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戦略人事:基本給とは何か(定年後の再雇用とジョブ型雇用)
現実と理念をどのように整合性をとるのかが悩ましい
■気になったニュース
下記のニュースが気になって仕方が無い。
○基本給の格差 最高裁「性質や支給目的など踏まえ検討を」
2023年7月20日
定年後の再雇用について、仕事の内容が定年前と同じなのに基本給を半額以下にされたことが不当かどうか争われた裁判で、最高裁判所は「不合理かどうかは基本給の性質や支給の目的などを踏まえて検討すべきだ」とする考え方を示しました。正規雇用と非正規雇用の賃金をめぐり最高裁が基本給の格差について判断を示したのは初めてです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230720/k10014137051000.html#:~:text=定年後の再雇用,考え方を示しました。
上記のニュースは「定年後の再雇用で給与が半分のなることは妥当である/妥当ではない」という判断をするものではない。「基本給とは何か」を明らかにせよ、と言っている。
これは「賃金規程」に定められているから「非正規社員」は安い給与で良いというわけにはいかないこと示唆していると考えられる。
「同一労働・同一賃金」の原則にも違反する。
■基本給とは
基本給は「一定期間に必ずもらえる」報酬のことで金銭で支払われる。と言う程度の定義しかない。手当や交通費などの経費は含まれない。従って、役職手当、家族手当、その他の正社員であれば支給される福利厚生などの便益は非正規社員では恩恵にあずかれないので、賃金総額が下がることはあり得るだろう。
しかし、「基本給」とは何かという点での統一した見解はないのではないだろうか。だからこそ「最高裁判所は「不合理かどうかは基本給の性質や支給の目的などを踏まえて検討すべきだ」とする考え方を示しました」と記事にあるのだろう。
■時代が変わる
今から10数年前。55歳定年がまだあった頃、友人と話をしていたら「おんなじ仕事を任されているのに給料が半分だぜ」と愚痴を聞かされた。
当時は、50歳で役職定年。徐々に給与を下げ、55歳からの再雇用で60歳までさらに下げてゆく施策を多くの会社で採用していた。賃金コストを下げることに腐心している企業は多く、いまだにその傾向は変わらない。
しかし、その対応ではもはや立ちゆかなくなるのではないかと思っている。
○高年齢者雇用安定法改正の概要~70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずべき措置(努力義務)等について~令和3年4月1日施行
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000694689.pdf
政府の方針が正しいかどうかはともかく、定年という概念を無くして行く方向で動いている。定年がなくなると言うことを前提にすると企業がとれる戦略は限られてくる。
①高齢化する前に社員のリストラをする
もちろん再雇用の支援は各会社・社会で行なう必要はあるものの、組織能力を一定水準に保つために高齢者(中年を含めて)の解雇条件の緩和を求めて行くだろう。現実、40歳以上のリストラが普通に行なわれており、これが訴訟に発展しないのであれば、これが社会に受け入れられて行く素地になる。
②年齢や経験での給与アップを限定的にする。
若年層など経験がまだ無い社員や育成のための投資が必要な年代に対しては、一定の担保は必要であろう。しかし一定程度の水準に至ったのであれば、期待成果で給与を支払い、結果に応じてボーナスや次年度の給与水準を決めるやり方もありうる。そうした人事制度を検討したことがある。
■ジョブ型雇用への移行
いわゆる欧米型の職務給は日本の風土に合わないと言われており、ジョブ型雇用も日本式になるのではと揶揄されている。しかし、グローバル化は海外との賃金格差を許すはずもなく、各企業は柔軟な賃金支払いのためのメカニズムを求めている。
そして、社員のモチベーションアップが待ったなしの企業は動きだしている。
○ネットワンシステムズ、新人事制度導入‐月額給与額を全社平均8%引き上げ
2023/07/12
同社は「成長意欲を持つ人財が心置きなくチャレンジし、その力を最大限発揮できる環境を整える」人事戦略を策定し、その施策の一つとして、「プロフェッショナル人財の育成」、「人財が活躍するための環境の提供」を目的とした人事制度改革を行った。これらにより、同社のパーパス「人とネットワークの持つ可能性を解き放ち、伝統と革新で豊かな未来を創る」の実現を目指す。
これまでの営業職・技術職という枠組みを超えて、技術や市場・業界の専門性を持ち、顧客や社会の課題解決を行うICTビジネス職。そして、コーポレート領域の専門性を持ち、会社の事業を支え、 戦略的・安定的に会社を運営するコーポレート職の2つの職種を設置する。各職種における従業員の専門性を向上させることで、顧客への付加価値の提供と安定した経営基盤の確立を目指していく。
単に、安く使える労働力でしか「再雇用制度」を見ていない企業に明日はない。
彼らは労働力ではない。
企業の本来の活動を支える要素である。彼らと組織の関係性を改めて考えない限り、最初の問いに応えることはできない。
<閑話休題>
(その他の参考記事)
○定年後再雇用で基本給60%は不当? 「違法」とした高裁判決を最高裁が破棄、審理差し戻し 名古屋自動車学校訴訟
2023年7月20日
嘱託職員の基本給は「正社員とは異なる性質や支給目的がある」とし、詳細に検討すべきだとの判断を示した。
労働契約法20条 嘱託社員、契約社員など非正規の有期雇用労働者と正社員などの無期雇用労働者との間で、労働条件に不合理な差を付けることを禁じた規定。(1)職務の内容や責任の程度(2)配置や役割の変更範囲(3)その他の事情—を考慮し、相違が「不合理と認められるものであってはならない」と定める。2020年4月施行のパートタイム・有期雇用労働法8条にほぼ同じ内容が引き継がれた。