「世の中みんな面白いんだ」長浜森の生活史・編集チームでお互いに突撃してきた
こんにちは!
「長浜森の生活史」第8弾は、番外編・編集チーム同士で相互インタビューをしました。
普段はマジメな話をあまりしない私たちですが、この場を借りて聞き合いました🔥
今回も楽しんでお読みください。
<メンバー紹介>
左:辻本果歩(かほ)
1997年生。兵庫県西宮市出身。2023年秋より、長浜市の地域おこし協力隊に着任。テーマは、長浜市内におけるシェアリングエコノミーの普及。
真ん中:渡邊咲紀(さき)
1998年生。長浜市余呉町生まれ、愛知県名古屋市育ち。2019年に出生地である余呉町に戻る。現在は、長浜市内の農園で仕事をしている。
右:土屋百栞(もも)
1997年生。茨城県つくば市出身。2022年秋より、長浜市の地域おこし協力隊に着任。森林浴などの活動を通じて、自然との結びつきを感じる機会づくりを模索している。
私たちの日常と変化
ほうれん草が笑ってる!
もも:いや~お待ちかねの、相互インタビューだね!みんなのお話が聞けるのを楽しみにしていました。
かほ:私も!改めて、みんなは普段何をしているの?さきちゃんは、農家さんのところで頑張っているんだよね。
さき:そうそう。有機農家さんのところと、農福連携(※農業と福祉を一体とした取り組み)の農家さんのところで働いているよ。育った場所が名古屋だったから、いつもビルやコンクリートに囲まれていて、自然に触れる機会が全然なかった。ビルの山ならあったけれども(笑)。だから、野菜がどうやって育つのかを全然知らなかったんだよね。
こっちに住み始めてから、にんじんの花を見たりと、野菜の成長過程に感動して、最近は自分の家でも野菜やハーブを育てているよ。
さき:最近は毎朝、ほうれん草に水をあげているんだ。半円を描くように水をかけるんだけど、ほうれん草にかかった水がキラキラ光って、「ほうれん草が笑ってる!」って思ったりする。
かほ:ほうれん草の気持ちがわかっている(笑)。
さき:そのあとちょっと虫に食べられちゃったから、実は泣いていただけかも(笑)。
もも:こっちに住み始めてから、なにか感じることはある?
さき:みんな優しいなって思う。名古屋は、困ったことがあってもお金で全部解決できるような場所だったけど、ここはスーパーも業者さんも近くにないから、困ったことがあったら近所の人が手伝ってくれることが多いな。そういえば、この前電車を使ったとき、家の近くの駅の駅員さんからクローバーをもらったよ🍀
もも:ほほえましすぎる(笑)。
自分自身をシェアしていく
さき:かほちゃんは、もともと企業で働いていたけど、こっちに来てから変化はあった?
かほ:企業で働いていたときは、役割分担がしっかりしていて、仕事の目標も明確だったな。私の担当は法人営業だったから、「支店の数を増やす」とか、そういう分かりやすい目標に向けて行動していた。仕事のゴールがすでにあるから、自分で考えて悩むことはそんなになくて、ストレスも少なかったな。
でも、「シェアリングエコノミー」というミッションで、地域おこし協力隊としてこっちに来てからは、活動のゴールがないんだよね。「シェアのサービスを長浜市に1件増やす」とか、そういう数字で表されたゴールは違うと思っていて。「シェアリングエコノミーが長浜市に普及している状態ってどういうことだろう?」とか、「シェアが何につながるんだろう?」といった問いから始めないといけない。
かほ:私は地域振興の専門家ではないし、ただの移住者という立場だから、何ができるのかなっていう不安はあるけど、活動を進めていくしかないなって思う。
さき:正解がないよね。
かほ:うん。だから、自分で正解を作っていく難しさはリアルに感じる。なので、1人じゃなくてみんなでシェアについて考えていきたいっていうのが、私の今年度の目標。悩みも含めて、自分自身をシェアしていきたい!
もも:そもそも、かほちゃんはどうして協力隊になったの?
かほ:私はずっと兵庫県の西宮で育ってきたんだけど、大学生のときに能登半島に1ヶ月間滞在する機会があったんだよね。地域行事に参加したり、大工さんや農家さん、地域のおじいちゃんおばあちゃんといった今まで接点のない人たちに出会って、いろんな価値観があることを知ったよ。家族や友達といった近しい関係を離れて、地域に飛び込むことで新たな視点をもらえることがわかった。
かほ:だから、私も都市と地域をつなげられる存在になりたいと思って移住してきたけど、今は、いろんな人の生き方の選択肢を広げられる何かを、種まきしたいなと思っている。友達が疲れて休職しているとか、そういう声をたくさん聞いているから、今いる場所じゃなくても違う場所に行けばいろんな人に出会えたり、いろんな可能性があることを知ってほしいと思う。
もも:かほちゃんに会いに、都市からかほちゃんの友達がたくさん長浜に来るもんね。ステキ。
「じねん」の感覚を当たり前に
かほ:ももちゃんは、どうして協力隊になったの?
もも:私は、大学院まで森のことを勉強していたし、森のことはライフワークとしてやりたいと思っていたけど、お金をもらいながらできるとはまったく思っていなかったんだよね。学生時代は、フリーランスで面白いことをしている人たちとよく一緒にいたから、「就職しない生き方もアリだな」って思っていたな。いい意味で、人生狂わされたかもしれない(笑)。
そんな中、友達の隅田あおいさん(森の生活史#4「幸せは感じるもの」で登場)から、「森に関するテーマの協力隊の募集がある」という話を聞いて、やってみよう!と思い立ったのがはじまり。協力隊の活動内容としては、五感を使って森を歩く森林浴の案内や、竹林整備から竹かごづくり、小学生の森林学習「やまのこ」の補助などをしています。
さき:ももちゃんは、大学からやっていることが「森」で一貫しているよね。
もも:もともとは、全然興味なかったんだけどね(笑)。小さい頃から自然が好きだったわけではまったくなくて。「やまのこ」で、生き物や植物に詳しい小学生と接すると「ネイチャーネイティブ(※ももの造語)やな~」って思うけれども、私はネイチャーノンネイティブ(笑)。
でも、ひょんなことから大学で森林科学を勉強することになって、今はみんなが「自分は自然の一部だ」っていう感覚を当たり前に持てる社会になったらいいなって思っている。自然について考えるとき、自分と切り離して考えることってありがち。例えば、風景の写真だけ撮って「自然大好き!!」ってSNSに投稿するとか。そういう楽しみ方もあるけれども、私はそこに違和感を感じている。
明治以前は、「自然」の読み方は「じねん」で、今の「しぜん」とは意味が違っていたんだよね。私たちが「しぜん」って言うとき、森や川といった対象物として捉えるけれども、「じねん」は、人間も含めて自然という考えなんだよね。森も川も魚も私も、すべてひとつにつながっているという考え。
私はその感覚が、復活しないかなともくろんでおりまして(笑)、その方法がなんなのかをずっと探っている途中で、その1つがこの「長浜森の生活史」です。
もも:ネイチャーノンネイティブの私は、もちろんまだまだその感覚を養っている途中で、みんなと一緒に培っていきたいなと思っています。
課題解決には「楽しさ」が必要
もも:よくある環境問題の広告に、「ホッキョクグマが何秒に1頭死んでいます!」みたいなのがあるよね。危機感を煽るようなやつ。たしかに、今日の環境が悪化する速度を考えると、みんな危機感を持たないといけないと思う。でも、私はそういうアプローチじゃなくて、楽しみとかユーモアからのアプローチがしたいんだよね。つい耳を傾けたくなるようなアプローチがしたい。
私がやっている「森林浴」って、どう考えても楽しいやん。でも同時に、頭で理解することの限界を感じているから、身体で「自分は自然の一部なんだ」という感覚が参加者に芽生えたらいいなと思ってやっている。
そういう一見楽しくて、でも結構真面目というか、しっかり粒のある感じのことをしたいと常々思っている。「長浜森の生活史」も、そういう雰囲気が出ていたらいいなと思っているし、みんなと作っていきたいなって思うよ。
かほ:その見せ方、私もすごく考えていた。「シェアリングエコノミー」という概念って、抽象的で理解しにくい。だから、どうやったら難しくなく、あまり考えず、身近である存在になれるか?日常の中で「シェアいいな」みたいな部分をどういう風に作っていくか?という点では、共通している気がする。
さき:野菜もそうかも。訳あり野菜も、「食べてください!」みたいな必死な方法じゃなくて、見せ方大事かも。
もも:でも、まず自分が楽しむのが大事だと思う。「かほちゃん、さきちゃん楽しそう!」みたいに。
かほ:たしかに!この前、協力隊の研修で聞いた話を思い出した。地域で何かをしようってなったとき、課題解決から入ることが多いけれども、そもそもそのアプローチってどうなの?っていう話があったんだよね。
地域の人から課題を拾っていくって、そもそもマイナス部分から入っているし、その課題が解決できないときに、「何をやってもダメだ」という考えがはびこってしまいがち。
そうじゃなくて、地域の人からの「これやりたい」とか、「こういうの楽しそう」といったプラスの発想をすくい上げて、それを目指して「無理でもみんなでやってみよう!」と思ってやってみる。長い目で見るとそっちの方がうまくいくんじゃないか、という話だった。
だから私は、地域に何かを「やってみたいな」と思える土壌を作って、それを吸い上げるのが協力隊の仕事なんじゃないかなって思ったよ。
もも:面白い。「やりたい!」の先をやっていったら、結果的に課題解決しちゃっていることもあるかもしれないね。
「長浜森の生活史」への想い
もも:「長浜森の生活史」で、楽しかったことや印象に残っていることはある?
かほ:自分のものさしが変わっていく感じがする。森の生活史で出会う人ってみんな本当に面白くて。そういう人に会うたびに、自分のものさしがどんどん変形していっていると思う。
さき:私も、人生って選択肢がたくさんあるんだなってわかったな。あとは、好きを追求したら、ちゃんと形になるんだって思った。例えば、伊吹志津香さん(森の生活史#2「アロマがあったから耐えられた」で登場)は、最初は趣味としてアロマをしていたけど、それが今は1つのお仕事として成り立っている人。志津香さんの話を聞いて、好きなことと仕事の間って距離がありがちだけれども、そこを真摯に突き詰めたらちゃんと仕事になることがわかったよ。
それから印象に残ったのは、隅田あおいさんの話。馬を使ってお金にする方法って、例えば乗馬クラブとかたくさんあると思うんだけれども、あおいさんは違くて。馬が好きすぎるあまりに、馬を働かせない方法を考え抜いて今のスタイルがあって、私はそういう人こそ応援したいなって思った。
私が関わっている農業では、自然農法や有機農法は主流じゃないけれども、あおいさん含めいろんな人の話を聞いて、改めて私はそういう方法で野菜を育てたいと思ったよ。
もも:私は、なんだかんだ1番楽しいのは記事の編集かもしれない(笑)。「どうやったらこの人の面白さが伝わるんだろう」と考えながら格闘するのが、めっちゃ苦しいけどめっちゃ楽しい。あとは、読んでくださる方の感想がとっても嬉しいよね。1番嬉しかったのが、「長浜市って、なんでこんなにすごい人がいるんだろう?と思ったけど、まわりの人をインタビューしたらそんな人がたくさんいるんだろうなと思いました」という感想。
私は、1人1人の中にそれぞれの種が埋まっていると思っていて。忙しいとか、ちょっと思い出せないとか、いろんな理由でその種が発芽しないままでいる人がいっぱいいると思うんだけれども、インタビューという水をかけることで、その種が芽吹いて、さらに編集を通して花が咲いたらいいなって思っています。
だから、読者の方が、「長浜森の生活史」に登場する人の「花」を素敵だと思って、「自分のまわりの人もちょっと掘ってみよう」「もっと知りたい」って思えたら、すごく素敵。
「世の中みんな面白いんだ」という、明るい思想があふれたらいいなと思っています。
<編集後記(もも)>
普段はガッツリ聞かない、みんなのマジメな部分を知れてとっても楽しかったです!
「みんな日頃たくさん考えているんだな~」「どんな人でも悩みはあるよね~」と、出てくる話に共感しながら思いました。
「長浜森の生活史」に対するそれぞれの思いも、この場を借りて聞き合えたことで、編集チームの結束がより強くなった気がします🔥
次回は、長浜市で養蜂を行っている、「びぃふぁむ」の塩のり子さんにお話を伺います。次回もお楽しみに!