【読了】「読解力の育成」「探究」の基盤となる資質・能力
高木展郎 著
三省堂
今の子どもたちに必要なのは何でしょうか。私は「読解力」がこれからの教育の大きなキーワードになると感じています。
恥ずかしながら、PISAについて深く理解していませんでした。存在は知っていたし、日本の学力課題も把握しているつもりでしたが、PISAの歴史や実際の問題内容までは詳しく見たことがありませんでした。教員としてまだまだ学ぶべきことがありますね…。
教員生活も5年目となり、生徒と向き合う時間が増えてくる中で、「考える力」に課題があることをやはり強く感じます。与えられた知識を覚えることは得意でも、それを基に考え、自分の意見を持つ力が十分に育まれていない場面が多いのです。
本書はPISAのデータを基に、読解力の問題を客観的に定義していました。
それを受けてこれは本校だけでなく全国的な課題であることが明らかになりました。
はたして、私たち教員は、こうした現状をどれだけ理解しているのでしょうか。学習指導要領が改定され、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に向かう力」の3観点が導入されたことからも、知識を覚えるだけでなく、それを活用して考え、アウトプットする力が求められているのはどの教員も今向き合っているのだと思います。
しかし、私自身、これらの視点を意識してきた「つもり」でしたが、PISAが求める「PISA型読解力」に触れることで、自分の授業活動を見直す必要性を感じました。
読解力は単に読む力だけでなく、得た情報を基に考え、表現する力を含むものであり、これが「探究」の基盤となる資質・能力なのです。
夏休みという時間を活用し、自分の授業が「何を目指した活動」なのか、そして「その活動を通じて生徒に必要な力が育っているのか」を客観的に振り返る必要があると感じているところでした。
ディクトグロスやリテリングといった活動を行ってきましたが、それらが単発的なものになっていたのかなと少し反省もしています…。総合的な言語活動を工夫したいきたいですね。そのためにも今の教育的ニーズが何か、それに応えられている活動ができているのか。という俯瞰的な目を持つようにしていきたいと思います。
また、教師は、社会情勢や変化に敏感でなければならないと改めて強く思いました。
「読解力」はただ読んで、「暗記」や「理解」することだけではありません。そこで得たことを、今までの自分の経験や背景と照らし合わせ、そして「考える」そしてその考えを「表現」していくこと。やはり「読解力」は「探究」と深い関係性があります。
テストの点数や、入試などの「数字」のみにとらわれていたら、いつまでたってもその檻の中に閉じ込められて、自分の外側に広がっている社会に目を向ける姿勢や、批判精神をもち、よりよい社会を創ろうとする姿勢は身につかないままでしょう。
私たち教員は、目の前の生徒たちにそのような生き方を提供するのでしょうか。
ご縁があり、私と携わってくれているというこの未来の可能性達に私はやはり、「3年だけ」「大学に行くまで」の短期的な関係ではなく、「遠い未来」を一緒に考えるような関係性を築き、決して自分だけの利益などのためではなく、社会全体を一緒に今よりも素敵で、誰もが笑顔で自分らしく過ごせる社会を創っていきたい。
そのためには、教員自身がその先の未来を見据え、変化を前向きに捉えて対応できる力を身につけるようにしていくべきだと思います。今の時代の教師こそ「探究心」が求められているのではないでしょうか。
その学びを改めて教えてくれたこの一冊に感謝します。
予測不可能な社会を教師・生徒共に生き抜くために「学びの本質」と「学びの課題」に目をそらすことなく考え続けていきたいと思います。