呼吸困難と肺水腫①
記事を読んでくださるみなさま、こんにちは。獣医師の「いつも一緒」と申します。
今回は~呼吸困難と肺水腫~についてです。
呼吸困難の子が、酸素室に入ったまま出られなくなるという事が時々あります。そもそも、呼吸困難になる病気にはどんなものがあるのでしょうか。
呼吸困難になる代表的な病気
1、肺水腫
2、重症の肺炎・気管支炎
3、気管支拡張症
4、気胸
5、心膜・横隔膜ヘルニア
6、異物が呼吸器を圧迫・閉塞させている
7、気管虚脱
8、呼吸器に関係する腫瘍類
9、膿胸
10、乳び胸
11、短頭種気道症候群
12、軟喉蓋過長症
13、喘息
14、その他呼吸器・胸・心臓の疾患
ざっと上げるだけでもこれだけの病気があり、獣医師が病名を絞っていく際には、次のような点をポイントにします。
*咳を伴うか伴わないか
*心臓病がないか
*呼吸音の種類(聴診器)
*急に起こったのか、もともと呼吸しにくかったのか 等
そして場合によってレントゲンを取り、原因を探します。
(心臓が悪い場合は心臓性肺水腫の疑いが強くなるので、エコーで心臓の状態を確認することがあります。)
あまりに呼吸困難が強い場合は、酸素吸入をしながら無理せずにできる範囲で検査を行うようにします。
とても多い病気~肺水腫~
呼吸困難の原因として非常に多いものの中に「肺水腫」があります。肺水腫の原因は、心臓疾患によるものが多いですが、呼吸器疾患や感電、化学物質の吸入などから肺水腫を起こす場合もあります。
肺水腫とは、肺に水が溜まって空気が入らなくなり、酸素不足から呼吸困難になる病気です。
肺の水を取る治療を中心に行いつつ、原因の治療も行います。
具体的には利尿剤、抗炎症剤、抗生剤、心臓のお薬などを使って治療しますが、とても多い「心臓病による肺水腫」についてお話ししようと思います。
~心臓病による肺水腫~
心臓は、体の液体(血液やリンパ液等)を送るメインポンプです。このポンプの調子が悪くなる(=液体を送り出す力が弱まる)と血液やリンパ液等の流れが悪くなり、滞ります。
また、体内の水は主に腎臓で必要な分を体内に残し、不必要な分を尿として排泄しています。ところがポンプである心臓が弱ってしまうと腎臓の力も同時に弱るので、尿が作られなくなります。
このように心臓が弱ると腎臓も弱ってしまい、体内の液体がいたるところで過剰になったり滞るため、水分があふれてきます。その結果、肺水腫、胸水、腹水または全身のむくみが現れてくるのです。
~次回へつづく~