営されたファンドはいなくなる。また、LP投資家は 「ベンチャーキャピタル投資における数学 」を思い出し、冷静に数字だけを見ながらファンド投資を行うことができるようになるだろう。LP投資家はFOMO(Fear of Mission Opporunities)のモメンタムから「投資に乗り遅れたら損をする」という感情もなくなり、真によいファンドを冷静に見極めながらコミットメントを行う。」

  10. シリーズA・Bでスタートアップ投資を行う二流のベンチャーキャピタルファンドは消滅する(Albert Azout, Managing Partner, Level Ventures
    「シリーズA/Bでスタートアップ投資を行う二流のベンチャーキャピタルファンドは、a16z、アクセル、セコイアなどの複数のシリーズで重曹的に歳を行うファンドには到底には太刀打ちできないため、消滅するだろう。将来、スタートアップの一部はシリーズA/Bラウンドをスキップし、限られた資本で規模を拡大する能力を持つグロースラウンドに直行すると考えている」

  11. 2025年はベンチャー・キャピタルにとってここ数年で最高のヴィンテージとなる(Charlotte Palmer, Vice President, Integra Global Advisors
    「2025年は、ベンチャーキャピタルファンドへの投資において、近年で最も素晴らしいヴィンテージイヤーの一つになる、と我々は見ている。創業者や投資家は、ドットコム・バブルと2008年の金融危機後の困難な市場環境でもうまく資金調達をしてきた。私たちは、市場で見られる新興マネージャーの強固なパイプラインに勇気づけられており、LPに多大なリターンをもたらす実績のある1億ドル以下のベンチャーキャピタルファンドに引き続き注目しています。

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