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寝るということ その2 - 身体の感覚

羽毛布団から手足を出すと、部屋のひんやりとした空気に触れ、鼻から吸い込む空気も幾分冷たく感じる。スマホを握っている掌は逆に温かく熱を帯びていて、画面に触れる指の腹までも発熱しているかのようだ。スマホで逆光した黒い指先がわたしの身体の延長線上に存在していることに対しては何も感じないけど、左耳が枕に潰されてそれ相応の痛みを感じる。それも私の身体の一部というより、耳という単体がつぶされて外界からの音を遮断されている(逆に鼓動からくるザワザワとした音だけが身体に響く)だけに過ぎない。膝から曲げたふくらはぎと足裏は動く自由を忘れたまま定位置に置かれ、片方の足の甲に付属する指先で片方の足裏を軽く押し付けていると、いつの間にか冷たかった足裏に体温が戻っている。スマホを支えている方の掌も、固定位置を守りそれによる手首の痛みが二の腕や肩に響いて、つぶされた耳と交互に身体の重みを訴えてくる。耳には淵があったと教えてくる。


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