ジョブ型雇用人事制度のために(採用する側の思い、採用される側の思い)

■人事制度全体を設計しなおす必要がある

ジョブ型雇用あるいはジョブ型人事制度というと、ジョブディスクリプションすなわち仕事の定義を細かくすればいいという話で済むと誤解されているが、そもそも、優秀な人材を雇用する際に、社内に説明できるような言い訳として職務定義を細かくしても自動的に優秀な人材が入ってくるわけでもない。社内の人材も自動的に「優秀な人材」になるわkでもないし、即座に異動が自由にできるわけでもない。

人材マネジメント自体を戦略的思考で組みなおさなければならない。

人材マネジメントの要素としては下記があげられる。
①調達(もしくは採用)
②育成
③配置
④評価
⑤処遇(評価と連動させてはいけない)
がある。
また、社内の事業プロセスとも連動させる必要がある。

したがって単に、要員が足りないという理由での数合わせの採用は間違っている。
採用後の人事活動との連動は必須である。

■採用でのプレッシャー

それでも採用という側面は人事施策の最初の課題である。

すでに、優秀な人材が欲しいという企業側のニーズは切実になっており、ジョブ型雇用も、その流れで必然的になっている。これは、中途採用のことだけでなく新卒への対応も今までをは同じにならないことを示唆している。盛んに言われるように、新卒一括採用は時代遅れになりつつある。

それは下記のレポートでも指摘されている。

〇日本の新卒「採用基準」がガラリと変わりつつある訳
新しい評価基準が組み込まれるようになった
2022/05/06

賛否両論の日本型新卒一括採用だが、ここに来て大きな変化の時代を迎えている。

4月18日には、経団連でインターンシップで得られる学生情報を採用活動開始後に活用することを認める動きがあった。通年採用や職種別選考を実施する企業も、年々増加している。

・・・

VUCAの時代では、上述の通り、企業も上司も何が正解かわからない。この時代においては、社員一人ひとりが「本当に解くべき課題は何なのか」「その課題を解くためにこれまでにはない新しい方法はないか」ということを考え、試行錯誤を繰り返さなければ企業は生き残れないのだ。

このようなことから、VUCA時代には、今まで以上に自律的に課題を考えたり解決策を試行錯誤できる人材が求められている。

そして、各企業はこの要件を新たな人材要件として採用選考でも重視するようになってきている。

・・・

こうして、新卒採用選考においては、課題や解決策を考える創造的な業務を遂行できる能力が重視され、この新たな人材要件が、テクノロジーの進歩により、具体的な評価基準に組み込まれる、というケースが増えてきている。

新卒採用においてはさまざまな変化が起きているが、この人材要件の変化と評価基準への組み込みがもっとも本質的な変化と言えるだろう。

https://toyokeizai.net/articles/-/586573

入社後にどのような活躍をするのかは保証されていない。
しかし、彼・彼女に何を期待しているのかを示すことは重要な意味がある。
ジョブ定義はそのための有益な手段であろう。

■採用される側に選ばれなければ意味はない

しかし、こうしたことは企業側の論理である。採用される側の気持ちも配慮しないと、せっかくの人材が定着しない。

〇「成長したいけど、意味のない理不尽は嫌」今の若者が"ちょっと厳しい職場"をあっという間に辞めてしまう理由
"甘い環境"で教育を受けてきた結果だ
2022/04/29

現代の若者の多くは職場での「成長」を重視するが、それは「受け身」のものであり、企業が「成長させてくれる」ことを望む。それが叶わず、主体的な努力が必要な厳しい職場であることがわかると、躊躇なく辞めてしまうのだという。

https://president.jp/articles/-/56779

成長を後押しするのは企業だと自らの努力を放棄して以下のような論調がある。すべて真実ではないにしても、そうした考えがあるかもしれない。しかし甘い考えだと侮ってはいけない。ここ10年以上以上に起きている。大企業でのリストラは「社員を簡単に捨てる」企業の姿を浮き彫りにしている。いつ捨てられるのかわからない企業に愛着などわかない。

彼らの育成を漫然と新入社員教育や階層別教育でお茶を濁してはいけない。ジョブに基づく組織運営を目指すなら育成システムも改革しなければならない。

採用する立場と採用される立場は平等でなければならない。トレードオフが均等でない関係性は長続きしない。

<閑話休題>

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