戦略の変わり目(フードデリバリーは産業として成り立つのか)

■ギグワーカーの選択肢

ウーバーイーツがデリバリーを担う人々に責任を押しつけて、社会的コストを支払わないというビジネスモデルについては個人的には好きになれず、批判的な意見をあげている。

ビジネスを担う人々のリスクの取り方に偏りがあることはどこかで問題を引き起こすので限界を生じると思う。一方で、いったん「デリバリーサービス」を担う層が一定以上確立されている状況では、食に関わる産業構造も変わらざるを得ないだろう。

かつて、「出前」と呼ばれたサービスは人件費コスト、労働力不足などで消え去ったかにみえたが、別の形で復活したことは興味深い。こうしたデリバリーを選定にしたビジネスモデルとしてはデリバリーを前提としたピザのがあるが、これがもっと拡大し、いわゆる店舗を持たないゴーストレストランも増えるかもしれない、

その時に、ギグワーカーと呼ばれる層が不利益になることを避けなければならない。しかし、日本の法整備は弱者を守るという意味では腰が重く、なかなか解決されない。とはいえ、以前は「ウーバーイーツ」一択だったものが、複数あることは相対的なギグワーカーのパワーが確保でき、バランスが適切になるかもしれない。

■他業種との連携という戦略

ビジネスチャンスは、食に関する事業者だけに与えられるわけではない。廉価なビジネススーツを展開する企業の敷地にファーストフードのキッチンカーを出したニュースは、視野を広げることの重要性を感じさせる。

一方で、今までは考えなくても良かったコンプライアンス上のリスクも発生する。

業界に応じては許認可が必要であり、それを満たしていなければ事業はできない。

また、経営資源の安定化を確実にしないと、突然事業が立ちゆかなくなる。勝手に店舗を閉鎖すると云うことは労働争議につながりかねない。

■コンプライアンスの動向

 経営は常に戦略の見直しを迫られる。なぜなら、経営環境は常に変わるからだ。その中でも労働法は変わってゆくものなので注意して欲しい。

○転勤先どこまであり得る? 将来の勤務地や仕事、明示を義務化へ

2022年3月17日

企業が労働者を採用する際、採用直後だけでなく将来の勤務地や仕事内容についても明示するよう、義務づける方向になった。転勤や異動の範囲を予見できるようにすることで、労使のトラブルを防ぎ、労働者が将来の生活を設計しやすくする。
 17日に厚生労働省の有識者検討会がとりまとめた報告書案に方針が盛り込まれた。今後、厚労省の審議会でも議論し、労働基準法などを改正する。
 案では、入社時に東京都内の特定の支店で法人営業をする労働者が、広いエリアで多様な仕事をする可能性があれば、「東京23区」で「営業全般」の仕事をする、などと労働条件通知書に記載することを想定する。

https://www.asahi.com/articles/ASQ3K5HK4Q3KULFA00T.html

国内だけではない。海外の動向にも注意して欲しい。

ギグワーカーの権利が確立されつつある。いずれ日本にも適用されるだろう。

○フードデリバリー市場、競争激化でついに「再編」始まる?

2022/03/20

新型コロナの打撃に飲食業が苦戦する中、世界のフードデリバリー市場は拡大の一路をたどっている。共働き世帯の増加を背景に家事時短の需要が高まったことや、宅配ネットワークの拡大などが追い風となり、コロナ禍以前から堅調な伸びを示していた。そこへ世界的な巣ごもり消費が加わり、一気に需要を押し上げた。
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世界市場競争の激化に伴い、再編の動きも加速している。今後、国内市場の勢力図に影響を与えるポテンシャルとして注目されているのは、米フードデリバリー最大手・DoorDash(ドアダッシュ)の参入だ。
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盛り上がりを見せるフードデリバリー市場だが、長期的な視点から見た場合、どのような未来が待ち受けているのだろうか。
激戦で市場を制覇した者だけが生き残り、そこへ新たな市場参入者が挑むことで、現在は想像もつかないような革新的なフードデリバリーサービスが生まれているかもしれない。
あるいはサービスそのものより、配達スタイルがガラリと変貌している可能性は高い。すでに一部の地域で実証実験が行われているように、無人自動運転車や配達ロボットが人間の宅配員に代わって料理を届けるといったことが現実となるのではないか。
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その他、Uberがフードデリバリー強化に向けてスタートアップを立て続けに買収するなど、国外でも再編競争が過熱している。「単に料理を早く届ける」「加盟店が多い」だけでは勝ち抜けない時代に、各社がどのように対応していくのかが注目される。

https://zuuonline.com/channels/orixbank/237175

○フードデリバリー配達員や配車ドライバーの正社員雇用が欧州で加速、大きく変わるギグエコノミー

2022.3.21

スペンサー教授が指摘するように、ギグエコノミーで働く人々の労働環境は不安定なもので、テクノロジーを駆使した新たな搾取だとの非難が世界的に広がっている。これに伴い、各国ではギグエコノミーワーカーを守る法規制を設立する動きが少しずつ拡大している。特に、欧州域内でこの動きが顕著だ。
2021年3月、英国ではウーバーが配車サービスの運転者に対し、同国の法律の最低賃金を支払うほか、休日手当や年金の支払いを保証するとのニュースが報じられた。
もともとウーバーは、運転者を個人事業主のビジネスパートナーであるとし、正社員が享受する基本的な福利厚生を与える義務はないとの立場をとっていたが、英最高裁判所が下した運転手は正社員であるとする判決に従い、その方針を転換した格好となる。
これは、英国のウーバー配車サービスに限定される話であるが、同様の動きが欧州域内で散見されるようになっている。

https://ampmedia.jp/2022/03/21/eu-gig-economy/

○フリーランス保護法で収入は上がるのか──EU報告

2022年3月23日

主としてネットを介して単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の大半は、発注元と実質上の雇用関係がある従業員であり、しかるべき保護が必要だ――そんな内容の法案を、昨年末に欧州委員会(EUの行政機関)が発表した。
この法案(欧州議会の審議・承認を経て、各国で法制化される必要がある)によれば、以下の5つの基準のうち2つ以上を満たす場合、発注元の企業はギグワーカーの「雇用主」と見なされる。
「報酬を設定している」「服装や行動などのルールを設定している」「労働状況を電子的な手段で監視している」「労働時間や業務内容の選択の自由を制限している」「第三者のための就労を禁止している」の5つだ。
そして発注元が「雇用主」と認定された場合、ギグワーカーは当該企業の「従業員」ということになり、法的な最低賃金の支給や年金、有給休暇、失業保険、病休などの権利を享受できるとされる。
「こういう仕事はかけがえのないものだ」と、欧州委員(雇用・社会権担当)のニコラ・シュミットは言う。「こうした働き方を禁じたり、その成長を止めるつもりはない。ただ、新しい働き方が劣悪で危険なものにならないことを望んでいる」

https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2022/03/eu-285.php

■働き方の労働争議

 従業員との働き方に関して、経営側の制限も徐々に高まっている。リスクとして労働問題にも注意を向けるべきである。

○合理的理由のないシフトの大幅減、権限の濫用に当たり得ると判断(東京地裁 令和2年11月25日)

2022/03/15

 シフト制の中で働く方は社会に大勢います。多くの場合、この方たちはシフトに入れなければ収入を得られせん。それだけに、労働契約を結んでいる会社側が合理的な理由なくシフトを大幅に減らすことは、「権限の濫用」だとして認められないことになっています。

https://hrzine.jp/article/detail/3914

○「QB HOUSE」従業員が未払い残業代求めて団交申し入れ 「雇用関係は本社にある」

2022年03月16日

また法人事業所の場合は業種や従業員の規模に関わらず社会保険の適用対象となるが、個人事業所で理美容業の場合、強制適用外となっている。指宿弁護士は「QB HOUSEではなく個人事業主が個別に労働者を雇い入れる二重構造とすることで、社会保険に入らなくて済むようにしているのではないか」と指摘した。
会見に参加した男性は「QB HOUSE」という社名での求人を見て、店舗に面接に行った。面接相手はエリアマネジャーだったが、採用時には「スタッフ採用書」を記入しただけで、雇用契約書も労働条件通知書もなかったという。男性は「賃金規定もなく、有給休暇の取得もできませんでした。疑問を持ち、組合を結成して団体交渉を申し入れました」と訴えた。

https://www.bengo4.com/c_5/n_14252/

注:業務委託契約の乱用と訴えている。

■憂いていること

企業の価値を生み出している源泉は何なのだろう。アウトソースしようがしまいが、どこかで人という経営資源が関わってくる。誠実にそれらに対応しない企業は退場して欲しい。消費者も考えって欲しい。便利だという理由で誰かを犠牲にしていないだろうか?

それらを解決しないとフードデリバリーはいずれ3Kと呼ばれかねない。

<閑話休題>

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