見出し画像

NNN(猫猫ネットワーク)ってあるの?くるみとの出会い

ご覧くださり、ありがとうございます。

1年ほど前に、「介護が始まるとき、迎え入れた小猫」というタイトルで、キジトラ猫、コハクをお迎えした時の話をお伝えしました。
(だいぶ間が空いてしまい、すみません)

今回はその続編のような内容になりますが、コハクではなく、コハクとほぼ同時にお迎えした女の子、くるみが主役です。
約8年前に起きた、なんとも不思議なくるみとの出会い。
猫好きな方に楽しんでいただけることを願って、お届けします!!

コハクの引き渡し予定日に起きたハプニング

「ペットのおうち」という里親募集サイトで見つけた小猫(のちのコハク)を、島原市内の女子高校生から引き渡してもらう予定の朝。

プルルル……、プルルル……

キッチンで姉の携帯電話が鳴る。

(小猫のご実家から、待ち合わせの連絡かも……)
私はそわそわしながら、姉にかかった電話のやり取りに、耳を澄ましていた。

「はい!こんにちはー」

姉が弾ける声で電話に出た。しかし、すぐにトーンダウン。

「はい……、ええ……、わかりました」
電話を切った姉の顔には、どこか沈んだ表情が浮かんでいる。

「どうしたの?」

私が詰め寄ると、姉はうつむきがちに答えた。

「引渡し日を延期させてほしいって連絡だったの。小猫が見つからないんだって……」

「えぇ!!小猫が見つからないってどういうこと?!」

驚きと焦りで、私はつい声が大きくなってしまっていた。

姉によると、小猫は家の中と外を自由に行き来できる環境で育っていた。しかし今日、ご実家の方が引渡しのために探しても、家の周辺で姿が見られなかったという。
「いずれ見つかるはずだから、また連絡します」とのこと。

(本当に無事なのか?いつ会えるんだろう?)

頭の中を、心配がぐるぐる巡っていった。

後で聞いた話によると、島原市は交通量が少なく、飼い猫の放し飼いが一般的だそう。だから小猫を見失う可能性もあるらしい。

当てがはずれて、姉と私がぼんやりとキッチンの椅子に座っているときだった。
外から、かぼそくて、かわいい小猫の鳴き声が聞こえてくる。

「ミー、ミー」

ふたりでびっくりして、顔を見合わせた。

「……でも、なんか小猫の声がしない?!」

「空耳じゃないよね。小猫が自力でやってきたのかな?」

(家の中に居て、小猫の鳴き声を聞くことは、少なくともここ10年はなかったはずだ。しかも、今日は小猫の引渡し予定日!
こんな絶妙なタイミングで、別の小猫がやって来るなんて奇跡ある?!)

小猫がテレポーテーションしてきたのでは?!そんな突拍子もない妄想をしながら、私たちは外に出て声の主を探した。けれどもその声は近づくと離れ、姿は見えなかった。

姿を見せない小猫

翌日、女子高校生から「小猫が無事に見つかりました!」との報告があった。ホッと胸をなでおろす私たち。引渡しはまだ先になりそうだった。

そうこうしている間に梅雨入り。シトシトとした雨が降り、例の小猫の鳴き声はますます近く、そして大きくなった。

(近い!!たぶんうちの庭だ!どこだろう?!)

私は庭に出ると、母猫の鳴き真似をして「ミャー、ミャー」と呼んでみた。
小猫の小さな声が「ミーミー」、返ってくる。
どうやら小猫は、わが家のハーブ畑にいるらしい。
そこはレモングラスやミント、みょうが、三つ葉など、植物がわさわさ茂っていて、小さな小猫がうまく隠れることができるのだ。

(外の世界は危険がたくさんあるから、そうやって隠れていた方が安全かもね……)

呑気にそんなことを考えていた。

数日後、雨が土砂降りに変わり大雨警報が出されると、小猫を心配して姉が叫んだ。

「小猫、側溝に隠れてるかもしれない。大雨が降ったら流されちゃうかもよ!守らなきゃ!」

姉は長靴を履き傘をさすと、腰をかがめながら家を取り囲む側溝を覗き込んでいた。
私も一緒になって家の周辺を探索する。
けれどその時も声だけで、猫は決して姿を見せないのだ。なんという用心深さ……。

諦めかけて、たまたま倉庫の中に入った時だった。
「ミーミー」というかわいらしい鳴き声が、倉庫の奥から聞こえてきた。

小猫は倉庫で雨宿りしていたのだ。姿を見せてくれない小猫だけれど、無事でいてくれるだけでうれしくて、頬が緩んだ。

子猫の保護開始

姉に相談し、この日から小猫用のキャットフードとミルクを倉庫の中に置くことが、私たちの日課になった。食器はしっかり空になっているので、ご飯をしっかり食べていることがうかがえる。

そしてご飯を置き始めてから数日経った時、やっと「その時」が訪れた。
倉庫の引き戸をサッと開けると、倉庫の入り口付近に置かれた園芸グッズの下辺りからガサガサという音がする。私は息をのみ、園芸グッズの袋をそっと横にずらす……。
するとこちらを見上げ、びっくりしている小猫と目が合った!!

(かわいー!!キジトラ猫かな?引取り予定の子に似ているような……)

しかし流れ星のようなその一瞬だけ。小猫はシュッと他の雑貨の陰に隠れて、見えなくなってしまった。

やっと抱っこ!!

翌朝、ハーブ畑の中から子猫の声がした。

(また声だけだろうな……)

期待をせず朝食を置くと、レモングラスの間からほんの少し顔をのぞかせてくれた!!

(あんなに警戒してたのに、気を許してくれた!)

小猫のときは、ふかふかした毛をしていたくるみ。まぼろしのような登場!!


私は家の中に駆け込み、姉を呼ぶ。姉はダッシュでやってきた。
そうして私たちが静かに、熱い視線で見守る中、小猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら、レモングラスの葉の隙間から両前足をのぞかせた。前足を手前に突き出し、おしりを持ち上げる。その後、今度は頭をぐいっと前に押し出し、後ろ足を伸ばす。そんなヨガのような動きを繰り返しながら、ゆっくり、ゆっくりと前に……。

ついに私たちが手を延ばすと触れることができるところまで、出てきてくれた!
ふわふわの柔らかい毛をした、愛らしいキジトラの女の子だった。
私は両手で包み込むように抱きかかてみた。ほんのりレモングラスの香りがする。
姉もその後抱きかかえ、弾む声で言った。

「この子、野良なのにこんないい香りがするなんて!」

小猫とのふれあいは、いつだってワクワクする。特に懐いていなかった子が、心を開いてくれたときはジーンとくる。
しかし、かわいがると責任も発生!!島原の小猫との新たな引取り予定日が、すぐそこまで迫ってきていた。

「この子、どうしよう……。せっかく懐いてくれたから、できれば迎え入れたいけれど、いきなり2匹まとめてのお迎えは厳しいよね……」

「いざとなったらこの女の子の里親を、ペットのおうちで募集するしかないかな……。それにしても、なんで希望していた子とそっくりな子が、引渡し予定日にくるのかな」

ふぅとため息をつきながら話す姉に、私は言った。

「やっぱりNNN(ねこねこネットワーク)の仕業じゃない?」

「ここは長崎だからNNNNじゃ?!長崎ねこねこネットワーク、長崎支部があるのよ」

姉もにんまりしながら、同調。
私たちが頭に思い浮かべたのは、「NNN(ねこねこネットワーク)」という、謎の猫組織が関わっているに違いない、という妄想。
「ペットのおうち」に掲載されたキジトラ猫にピンときて、私がこの子がいいと言ったこと、その後のやり取りがNNNに監視(あるいは盗聴?)され、ピッタリな猫が送り込まれたのでは?!という仮説だが、同じような事例はほかにもあるようだ。

猫と暮らしたいと思っただけで、猫が向こうからやってきた不思議なエピソードが、インターネット上に溢れている。一度ロックオンされると、なかなか手ごわいらしい……。
そして私たちも、まんまとNNNの手中にハマったと言えるのかもしれない。
コハク(島原からお迎えした子)と、くるみ(今回の迷い猫)、それからくるみの子どもたちも加わって、現在4にゃんと暮らしている私たち姉妹……。

次回は、コハクとくるみの運命的な出会いについて、書きたいと思います。


前足を手前に突き出し、おしりを持ち上げるくるみ……。
その後、頭をぐいっと前に押し出し、後ろ足を伸ばすくるみ。
この動作を繰り返し、ゆっくり出てきてくれました!!


いいなと思ったら応援しよう!

母アンナ
記事がお役に立ちましたでしょうか。 サポートいただけますと、うれしく思います。 いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!

この記事が参加している募集