第19回 相続・遺言に関する近年の制度改正|学校では教えてくれない相続の話
行政書士の長岡です。相続の話、19回目となる今回は、相続・遺言に関する「近年の制度改正」について解説してみます。
まずは一般的に使えそうなものを始まった順に説明して、後半はやや特殊なものをざっと説明していきます。
一般的なもの
法定相続情報証明制度(2017年5月29日から)
法務局で相続人の関係図(法定相続情報一覧図)の認証を受けられるようになりました。銀行などの窓口で相続の手続きをする際に、認証を受けた一覧図を提出することによって戸籍謄本等の提出を省略できる仕組みです。
法務局で認証を受ける際には、亡くなった人の住民票(除票)と出生から死亡までの戸籍謄本等、さらに相続人全員の戸籍謄本(または抄本)を用意する必要があります。そのときの手間は以前ととくに変わりませんが、その後の手続きが簡略化されるわけです。
自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日から)
自筆証書遺言は、名前のとおり全文手書きが鉄則でした。相続人に渡す財産については、金融機関の口座や不動産登記の情報などを詳細かつ正確に記載する必要があり、これを手書きするのに苦労される方も多かったのではないでしょうか。
そこで、相続財産を記載する「財産目録」については、パソコン等で作成できるようになりました。この財産目録は、代理人に作成してもらうことも可能です。ただし、その他の部分はこれまでどおり、本人の手書きでないと無効になってしまいます。
自筆証書遺言の保管制度(2020年7月10日から)
自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになりました。保管を申し込む際に外形的なチェックを受けますので、形式面の不備で無効になってしまう確率は減るでしょう。また、法務局で適正に管理・保管されますので、なくしてしまったり書き換えられてしまったりする心配もなくなります。そして、家庭裁判所での検認手続が不要になるので、相続人の負担はかなり減るはずです。
ただし、公正証書遺言とは違って専門家による内容の確認はありません。ですので、実際に相続手続を進めるときに問題が起きる可能性は、公正証書遺言よりも高くなると考えられます。
相続登記の義務化(2024年4月1日から)
2024年4月以降は、亡くなった人から不動産を受け継いだ人が3年以内に相続登記をしなかった場合、過料の対象となってしまいます。3年以内に遺産分割協議がまとまりそうもない場合などには、自分が相続人であることを申告する「相続人申告登記」を行わなければなりません。
2024年4月より前に相続した不動産については、2027年3月31日までに相続登記または相続人申告登記をする必要があります。心配な方は、お近くの司法書士さんに聞いてみてください。
やや特殊なもの
配偶者居住権
亡くなった人の配偶者が、一緒に住んでいた不動産の所有権ではなく居住権を得られる制度です。住んでいた不動産に住み続けることができるものの、売ることはできない権利になりますので、所有権として相続するよりも遺産分割時の価値が下がります。
例えば、不動産の所有権を子が相続しつつ妻が居住権を相続することによって、妻が相続する不動産関連の価値が相対的に下がります。ですので、価値が下がった分だけ現預金等を多くもらうことができ、その後の生活を送りやすくなるわけです。
特別の寄与
相続人以外の家族が、相続人に対して金銭を請求できる制度です。もちろん根拠が必要で、代表的な例としては、義理の親を介護していた人などが該当します。これまでは「長男の 嫁にはないよ 相続分*」だったのですが、2019年の7月1日からは、少し事情が変わっています。
*井出誠・長岡俊行『相続川柳』2015年 東京堂出版
その他(説明省略)
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