ISO9001と経営:なおざりにされる顧客重視(5.1.2 顧客重視)
ISO9001と経営:なおざりにされる顧客重視(5.1.2 顧客重視)
■先義後利
経営哲学に「先義後利」がある。
この言葉が重用されるのは、これはきれい事ではなく、顧客との信頼を確立し経営を安定化させるためには、結局のところ「急がば回れ」「情けは人のためならず」という古くからのことわざのように、「誠実」こそが経営を安定化させることが分かっているからである。
しかし、「5つの大罪」の一つ「強欲」はこれをかき消してしまう誘惑をもたらす。
短期的にお金儲けの一番簡単な方法は「法律を守らないこと」である。
なぜなら、自分たちだけが有利な環境でビジネスができるからだ。
■コトが起きてからでは遅い
しかし、「先義後利」を無視した経営は時には会社を揺るがしかねない。
○ビッグモーター「利益至上主義」 異動社員が不正広める
2023年07月22日
中古車販売大手ビッグモーター(東京)による保険金の不正請求問題で、元社員の男性が22日、千葉県野田市で報道陣の取材に応じた。男性はビッグモーターが「利益至上主義でブラック企業だった」と指摘。全国の拠点で不正が起きた背景について、「異動をきっかけに波紋のように広がった」と語り、不正の手口などが異動した社員によって伝えられたとの見方を示した。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023072200331&g=eco
■顧客のためという誤謬
誤った解釈も会社を揺るがしかねない。
下記の「日医工」の事件は、元々は顧客の要望に応えるために、元々無かった生産能力を偽ったために起きた偽装事件のなれの果てである。
○日医工、258品目販売中止 経営合理化へ削減完了
2023/07/13
経営再建中のジェネリック医薬品メーカー、日医工(富山市)は13日までに、医薬品258品目を新たに販売中止すると発表した。一連の措置で販売品目数はピーク時の約1700から905に減り、経営合理化に向けた不採算品目などの販売中止は完了する見通しだという。
日医工は、工場での品質不正問題で富山県から業務停止命令を受け業績が悪化。今年3月に上場廃止していた。
https://nordot.app/1052127493540610341
■品質問題を無視した顧客満足は存在しない
ISO9001:2015にはリーダーシップの一つに「5.1.2 顧客重視」があり、その内容は以下の通りである。
トップマネジメントは,次の事項を確実にすることによって,顧客重視に関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。
a) 顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を明確にし,理解し,一貫してそれを満たしている。
b) 製品及びサービスの適合並びに顧客満足を向上させる能力に影響を与え得る,リスク及び機会を決定し,取り組んでいる。
c) 顧客満足向上の重視が維持されている。
きわめて普通のことが書いてある。したがって、ありきたりにこの文言を口に出したからといって、経営に役立つ行動はとれない。
なぜ「法令・規制要求事項」という文言が存在し、自社には何を求めているのか。
「顧客満足」を維持向上させなければならない理由は何か、そしてそのための行動とは何か
を具体的な戦略や組織運営にマッピングしなければならない。
お金のことだけを考える経営者にはでき得ない。
<閑話休題>