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60歳からの生き方を考える(40歳定年制が普及しないわけ)

■人の不安感は分からない

 先日、IC協会協会のセミナーで60代に関しての話題が取り上げられた。
 ICというのは「雇わない生き方、雇われない生き方」を標榜しており、基本は会社員ではない。従って、定年などと云うものには縁が無いはずなのだが、そう事は単純ではない。

 定年を間近に、IC的な働き方をしたいと考える人々もいるし、ICだって60歳はある種の節目であるのだろう。そのために、それを超えるのに不安感を覚えるのは当然である。

 とはいえ、正直よく分からない。最初の5年間は会社勤めをしていたとは言え、ゲリラ的な仕事であったし、それ以降はフリーに近い人生だったので、年齢の節目での不安感は知靴では分かっても実感はない。

 先日のセミナーで「健康の謎を解く」(アーロン・アントノフスキー)で、不安になるのは、以下の感触を得られないからだという。
・把握可能感
・処理可能感
・有意味感
逆に言えば、早めに「なんとかなる」という感覚を身につければすむ話ではある。

そうした意味では、以前話題になった「40歳定年」への対応は有意義だったと思う。

■浸透しない40歳定年

しかし、一時期話題になったものの、最近では聞くこともなくなった。

○東大教授が「40歳定年制」を提唱した本当の意味
40歳をキャリアの節目と考え直すほうがいい
2021/11/22

2012年に政府の国家戦略会議「フロンティア分科会」報告書で「40歳定年制」を提唱した東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏。多くの人が80歳近くまで元気で働ける時代だからこそ、キャリアプランもいったん40歳ぐらいで考え直したほうがいい、との提案だった。

https://toyokeizai.net/articles/-/575952

こうしたことの背景には以下の様な説明がある。

高度経済成長期には、まじめに仕事をしていれば、誰でも定年までハッピーに働くことができた。学校教育であれ社内教育であれ、20代で身に付けた知識や能力で、社会人生活を全うできた。しかし現状では、定年までハッピーに働ける人は少ない。AI(人工知能)やロボットの急激な進化で就労環境が大きく変化しているうえ、平均寿命の伸長で就労期間が延びているためだ。

しかし、だからといって「40歳定年制」は普及したかと言えばそんなことはない。
その理由を下記記事が挙げている。

○【あれから10年】「40歳定年制」は忘れ去られた? 全く浸透しなかった理由
2022.09.29
https://financial-field.com/household/entry-161577

企業はその人事制度を大胆に変えると言うことはしない。つまり、40歳を一つの節目としてキャリアステージを用意したり、そのための教育訓練の道筋を整備することを怠ってきた。そのため、早期退職制度やリストラと言った会社都合での排除の論理で、40歳以降の人材を廃棄してきたというのが結論だろう。

■幻想の世界

 自分は大丈夫という幻想に人はとらわれている。だから、突然目の前に定年と言うことを突きつけられると、不安感にさいなまされる。
 会社員であれば、突然生活の境界線が変わってしまう。

 いつまでも同じ世界は続かない。朝目が覚めると、それが昨日からの延長なのかも分からない。

 そこに不安を潜まさないためには、せめて10年ごとのサイクルで生き方を考えるべきである。10年ごとに定年がやってくると覚悟をきめれば、なんとかなると思うがどうだろう。

<閑話休題>

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