【NYM】西地区チームが恐れる、バーランダーのフォースインパクトというシナリオ
3度目のサイ・ヤング賞を獲得した昨年のシーズン終了後、偉大なる投資家スティーブ・コーエンのポケットマネーで、40歳になるものの2年$86Mでメッツと契約したジャスティン・バーランダー。
現役最高のレジェンド投手はアストロズで2度の世界一になり、優勝請負人として満を時して世界のエンターテイメントの中心であるニューヨークのチームへ移籍しました。
ただし、バーランダー自身は開幕直前に怪我で離脱し、チームも7/28時点で首位ブレーブスに17ゲーム差をつけられ地区4位に低迷。ワイルドカード争いでも厳しい位置にいます。
メッツはここ数年のベテランの大補強で年俸総額はMLBでダントツの1位、贅沢税もふんだんに支払い、今季にフルベットしていました。
ただし、今シーズンのポストシーズン進出は諦めモード。
クローザーのロバートソンを放出し、今年は売り手に回りました。
そんな中、メッツの次のトレード候補として挙げられているのが、ジャスティン・バーランダー。
破壊力のある打線に比べて先発投手の選手層が薄いレンジャースや古巣のアストロズが移籍先の本命だとか。
さらにナ・リーグ球団でも今季球団史上稀に見る投手崩壊気味のドジャース、そしてポストシーズン出場圏内にいるジャイアンツも狙っているとか。
正直、40歳になったバーランダーは昨シーズンに比べて以下の通り成績を落としており、昨年までのような支配的な投球はできていません。
防御率 1.75 → 3.24
K/BB 6.38 → 2.53
WHIP. 0.83 → 1.15
バーランダーの特徴であるフォーシームはスピードが低下し、昨年に比べるとチェンジアップやカーブに頼ることが多くなり、高めにガンガンフォーシームを投げていたようなかつてパワーピッチングではなくなっています。
また、打球速度、ハードヒット率も悪化し、バッターにコンタクトされる機会も多くなりました。
ただ、シーズン全体を通すと期待した成績ではないのですが、シーズンが進むにつれバーランダーは以下の月別(5月、6月、7月)の成績の通り、調子を上げてきています。
防御率 4.80 → 3.33 → 1.69
WHIP. 1.10 → 1.37 → 1.00
特に直近では7/19のホワイトソックス戦では8回を投げ3安打、ソロホームランによる1失点、翌登板の7/25のヤンキースとのサブウェイ・シリーズでは6回無安打無失点の好投をしています。
バーランダーは非常にサラリーが高く、41歳となる来季以降も最大2024年まで契約が残るというハイリスクな契約であり、なかなか手を出しにくいのが現状です。
一方で、ここ最近は復調しているだけでなく、大舞台での十分な実績と勝者のメンタリティもある投手であり、ポストシーズン進出に向けたチームにとって加入するとなると大きなインパクトが期待できます。
ポストシーズンを狙うチームにとって最も避けたいことが、ライバル球団がバーランダーを獲得し、低迷していたチームから移籍してモチベーションを上げたバーランダーがシーズン終盤に支配的な投球を続けられること。
40歳ともいえども、バーランダーという選手にはまだまだ覚醒するエネルギーが残っているようにも感じるのです・・・。
今回はそんなバーランダーの過去3度の覚醒(インパクト)を紹介します。
ファイーストインパクト(2011年) サイ・ヤング賞、MVPの同時受賞
バーランダーは2004年のドラフト全体2位でタイガースに入団。タイガースは前年に119敗をするという今年のアスレチックスばりの弱小球団でした。
そんな中、バーランダーはマイナーをとんとん拍子に駆け上がり、2006年には先発ローテーションに定着。翌年以降も毎年のようにローテーションを守って30登板、200イニングを確実に達成する正真正銘のエースでした。
そして2011年が、彼にとってのファーストインパクト。
4月は2勝3敗と負け越すも、5/7のブリュワーズ戦でノーヒットノーランを達成してからブーストをかけ、7/15に5敗目をしてから無敗でシーズン終了。
結局、34登板、251イニングを投げ24勝5敗という成績を残しました。
もちろん満場一致でサイ・ヤング賞に選出されただけでなく、251イニングという労働量も評価され、首位打者で同僚のミゲル・カブレラ、OPS. 1.055を記録したボーティスタ、攻守にハイレベルな成績を残したエルズベリーといった野手を抑えてMVPにも選出されました。
セカンドインパクト(2016年 - 2017年) パワーピッチャーとして復活
バーランダーを今のバーランダーたらしめているのが、このセカンドインパクトです。
セカンドインパクトに至る前、バーランダーは続く2012年のレギュラーシーズンも17勝8敗の好成績を残すも、ワールドシリーズの1戦目から転落が始まっていました。
ジャイアンツとのワールドシリーズの初戦、パブロ・サンドバルに2打席連続でHRを打たれノックアウト、結局サンドバルはこの試合で3本のHRを打ちました。
翌2013年、2014年とともにローテーションを守り200イニングを投げ抜くも、WHIPは1.32、1.40と悪化。2014年は防御率は4.54でした。
さらに2015年は右腕の怪我の影響で20登板止まり。
長年の勤続疲労の影響か、30歳を過ぎたこともあって限界説も囁かれました。
ところが、翌2016年にパワーピッチャーとして復活しました。
再び年間通してローテーションを守り、200イニングを達成。奪三振数254はリーグトップでタイトルを獲得。
そして翌2017年も前年より成績は落とすも、8月末にアストロズへ移籍すると1ヶ月で5登板し、5勝。
この5登板では43奪三振に対して、与四死球はたったの1。計4失点でWHIPも0.65という、神がかり的なピッチングを披露しました。
ポストシーズンでもヤンキース戦で13奪三振の完投勝利するなど4勝し、そのままアストロズのワールドチャンピオン獲得に大きく貢献しました。
2015年に93.4mphのファストボールの平均球速は、2017年には95.3mphまで上昇。
この見事な復活を伏線にしたアストロズ移籍後の覚醒こそ、バーランダーがレジェンドになったセカンドインパクトでした。
サードインパクト(2022年) 39歳にしてトミージョン手術からのカムバック
さて、バーランダーは2019年にもサイ・ヤング賞を獲得。ゲリット・コールとのダブルエースでアストロズのポストシーズン進出に貢献しました。
しかし、ポストシーズンでは不調で1勝4敗であり、ワールドチャンピオンを獲得したチームの中で、苦しんでいました。
そして翌2020年、1登板だけして右肘を痛め、トミージョン手術を受けることになりました。
この時、バーランダーは37歳。
流石にバーランダーもお役御免なのかと思いきや、2022年にまたしても復活。
トミージョン手術明けということもあり、175イニング、一度故障者リストに入り28登板だったものの、18勝4敗で最多勝、1.75で最優秀防御率賞を獲得。WHIPもリーグトップでした。
フォーシームのスピードもリーグ上位に位置し、またしてもパワーピッチャーとしてのパフォーマンスを魅せ、3度目のサイ・ヤング賞を獲得しました。
こいつは不老不死、一体何者だ・・・。
フォースインパクト(2023年?)
そして、今シーズン。
故障で開幕から1ヶ月を棒に振り、低調な前半戦を過ごすも復調の気配を出しているバーランダー。
年齢やサラリーを考えると獲得に動くにはリスクが高いのは事実ですが、もし同地区のライバル球団がバーランダーを獲得しフォースインパクトが発生、またまたまた覚醒し、2017年アストロズ移籍後のようなピッチングを披露、一気にチームのギアを上げられるのは避けたいところなのです。
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