ISO9001と経営:無視される生産性向上への取り組み(マイナンバーカードの教訓)
素人集団を烏合の衆と呼ぶ。
■ISOに取り組んでいるのに儲からないのはなぜだ
企業が利益を出す手段は大きく二つである。
一つは製品・サービスを強化して入ってくるお金を増やす。もう一つは、必要のないお金が出て行くのを防ぐである。わかりやすい言葉は「コストカット」だが、これは「経費削減」とは違う。当然、将来利益を生み出す可能性のあるものへの投資は削ってはならないし、生産性が低下する恐れのある、設備投資の中止や給与削減や人員のリストラなどはしてはならない。
品質は、一般的にはQCDと呼ばれる。DはDeliveryと呼ばれ、「納期」と対比される概念である。しかし、多くの企業は、これを「根性」で実現しようとする。それは間違っている。正しいアプローチはシステムによる生産性向上である。
■デジタル化に取り組む気がない政府
○6千人の個人情報、5人でパソコンに手入力…マイナカード混乱の現場
2023年6月16日
マイナンバーカードを巡る混乱が、全国で続いている。マイナカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」に、別人の情報が誤登録されていたある現場では、約5900人分のデータを職員5人が手作業で入力していた。この例は「氷山の一角」の可能性がある。
https://www.asahi.com/articles/ASR6H63MPR5VPIHB008.html
一般企業でこんなことをしたら馬鹿にされるだろう。
5人が6000人を担当。一人1200人。一体何日かかるだろう。
我々企業人にとって「時間」は貴重な資源である。このような作業は、派遣を使うかはともかくアウトソースを考えるだろ。
そもそも、システムの設計ができていないことが原因であり、その後始末なのだが、こうした入力チェックも自動化すべきである。「AI-OCR」の活用も検討すべきであるが、きっと考えつかないのだろう。
■ないがしろにされる支援プロセスの効率化
バリューチェーンではその機能分化として基幹プロセスと支援プロセスが説明される。基幹プロセス(企画、営業、製造、配送など)は、システム化が効率向上を比較的早く実感できるために投資は進みやすいが、総務や人事あるいは事務作業などは直接利益を生み出さないので投資が後回しになる傾向が強い。
そのため、下記の規格要求事項も、事務の生産性向上に焦点が当たらなくなる実体がある。
6.1.2 組織は,次の事項を計画しなければならない。
a) 上記によって決定したリスク及び機会への取組み
b) 次の事項を行う方法
1) その取組みの品質マネジメントシステムプロセスへの統合及び実施(4.4 参照)
2) その取組みの有効性の評価
リスク及び機会への取組みは,製品及びサービスの適合への潜在的な影響と見合ったものでなければならない。
注記1 リスクへの取組みの選択肢には,リスクを回避すること,ある機会を追求するためにそのリスクを取ること,リスク源を除去すること,起こりやすさ若しくは結果を変えること,リスクを共有すること,又は情報に基づいた意思決定によってリスクを保有することが含まれ得る。
注記2 機会は,新たな慣行の採用,新製品の発売,新市場の開拓,新たな顧客への取組み,パートナーシップの構築,新たな技術の使用,及び組織のニーズ又は顧客のニーズに取り組むためのその他の望ましくかつ実行可能な可能性につながり得る。
そのため、続く「6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定」にたいしても「間接部門」は何を設定して良いか分からず、設備投資の話に結びつかない。
それは、結局の所「8 運用」に結びつかないために、会社への貢献意欲につながってこない。
下記の「製品及びサービスの提供に関する要求事項」が、生産性向上に結びつける発想がなければ、無駄な仕事(1時間でできる仕事を5時間かけて行なうなど)が減るわけもなく、当然「ISOに取り組んでいるのに儲からない」という事態になる。
8.1 運用の計画及び管理
組織は,次に示す事項の実施によって,製品及びサービスの提供に関する要求事項を満たすため,並びに箇条6 で決定した取組みを実施するために必要なプロセスを,計画し,実施し,かつ,管理しなければならない(4.4 参照)。
a) 製品及びサービスに関する要求事項の明確化
b) 次の事項に関する基準の設定
1) プロセス
2) 製品及びサービスの合否判定
c) 製品及びサービスの要求事項への適合を達成するために必要な資源の明確化
d) b) の基準に従った,プロセスの管理の実施
e) 次の目的のために必要な程度の,文書化した情報の明確化,維持及び保持
1) プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつ。
2) 製品及びサービスの要求事項への適合を実証する。
この計画のアウトプットは,組織の運用に適したものでなければならない。
組織は,計画した変更を管理し,意図しない変更によって生じた結果をレビューし,必要に応じて,有害な影響を軽減する処置をとらなければならない。
組織は,外部委託したプロセスが管理されていることを確実にしなければならない(8.4 参照)
勝手に狭く解釈してはならない。
<閑話休題>