⭐️日々の診療から 認知症の家族とのかかわりの中で思うこと⭐️
超高齢化社会で認知症の家族を抱える可能性は増えてゆくと思います。
私がこれまで医師として多くの認知症患者、家族に関わる中で、 認知症の両親のために自分の人生を生きられなくなった息子娘等を多く見てきました。
厳しい競争社会で生き残るためには、たとえ親でありどれだけ情が有ったとしても、 私自身は「認知症になった時点で別人になったと考える」という受け止め方も正直大事であると思っています。
冷たい、と思われるかもしれませんね。
しかし、認知症の親に関わりすぎて子供の人生が親の犠牲になってはいけないと思っています。
なかなか言いにくいことですが、これは超高齢化社会で認知症が蔓延する日本で周知すべき重要な事柄だと考えています。
Aさんは、父親はアルツハイマー型認知症となり、その典型的な症状から驚くほど性格が悪くなり、母親は認知症になり廃人化と幼児退行化し、かつての両親とは別人になってしまいました。
認知症になる前は父親は気前よく部下や弟子に振舞い人望もあり、母親はどんな時も寄り添ってくれる優しい存在だったのです。
しかし、Aさんは両親から傷つくような言葉を言われ、金銭的にも負担を求められるようになります。
Aさんは両親の顔を見てまぶたに浮かぶかつての両親の姿と、今の両親の現実との間で悩みます。 そして、様々な経緯を経てある時「もうかつての両親は死んだ」と心の中で葬式をあげます。
「親の面倒は子供がみるべきだ」という価値観は人生100年時代には合致しなくなってきていると思います。
親を施設に入所させることを親不孝をしていると心の内に罪悪感を持ち続けているご家族もいらっしゃいます。
在宅介護でサービスや環境を調整して介護をしても老々介護になりがちですし、年金だけで入所可能な施設を探すのも大変なのが現実です。
血縁であるというだけで、長期に渡り金銭的にも身体的にも負担を負うことは不可能に近いです。
認知症になる前に両親が望んだであろう自分自身の人生を生きた方がいいと思うのです。
あくまで個人的な意見ですがご参考にしていただければ幸いです。
※写真はとある有料老人ホームの施設の光景です。