猫人間
娘が、部屋の中で、すてん、と転んだ。
転んだ、と言っても、本当にすてん、という感じで、軽く、けがは絶対にないと、見ていたわたしは娘を見ていた。
フローリングの床で、仰向けに転んだ娘は、なんの声も上げず、すぐに立ち上がろうとせず、ぼうっと、天井を見ている。
天井に、なにかいるのだろうかと思うほど、一点を見つめ、仰向けに転んだ、そのままの体勢で、じいっとしている。
猫人間、という、そんな感じがする、数秒の、娘が転んで仰向けに倒れてじっとしている時間、数秒だったはずなのだけど、娘が猫人間になっていたのは、もっと長い時間のようにも、そのときのようすを思い出している今のわたしには、思える。
立ち上がった娘は、すぐに普段の暮らしに戻っていった。