サヨナラババァ(3)
「九州地方のとある都市計画が浮上しパチンコ屋の持ってる土地が再開発用地で高騰することを予想し投資家で共同で取得し配当を出せるのだが1口乗らないか?総額10億円の出資を集めている最中だ。年明けには開始され早ければ一月半ばには配当がくる。」
これが石巻で出された投資案件で、少なくとも900万以上の金がどこかで動いてることは感じ取れた。当時運転手として同行していたやつから情報は拾った。その投資の償還期限が年明けの一月半ばには開始される。
その案件がテンプラか実態のあるものなのかさえまだ掴めていない。
ババァはその償還金の引き伸ばし場面か、その金を僕に用意させようと思ったのではないか?と色々と考えていた。
でも・・・九州地方の案件がどこから湧いてでたのか気になる。
当時、僕は土地や手形が絡む案件は不得意で話が振られても受けなかった。興味を示さなかった、僕が興味あるのは現金商売と株式と事業だけだった。石の商売が現金商売の事業で僕が興味を示しメンバーがKとなれば絶対に出てくるはずだとババァは踏んだ可能性はある。
また化かし合いの連鎖に引き戻された。
『僕は東北が嫌いだ。』
理由は山ほどあるが商売が過去にうまくいった試しがない。人の問題か案件の問題かわからないがあの諦めてしまってる町が大っ嫌いだった。いくら可能性や仕事を提示してももっといい条件で働きたがるし村社会なので関西人と気質が合わないように感じる。そんな中でも今回あってきた数人関係者の中でもDとMは僕の悪い癖で気の毒だなと情が湧いてしまった。こんなバカな連鎖に巻き込んではいけないと判断した。
1000万の現金を用意する。
まだ全体の入り口を掴めないままとりあえずこの鉄火場に1000万の種銭を僕は用意した。
現金があるうちは靡く連中だ。
そんな時は僕はとやかく聞かない、まずはテーブルに乗せることだ。
それもKとババァがいる前で。
「会長、1000万用意しました。まずは”D”と”M”に元金を戻しましょう。償還期限前に元金だけ会長が戻せば威厳は保たれます。引き伸ばしたり案件の遅れを示すと不振につながります。100万は行動費です。」
「K今すぐ行くよ。」
行動はババァは早い、僕が石巻から戻ってすぐにトンボ帰りで向かうことになった。
僕の読みは、Kは僕が金を用意するやつだとわかれば必ず僕に話を持ってくる。そうすれば裏にいるのが出てくるだろう。そのいる奴は僕の中ですでに検討がついていた。因縁の相手だ、僕が一番嫌うやつだ。相手も僕のことが大っ嫌いだろう。
”D”のところに行き300万をまずは返した、Dはこれを頭金に震災補助金を使って一軒屋を購入し仮設住宅からその後引っ越した。元々彼のお金なのだからなにもしてないがババァへの疑惑は信頼にかわることができた。 後日、トラック運転手になり仕事を選ばず家族のために前に進み始めた。新居へ一度だけ僕は行きことの全容を話した。
「もう二度とあれには関わらない方がいいD君が気がついているように、そうだと思うから。」
それから二度と会うことはなかったが、メールを思い返してみると一度だけ夏頃に彼に協力してもらいたいことがあり連絡とり元気にやってる様子だったことを今思い返してみる。
”M”は600万受け取らなかった。配当を楽しみにしてるしそれよりも嫁を紹介して欲しいとお願いしてきた。1人紹介したが結果それは実らなかった、女性と一緒にいる写真を送ってきたがその背景の部屋は沈みゆく泥舟に見えて幸せな結末は想像できなかった。全てを失ってまた出直しになる気がした。
彼の親戚が河川地域の土地と漁業権をもっておりKはそれの”川砂”の採掘権を取得したかったことがわかった。いろんな法的な網をかいくぐりその場所を見つけたのだろう。石巻は復興関連のいろんな商売であふれかえっていた。どれもが騙し騙され自浄作用をもってして地元はあるべき姿へ時間をかけてむかっていた。そんな中、Kやババァのような連中が入り込んでくるわけだ。
600万浮いた。
無論僕のところに戻ってきた、そしてそのまま福岡へ移動することになる。
太宰府の大型店舗をいくつか集積する場所に土地がありそれを取得するための計画考えろ言われる。驚きなのが、まだまとめてもなかったのか・・・それなのになぜ金を引いたのだ?
地元の一級建築士であたまに黒い粉をふって頭皮の汗で黒い汁がでてる珍妙な訛りの強いおっさんに会わされ概要を聞かされる。土地の取得など無理だろう・・・と思える案件で十月ごろにはとっくにブレイクし始めていたことがわかる。 ババァが保険で僕を引っ張りだしてこの案件の穴埋めに回ったのは確かだろう。でもまだ片手落ちな気がする、そんな穴だらけのことを僕に回してくるはずかがないババァでヤキが回ったとしても・・・。
もう1件熊本のそこそこの大きさの土木会社と会うことになった。
方言がきつくてまったく言葉が理解できなかったので、熊本のあさりで関係した地元選管やってるやっかいな男をナビゲーターとして用意されていた。この熊本の会社がコンクリートボックスの事業に投資する用意がありそれの事業計画をかけと言われる。
そもそも、コンクリートボックスはどこから生まれてきたんだ?
この案件の60%ぐらいが見えようとしていた。
熊本から福岡へ戻り、東京へ戻るかソウルへ戻るかをババァと話していた。
11月に呼ばれ数日で帰るつもりがすでに1ヶ月いようとしている。
大晦日がもう寸前に近づいていた。
大晦日は、こういう連中の間では「餅代」がないないと騒ぎはじめてやっつけの儲け話がわんさと湧いてくる。どれも詐欺みたいなものだ。
案の定「餅代」がないとKがババァに相談して、600万の中から出してやるかどうか決めろと言われる。ババァは強制するが強制しないものいいいつもしてくる。
「どうする谷内田?」
僕はこの瞬間を待っていた、やるべきことは1つだ。
「金を出す代わりに、Kの会社の株式40%をもらえますか?役員登記も同時にお願いします。」
資本金1000万の会社なので、400万で買い取ります。
そうやってKの会社を自分の会社にして一旦韓国へ戻ることにした大晦日だったと思う。
毎年大晦日か年明けに韓国へ戻っている、運命だな。
1月5日、Kから連絡がある。
「会長に内緒で、福岡で会えないかな? ”H”と一緒に。」
予想どおり、Kの裏にいる”H”、僕の大っ嫌いなやつをおびき寄せた。
『では明日、博多便をとります。』
つづく