心の声が聴こえる映画~『82年生まれ、キム・ジヨン』
公開まもない新宿の映画館は、コロナ禍で席を間引きながらも、ほとんど満席だった。両隣の席が空いていて良かったと、わたしは終演後の灯りに俯きながら席を立った。泣き腫らした顔をマスクで隠せて良かった。それくらい、泣いてしまった。
小説は読んでいたから、ストーリーは知っていた。なのにまるで初めて出会う物語のように新鮮で、冒頭の数分から涙がこみあげ、映画が終わるまで泣きっぱなしだった。そんな観客は、わたしだけだったかもしれない。今年7月に母を亡くしたばかりで、個人的な想いが涙腺を壊した