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朝起きるのをやめたこと。私の1日は午後からはじまる。

どうしても、朝起きることが苦手だった。

子どもの頃、自室に電話の子機があり、朝の目覚めはそいつの呼び出し音だった。7時15分。けたたましいベルの音でなんとか目が覚め、子機をとることで音が止む。それでも、頭の中はもやがかかったようで苦痛だった。
小中高と、通学に45分から1時間以上かかったため、家を出るリミットは7時30分。両親も2人とも7時30分に家を出る。学校に間に合わなかった場合、自分で学校に電話するが「親から連絡してください」と言われ、泣く泣く父か母の携帯に電話する。
「今日も行けないの??」
ため息と呆れの混じる声を、私は一生忘れない。

朝が苦手という事実は、私の人間性を低めるような働きが多かった。
気合いが足りない、
メンタルが弱い、
準備が足りない、
1日の過ごし方が悪い。

大学進学するも、1限開始の9時になかなか間に合わない。結局、15回の講義の内、10回以上出席すればいいとのことで、出席率は3分の2。前日は早めに寝て、リュックに全ての荷物をつめ、起きて家を出るだけにする。それでも3回に1回は起きられない。
学校はまだ良いとしても、迫り来る「社会人」という立場においては、致命的だった。いくら真面目でも、いくら就業態度がよかろうと、まず職場にたどり着けないなど、話にならない。それは、私の気を重くさせた。

成績が悪いわけではない。受講態度も悪くない、むしろ優等生側で、テストや偏差値も平均よりは高い方だったと思う。
ただ、朝起きられないだけ。

精神疾患もあるが、午後の授業はほぼ出席できる。
18時からのアルバイトは出席率99%だ。(発熱や遅刻を除く)
仕事ぶりも評価してもらい、大学生には高すぎる給料をもらっていた。
「ばりばりのキャリアウーマンになりそうだねー」なんて周りの人に言われていた。
しかし、朝起きられない。

抗うつ薬も睡眠薬も飲んだ。
体内リズムを整える薬。ビタミン剤、栄養剤。
朝の楽しみを作る。朝予定を入れる。朝空調をセットする。
カーテンを開ける、日の光を浴びる、モーニングコールをしてもらう。
それでも、朝起きられない。

自分という体の操縦は、常に苦痛と不安が伴った。
18時からのアルバイトには行けるのに、朝9時の学校や仕事には行けない。
色んな人に責められているような気がしていた。
自分の「やる気」というものを、いくら奮い立たせてみても変わらなかった。
自分はなんてダメなやつなんだ、と思う。
皆と違う自分に焦った、不安だった。ショックだった。
ただ薄々、「自分は朝起きられないのだろうな」と気づき始めていた。

結局、新卒カードを蹴って、いくつかのところでパート勤務をしてみたが、14時開始のパートも辛かったり、午後勤務のはずが午前勤務に入ることになったりして、体調を崩してしまい、辞めて入ってを繰り返した。
11時開始のパートを1年弱続けたが、その1年は常時めまいがしていて死にそうだった。

午前中に目覚ましをかけて目を覚ますと、ものすごい気怠さとめまい、意識が混濁する、どうにかクッションで上半身を起こし、ベットから動けるようになるまでに1時間ほどかかる。

逆に、目覚ましをかけずに自然に目を覚ませば、そんなことは起きない。不快感もなく起きられる、ただ、それは午前11時半以降である。日によっては13時とか14時の時もある。
それでも、体も心も楽だった。
ただ、1日の始まりが、人より遅いだけ。

「朝起きるのが苦手です」と人に話すが、
「私も苦手だけどなんとか動いてるよ~大丈夫」と一蹴される。
世の中には「苦手」といいつつも起きて動ける人が居るのだと知った。
逆に、私は「苦手」と言って本当に動けない人間なのだとわかった。

今は数年かかって自分に適した勤務時間を編みだし、週三ほど16時~21時のパート勤務を続けている。
これが一番、きつくなく、コンスタントに働ける。体調も崩さない。
周りの友人や同世代の人とは生活リズムが合わないが、仕方ない。
私の1日は、いつも午後から始まる。

こんな人間もいるのだと、誰かに伝えたかった。

#自分で選んでよかったこと

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