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【30歳までに読むべき本】SONY 平井改革の1500日
おすすめ読者
・会社経営に関わりたい
・PM(プロダクトマネージャー)
・チームマネジメントに関心がある
・マーケティングに関心がある
※特に「かつてはそのカテゴリでTOPだった商品・サービス」の価値の見直し・リブランディングの思考を具体的事例を通じて学べる
誰が書いているのか?
日本経済新聞社の記者
「電機業界の負け組」と揶揄されたソニー。2012年に社長に就任し、苦闘を続けてきた平井一夫氏の「1500日改革」の深層を描き、稼ぐ力を取り戻したソニーのいまとこれからを描く。
何を書いているのか?
ソニーの改革を本社経営戦略だけでなく事業毎に復活の詳細を記している。(とはいえ一番面白いのは本社戦略に関する第1章であるのは間違いない)
・テレビ
・ゲーム
・エンタメ(映画・音楽)
・音
・カメラ
・モバイル
・ものづくり体制(理想工場の設立)
2020年2月6日には下記のような記事も出ているソニー。その復活劇の詳細が体験できる。
この本のオリジナル性
「かつては(Appleが目標とするなど)TOPを走っていた企業の低迷・復活の軌跡」がストーリーとして単純に面白く、且つ心情・行動共にリアルな描写で語られている。
「不条理な契約」というマイナスからのスタートから大躍進となる「PIXAR」と比べると、日本的な企業風土や多彩な事業を含んでいる点で、人によってはより感情移入できるだろう。
要点
「不都合な状態に目を向け、共有する」。全体を通じるテーマはこれだ。
本社として経営戦略見直しの決意に至る前の、平井就任後のある記者会見の発表に対して、社内のパニック状態が伺える。
テレビ事業ではすでに販売数量から利益重視に方針が転じていたにもかかわらず、全体の戦略では「新興国での事業の拡大」が打ち出された。
事業ポートフォリオの組み替えも明確な理念がないまま、高収益な化学事業や差異化技術の源である電池事業の売却・提携がうたわれた。
当時のソニーの状況を「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」になぞらえている。
(日本軍の)目的が不明確で、戦略志向は短期決戦、戦略策定は帰納的(インクリメンタル)で、戦略オプションは狭く、統合戦略が欠如、評価は動機やプロセスを重視する。
対する米軍は目的が明確、戦略志向は長期決戦、戦略策定は演繹的(グランドデザイン)、戦略オプションは広い、評価は結果を重視すると分析した。
平井チームの就任直後の施策はどこか日本軍の失敗に通じる部分があった。
この状況を変えるべく、吉田をプロジェクトオーナーに指名し、構造改革に着手することに。そして、不都合な情報を開示した。
14年2月6日、ソニーは「PC事業及びテレビ事業の変革について」と題した記者会見を開き、エレキ事業の抜本的な改革を実施することを明らかにした。ソニーの歴史上、大型の事業撤退は初めてであり、伝統あるテレビ事業を分社するという決断は世間を騒然とさせた。吉田は語る。「ソニーはこれまで大きな事業をやめたことはない。平井さん以下の経営チームで事業をやめるという決断をする、という事実が社員に伝わった。この経営判断でソニー全体に緊張感が相当に生まれたと思っている」。吉田と十時がソニーに正式に復帰して68日後のスピード判断だった。吉田は経営者の心構えをこう説く。「トップマネジメントの仕事はソネット時代から3つしかないと考えている。方向性を出すこと、そして責任をとること、最後は人事。ほかは大体、人に任せる。考えなければならないことはたくさんある」。
社内論理を優先する意識を改め、外部への説明責任、資本市場の信頼を得ることを重視しようと呼びかけたのだ。この日の決算はその標語を自ら率先垂範で有言実行したものだった。そして、会見の中身は社外へ説明すると同時にソニーの社員にも向けられていた。
この「不都合な状態を開示する」ことの重要性は別途紹介している「Netflix最高の人事戦略」でも同様のことが記載されていた。従業員全員が同じ課題を理解し、それの解決を目指すことで最高のチーム・組織が出来あがる。
マネージャーが従業員に伝えるべきことは「現状の正確な状況と、事業場の課題、幅広い競争環境、自分たちがやるべきこと」
従業員には実行してほしい”点の目標”を伝えるだけでは不十分。
組織・企業が抱える課題を共有し、同じ目線で課題解決に向かうことを軽視してはならない。
好きな話
・エレキ部門は「規模の大なるを追わず」を徹底。
大事にしたのはソニーが得意とする「高付加価値化」。
・ゲーム事業の合言葉は「399」
→最初に売り出し価格を399ドルと決め、それからゲーム機の仕様を固めた。これまでのPSシリーズの開発の進め方とは全く違った。
また、本社から事業を切り出し、分社化した際の狙いについて
分社を進言した吉田の狙いは、事業部の「説明・結果責任」を明確にすることと、「無駄の見える化」にあった。
今後、事業部ごとに財務諸表を作成し、トップの判断で事業の買収や提携、売却などを可能にし、経営に自立性を持たせる。
本書は日系の大手企業がイノベーションのジレンマに襲われながらも、復活を果たした経緯に触れられる。これは社会人の希望そのものだと思う。