メンバーに「この仕事、やりたい仕事じゃないです」と言われたら?(動画つき)
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はじめに
マネージャーになり、メンバーに仕事をお願いすることは本当に難しいと痛感しました。
いくつか難しいと思った瞬間があるのですが、中でも一番難しいなと思ったことが「この仕事は自分がやりたい仕事ではないです」と言われた時です。
そこまでストレートに言われなくとも、明らかに嫌な顔をされたり、気が乗らない様子を目の当たりにすることはよくあるのではないでしょうか。
なんて言いたいところですが・・・。
たしかにそれは正論なのですが、正論で飯が食えるなら苦労はありません。ベンチャー企業は常に人手不足で、かつ採用力も弱い。
という考えがベンチャーマネージャーの皆さんの頭によぎるのではないでしょうか。
転職も気軽にできる時代なので、自分の要望に応えられない会社に居続けるメリットもメンバーにはさほど無いかもしれません。
そして、なんとかその人の要望と会社としてのオーダーのバランスをとろうと調整に調整を重ねて仕事を捻出するわけですが、その中途半端なアサインでうまくいったことはあまりなかったかなと思います。
なぜなら、その人がやりたい仕事であっても、会社にとっては大して必要な業務じゃなかったり、あるいは能力に見合わない業務であれば、その人がどれだけ頑張ろうが大して会社には貢献できず、結局やりがいがないと感じるのです。
結果、その人は辞めます。
では、どうすればよいのでしょうか?
アサイン種類別の正しい対応方法とWillへの向き合い方があります。
それを実践することで、メンバーにとっても会社にとっても良いアサインが可能になります。
Will x Canのアサイン・マトリクス
まず、アサインの4つの種類とその対処法についてお話します。
①最適アサイン(Will高xCan高)
やりたい仕事だしできるだけの能力も持ち合わせているというアサインです。メンバーが仕事にフルパワーで臨むことができ、かつ能力もあるので大きな成果が期待できます。
このアサインではメンバーのモメンタムを生むことができます。成果が出ればきちんと評価することで、メンバーが駆け上がれるように全力で支援します。ここが理想のアサインになります。
②ポテンシャルアサイン(Will高xCan低)
やりたい仕事だけど単独でその仕事を成し遂げるだけの能力はまだ持ち合わせていないというアサインです。
このアサインに踏み切る場合は、アサインする前のコミュニケーションが重要になります。
このアサインでは放置していては成果は出ません。成果が出なければ「やりたい」と言ったのはメンバーのはずなのに、なぜかモチベーションダウンするということが起こります。
あるいは、やり方がわからずパニックゾーン(自尊心が傷ついたり自分に無力感を感じる危険なゾーン)に陥る可能性があります。
このアサインでは共に業務を行ったりマイクロにマネジメントを行うなど、マネージャーの密な関りが必須です。そのリソースがマネージャーにないのであればこのアサインはできません。
ポテンシャルアサインをするのであれば関わり方をメンバーと事前に確認した上で、必要なサポート・介入を行いましょう。
自学自習などの能力開発を「want」ではなく「must」の要件に入れましょう。しっかり要望して大丈夫です。
うまくいかない可能性もあるのでアサインを変えることもありますが、事前にその可能性を伝えておくことでアサイン変更時の反発を抑えます。こうすることでマネージャー側も柔軟にアサインできます。
これを伝えない場合は、アサイン変更時にメンバーの大きな反発やモチベーションダウンを起こします。
また、「自分はできると信じて止まないがマネージャーから見ると難しいと考えている場合」においては、まず短期的にでもこのアサインをしてその業務内容をフィードバックしてあげることで「能力が足りないという事実」を見せてあげるということもできます。
③プロアサイン(Will低xCan高)
こちらはWillが低いアサインです。メンバーにとってはできるけれどもやりたくない仕事です。過去行った業務と似たような要件の業務や、本人がすでにクリアしたと思い込んでいる業務をお願いするときなどはこのアサインになります。
このアサインでも事前のコミュニケーションが重要になります。
一度その業務と似た業務を経験していて成果を出している人ならば頼りたくなると思います。そのことをストレートに伝えましょう。
あなたしかいない、頼りたい、とアトラクトすることが重要です。
どんな仕事にも工夫の余地は無限にあります。仕事の質にキャップはありません。どのような改善余地があるかを具体的に説明し、その人にとってまだまだ挑戦し甲斐のある仕事であることを伝えます。
その人がやりたい仕事であったとしても、能力が足りなくてアサインができない場合はあります。会社としてポテンシャルアサインのリスクが取れない場合です。
その場合は、その人がやりたい仕事に求められる要件をきちんと説明し、その人がなぜ足りないと考えるのか事実を元に丁寧に説明します。
その上で、成長課題を設定しそれを乗り越えるための支援をすることでプロアサインでもモチベーション高くその課題に向き合ってもらいます。
④絶望アサイン(Will低xCan低)
やりたくないしできる可能性も低いというアサインです。
このアサインでは人は辞めます。
その人に会社に残ってほしいのであれば、このアサインは基本的には行いません。
Willはそのまま受け止めるのではなく、最適化する
ここまで4つのアサインとその対応方法を見てきましたが、できればWillが高いアサインにしたいところですよね。
メンバーのWillに正しい・正しくないというのはありません。その人がそう願うならそれがWillのファイナルアンサーです。
Willはコントロールはできませんが、介入はできますしやるべきです。
Willはそのまま受け取るのではなく、「なぜそのようなWillを持っているのか」聞いてみましょう。そして、聞いた後はマネージャーの視野でアドバイスを行いメンバーのWillを最適化しましょう。
ここがマネージャーの腕の見せ所です。
①キャリアアップ型Will
自分の考えるキャリアプランは●●なのでそれに向けて●●をしたいです、というように、自分の歩みたいキャリアイメージを根拠にしたWillです。
ですが、自分のキャリアプランを正確に描くことほど難しいものはありません。キャリアプランには他人の意見・アドバイスが必要です。
メンバーの話をしっかりと聞いた上で、マネージャーの視界で良いキャリアプランとは何か?今の仕事がなぜそのキャリアプランに叶っているのか?アドバイスしてあげましょう。
②ポジション型Will
会社の中で重要な業務を担いたいので●●の業務を行いたいです、というように、自分が担うべき役割の重要度を根拠にしたWillです。
会社の状況や、その状況における自部署の役割、その中におけるメンバーの役割は、メンバーよりもマネージャーの方が役割上正確に見えます。会社の中におけるその業務の意味付けには、マネージャーの意見が不可欠です。
マネージャーの視界で見えているその業務の重要性を説明してあげましょう。
③タイプ型Will
自分は●●のタイプなので●●の業務をやりたいです、というように、自分が認識する自分の特性を根拠にしたWillがあります。
自分のタイプを自分で認識するにはかなりの自己認識力が必要です。一人で決めてしまうよりも他人から見てどう見えるかという意見・アドバイスをもらった上で決めることが非常に有効です。自分には見えない自分というものが多々あります。
マネージャーから見てメンバーがどのようなタイプに見えるか、客観的な意見を伝えましょう。
④ビジョン型Will
自分は将来●●を目指すので●●の業務をやりたいです、というように、自分の夢・ビジョンから逆算したWillです。
将来の遠いビジョンへの道筋はメンバーにも見えていないことが多く、筋の悪いロードマップになっていることもあります。
メンバーよりもマネージャーの方が見えていることがあればきちんとアドバイスしてあげます。
Willは「コントロール」はできません。その人が何がしたいのかはその人の考えでしかありませんし、それを外からの圧力で変えることはできませんが、アドバイスしてあげることはできるはずです。
メンバーが真のWillに近づけるためにも、マネージャーの視界でアドバイスしてあげましょう。
最後はマネージャーからの要望でアサインを決める
会社の目的は1人のメンバーのWillを叶えることではありません。会社としての目的・目標を叶えることが会社の目的です。
よって、メンバーのWillを聞き、アドバイスをした結果、Willの低いアサインになるかもしれませんが、その時は「このアサインでお願いします」とはっきり要望しましょう。
わかってあげること
同じ「Willに叶わない」アサインだったとしても、次のどちらが皆さんはまだ受け止められるでしょうか。
Will通りに行かないことは悲しいことでもありますが、「この人はわかってくれている」と思えるマネージャーに言われたことなら、いずれまたチャンスは来るだろう、この仕事にも意味はあるのだろう、だから今はこの仕事で頑張ろう、と思えることもあると思います。
メンバー全員のWillを叶えることは難しいかもしれませんが、全員のWillを心からわかってあげることならできます。わかってあげることが非常に重要だと思います。
そのためにも、メンバーの話をよく聞きましょう。「よく聞く」というのは、「理解できないことがあれば相手にしつこく聞く」し「場合によっては理解するために自分で調べ事もする」レベルです。
「わかってもらえない感」という絶望感
最近ある人に「何がしたいんですか」と聞かれたので「ベンチャー企業のマネージャー向けトレーニングサービスを提供したい」と話すと、「あ~ロジカルシンキングとかマーケティング戦略のパートは任せてよ、テンプレがあるので」と言われたことがあります。う~ん、なんか違うんです。なんか。というか全然、全く。
もし本当に聞きたいならもっと話を聞いてほしかったし、私の言ってることを理解するのに前提知識がないなら調べてほしいんです。
このような「わかってもらえない感」はメンバーに重く、重くのしかかります。Willに叶う仕事にアサインされないことよりも、こちらの方がよほど大きな絶望感を感じます。メンバーが辞めたくなる理由のひとつはこれです。
相手の話を理解することは難しいのですが、まず「難しい」ということを理解しましょう。その前提で、メンバーのWillを理解しようとするとき、「しっかり聞いて」「できるだけ深く理解する」ということが非常に大事です。メンバーの「●●したい」というのを聞いて二言目には「あ~それはね」なんてすぐにWillを決めつけたりアドバイスをしたりしないでください。Willというのはそんなに簡単に理解できるものではないです。「良く良く」聞いてください。
Willを常に深く聞いてくれて、Willについて長期的に議論しながら、その時々のアサインをきっちり要望してくれ、その意味もきっちりと説明してくれたDeNA時代の上司には今でも感謝しかありません。
Willについて確定的な答えを授けてくれたのではなく、ずっと聞いてくれて、ずっと議論してくれて、伴走してくれるような人でした。自分のその時の希望通りの仕事じゃなくても、その人がそばにいてくれたので安心して全力で仕事に臨むことができました。
アサインは管理・運用する
前回記事でご説明した「4つのタイプ」と今回の記事で出た「Will/Can」掛け合わせて、アサインを管理します。
メンバーのタイプも、Willも、Canも常に変わります。その変わりゆくメンバーの状態を常に管理し、良いアサインになっているか一元管理します。
こうすることで、メンバーが生き生きと仕事しつつもチームとして出すべき成果に向けて走れるチームが作れます。
同じ会社・事業部の他のマネージャーとこれを共有し、相互にアドバイスし合うことも有効です。
このようなメリットがあります。そして何より
マネージャーが横で連携し、上司の指示を待たずともいろいろな問題を自発的に解決していける組織ほど強い組織はありません。
ぜひ試されることをおすすめします。
今回の内容は動画でも話していますのでぜひご覧くださいませ!
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