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155:死ぬまで続ける・お前が死んでも続ける|OUR DAYS #006

・ながめいづきと、この世で唯一ながめいづきと共鳴する研鑽仲間である「彼」との2人の物語。
・前回。


・今回で完結。


・「彼」とはよく電話をするが、今後どうしたら良いのか考える会を作ろう、ということで時々一緒にどこかしらへ出かけたりしていた。

・例えばこれで言及している友人とは、「彼」である。

・そのような日の一環として、椎名町にある手塚治虫をはじめとするマンガの巨匠たちが住み集い、若き青春の日々を過ごしたアパート・トキワ荘に赴く日があった。
・今年、2024年の4月。自分が27歳になる年。

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・ちなみに、その日のことも実は少しだけ綴ったことがある。

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・現在のトキワ荘は、当時そこに住んでいた漫画家たちの人間性や生活を紹介するミュージアムとなっていた。

・自分たちは、そこにまつわる漫画家たちのことを学びつつ、彼らの一日のスケジュールやひと月の支出グラフなどを見ながらそのミュージアムを回遊していた。
・ミュージアムを出た後も、いまの椎名町は手塚治虫らにあやかっている街となっていたので、いろいろな施設で漫画を読んだりグッズを観たりしていた。
・「彼」と一緒に、今後の自分たちについて話しながらこの街を歩いていた。

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・そうやって街を彷徨いながら「彼」と話す中で、自分たちは「クリエイター」に憧れがあるのだ、というひとつの結論を出した。
・「クリエイティブな仕事をする職種」ではない。「自分の世界観を表現し・それで飯を食っているクリエイター」に憧れを抱いていた。
・芸術家になりたい。

・「会社員」として、給料という麻薬に取りつかれて操り人形となっている状態は、自分たちの望んだ人生ではないということを改めて確かめ合った。

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・上述はその日を送る以前にもうっすらと頭に浮かんでいたが、漫画家たちの実績とともに彼らの生活を知ることで、「この生活こそが人生だ」ということを脳裏に刻むことができた。

・「クリエイターになるためには、とにかくその領域に時間を注がなければいけない」ということを実感した。
・「自分の得心する分野で生活すること」が「自分たちのなりたい姿であり、やるべきことなのだ」と、腑に落ちた。

・今まではなんとなく「お金を稼ぐこと」「時間を作ること」を目的の一部としていた。
・ただ、それは二の次で良かったのだ。自分が何をしたいのか?何になりたいのか?そこを大前提とすべきであり、それ以外のものは全てどうでも良かった。
・極論、金など稼げなくとも良い。自由な時間など作れなくとも良い。ワークライフバランス?そんな言葉滅びろ。

・そうやって自分たちは完全に気狂いになった。

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・それからは、再起不能になることだけを避け、平日も休日もとにかく創作活動に打ち込むようになった。
・それまでも頑張っていたつもりだったが、それはただなんとなく何かをしていただけであった。トキワ荘に行った日から完全に意識が変わった。
・それまで何をしていたのかわからない。虚無の時間が大幅になくなった。

・漫画家は、漫画に大量の時間を注いだから大成できた。
・小説家は、文筆に大量の時間を注いだから大成できた。
・音楽家は、音楽に大量の時間を注いだから大成できた。
・有名なYoutuberは、Youtubeに大量の時間を注いだから大成できた。
・世界的に著名な実業家は、その事業に大量の時間を注いだから大成できた。

・なぜ自分はそこに時間を注がない。時間を注げば大成できた成功者がいるのに、時間を注がなければそもそも大成できるかどうかすらわからないではないか。
・なぜ同じ人間なのに、その分野における巨匠と自分たちは生きている世界が違うと思っていたのだろうか。
・自分たちだって、彼らと同じようになれるだろ。なれるかなれないかは、やってみないとわからないだろ。

・お互い、もはや相手に監視してもらうためではなく、ただ自分で自分を縛るために、その日創作活動に注いだ時間を報告するようになった。
・トキワ荘に行ってから4ヶ月、1日たりともその命の灯が消えた日がない。

***

・自分たちに再度ガソリンを入れる時間を作ろうということで先日、久々に「彼」に会った。
・自分は7月で唯一立てていた予定であった。

・結論、ガソリンを入れなおす必要はなかった。
・上述の記事はそれはそれとして自分の中に受け入れたが、目的を果たした後はすぐに解散した。
・お互い、余裕がなかった。早く帰って、研鑽しなければと焦っていた。

・気づけばもう、以前までの自分たちの遊び方では満足できない脳みそに魔改造されていた。
・自分は「彼」と遊ぶ時間は好きだったのだが、「彼」と会っている時でも「あれをやらねば」「これをやらねば」という思考が脳の大半を占めていたし、それは「彼」も同じだったようである。

***

・創作活動は、気が狂う。せっかくの休みでも常にパソコンに向かって何かの作業をやり続けるのは、独房にでもぶち込まれた気分だ。
・いや、もはや「休み」という認識が間違っている。平日、会社員をやっている時間が「休み」で、それ以外で創作活動している時間が「仕事」だ。

・それで良い。
・今やっていることが全てうまくいかず新宿でホームレスになるか、このまま会社員を続けるか、どちらを選ぶか問われたら、今の自分は何もためらわず前者を選ぶ。

・「彼」と共鳴することで、自分の在り方に気づくことができた。
・ながめいづきは、うだつのあがらない生活を辞めた。退屈な人生から抜け出した。
・仮に「彼」がいなくなっても、もう自分は変わらない。そしてそれは「彼」も同じだろう。

・彼との「OUR DAYS」は終わった。
・自分の物語の結末は、これから自分で作る。


・次回。後日談。

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