世間に転がる意味不明:ただ乗り戦略の行く末(インクカートリッジの再利用)
■興味深い判例
○純正品より2~3割安の再生インク業者の請求棄却 キヤノンのインクカートリッジ訴訟
2023/6/2
エコリカは、家電量販店などから回収したキヤノンの使用済みインクカートリッジに自社のインクを注入し、純正品より2~3割安く販売してきた。
しかし、訴状によると、キヤノンは平成29年に発売したインクで、残量を表示するICチップの仕様を変更。リサイクル品をプリンターに取り付けても「インクなし」と表示されるようになり、「使い続けるとプリンターが故障するおそれがある」との警告も出るようになったという。
正確な状況は把握できていないが、文字ずらだけ見ると「キャノンの純正のカートリッジ」に「純正でないインク」を充填して、「見た目はキャノンのカートリッジ」を「互換品」として売っていたビジネスモデルを邪魔されたので訴えたと読める。
これだけ見ると、何だかなぁと思う。
自社で開発したカートリッジならいざ知らず、人様のものを回収するという発想は、どうなんだろう。
訴えた側が不正競争防止法に引っかからないんだろうかと思ってしまった。
■リサイクルはどちらに分がある?
さて、インクカートリッジは使い捨てであり、リサイクルされず環境配慮がされていないかと言えばそんなことはない。私自身も、インクがなくなったカートリッジは量販店などの拐取ボックスに入れて、再利用に協力している。
○インクカートリッジ里帰りプロジェクト
使用済みインクカートリッジの回収・リサイクルを推進するプリンターメーカーの共同活動
https://www.inksatogaeri.jp/
厳密なところは分からないが、回収されたカートリッジは各メーカーでのリサイクルプロセスに渡されるようだ。ただし、非正規品は扱わない。そりゃそうだろう、標準プロセスで処理できるからこそのリサイクルなのでレギュラー品は対象外だ。
さて、上記の判例記事は少し不思議だ。
というのは、上記の「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」を見る限り、正規に回収されたカートリッジは各メーカーに戻る。にもかかわらず「家電量販店などから回収したキヤノンの使用済みインクカートリッジ」がなぜ手に入るのだろう。横流し品であろうか?
また、こうして製造された互換カートリッジは、以降再利用されない。
拾ってきたゴミを消費者に売りつけ、それはゴミのママ捨てられる。そんなメタファが想像される。
■アップリサイクル
人が不要と断じたものに価値を新たに付け加えるビジネスはあり得る。
「アップサイクルとは、捨てられるはずだったものに新しい価値を与え、元の状態より価値を高めること。価値が高くなることで、ものとしての寿命が伸びることが期待される。」
https://eleminist.com/article/1940
しかし、人が使っているものをかすめ取って安く売るというのは感心しない。
購入する側も考えた方が良い。
たしかに、プリンターを購入すると、そのメーカーからしかインクの調達ができない今のビジネス慣行が理不尽だというのはなんとなく分かる。しかし、解決する方法は、「技術」の開示を促す、あるいは「技術情報」を購入することで、企業努力を負荷して廉価なものを提供する産業プロセスを作ることだろう。
この判例を元に少し考える風潮ができるとうれしい。
<閑話休題>
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