【MLB】ヤンキースはカルロス・コレアを獲得すべきだった。
カルロス・コレアがサンフランシスコ・ジャイアンツと13年$350Mで契約した。
メッツとディアズの契約延長から始まり、デグロム、ターナー、ボガーツ、ニモと$100Mを超える大型の契約が続いているこのオフシーズン。ほかにもウォーカーやタヤン、ペレスといったローテ3,4番手当たりの先発投手でも年平均が$20M近くになるような契約となっており、昨オフに続いてMLBのFA市場はかなり活性化している中で、またしても大型契約である。
他球団が積極的にFAで選手を新規獲得している一方で、我がヤンキースはリゾ、ジャッジとの契約延長であくまでも現状維持にとどまっている。
ヤンキースといえばビッグマーケットの資金力を武器に常にシーズンオフのリーダーとなっているイメージがあるが、実はそれも過去の話。
ここ数年はラメイヒューやチャップマン、そして今オフのリゾやジャッジのようにもともとヤンキースからFAとなった選手の契約延長やトレードでの選手確保が中心であり、他球団からの大型のFA移籍はコールくらいなのである。
ただ、そんな中、こんなニュースが。
来季に向けたのヤンキースのウィークポイントのひとつが先発ローテーション。コール、コーテズまではいいとして、3番手以降が弱くワールドチャンピオンを狙うチームとは言えない先発陣である。そのため、ここ2年で安定してパワーピッチングをしており、ジャイアンツからFAとなっているロドンはぜひとも獲得したいところ。
さらに、本記事内でもヤンキースがロドンに加え、カルロス・コレアも狙っているのではないかというウワサ(there’s also been some chatter linking the Yankees and superstar free-agent shortstop Carlos Correa)を述べており、ヤンキースがコレア獲得でどんなメリットがあるか考えていたのである。
そもそも、ヤンキースのウィークポイントで忘れてはいけないのがショートストップである。今季、新加入のカイナーファレファ(IKF)をメインに、終盤はルーキーのカブレラやペラーザも起用したショートストップのWAAは1.5にとどまった。これはMLB全体では15位であり、LAD(WAA : 2.7)、ATL(WAA : 3.5)、NYM(WAA : 3.1)、HOU(WAA : 2.7)といったシーズン100勝を超えたチームのショートと比べると弱点となっていた。
そこで、FA市場に残っていた大物ショートストップとして、カルロス・コレアの存在があったのである。
結果的にジャイアンツと契約してしまったものの、今回はもしヤンキースがカルロス・コレア獲得をしていたら、チーム力強化にどう繋がるのか紹介したい。
内野守備のグレードアップ
2022年シーズン、ヤンキースの内野守備は全体的には安定していた。
リーグチャンピオンシップシリーズでの目を覆いたくなるようなエラーはあったが、シーズントータルではリーグでも上位クラス(OAAベースではMLB全体で8位)の守備力であった。
(目を疑いたくなるようなエラー・・・)
ただ、それはドナルドソンとラメイヒューがメインで起用されていたサードの守備力によるもので、ショートストップはいまいちであった。
また、ヤンキースの内野陣は全体的に肩が弱い。
もともと強肩だったドナルドソンも37歳となった今ではMLB平均以下であり、ラメイヒュー、トーレス、IKF、リゾに至ってはそれぞれMLBの中で下位レベルである。
このような弱点があるヤンキースの内野に、カルロス・コレアの加入は大きなインパクトがある。
今季、チームがアストロズからツインズに変わり、内野の連携や球場への適応、投手のタイプが異なったからだろうか、コレアのOAAはマイナス(-3)を記録しており懸念点ではある。ただ、昨年までの3年間のOAAはMLBの全ショートストップの中で6位、2021年に至ってはゴールドグラブ、プラチナグラブを獲得している。
また、ヤンキースの内野陣にはない強肩を武器にしており、左中間が広いヤンキーススタジアムでは左側の守備力が求められ、コレアは非常に魅力的なのである。
今のヤンキースのショートストップのレギュラーであるIKFは2020年にゴールドグラブを受賞したものの、それはサードだった時の話。ショートストップとしては特に前進する打球に弱く、コレアを獲得し、IKFをサードへコンバートすることで最大限良さを発揮できるのではないか。
ヤンキース打線にはないバッティングスタイル
ヤンキース打線は、ボールの見極めがよくフォアボールが多い一方で、三振も多いという特徴がある。
フォアボールでランナーをため、強振し、長打で得点するというのがパターンであり、マネーボールの王道を実践しているのである。
ただ、攻撃のバリエーションが限られるため、投手のレベルが上がるとフォアボールを選ぶことも難しくなり、ストライクゾーンの中でうまく攻められ、なかなか得点ができないという弱点もある。
アストロズとのリーグチャンピオンシップが典型的な例で、4試合でフォアボール12個に対し、三振は50個。まったく相手投手にプレッシャーをかけることなくあっさりと4連敗を喫した。
コレアも基本的にはボールの見極めがうまいバッターである。また、右方向へも長打を打つことができ、ライトが狭いヤンキーススタジアムを本拠地とするチームに非常にマッチしたバッティングスタイルなのである。
さらに、ヤンキースの各打者と比べて三振が少ない。
特にヤンキースの主力はことごとくオフスピード(チェンジアップ、スプリット)に弱く、リゾやIKFを除いて3割から4割の空振り率であり、ゾーンに投げられた落ちる系の球をブンブンと振り回すのである。
一方で、コレアはオフスピードに対して特別打率、長打率が高いわけではないものの、空振りしにくい(25%程度)。
ヤンキースはチーム全体として同じような攻め方で抑えられてしまう傾向があり、コレアを打線に加えることで攻撃のバリエーションを増やすことができる。
ポストシーズンでの勝負強さ
ニューヨーク市民がヤンキースの選手に求めるもの、それはポストシーズンでの活躍である。
ヤンキース、というかアストロズ以外のファンにとって、コレアのポストシーズンの強さはトラウマレベルである。
2017年のリーグチャンピオンシップシリーズでのサヨナラダブルから始まり、
2019年のリーグチャンピオンシップシリーズではサヨナラHR。
ほかにも2020年にはレイズとのリーグチャンピオンシップでサヨナラHRを打ち、
2021年には同じくリーグ優勝決定戦でレッドソックス相手に勝ち越しHRを放つ。
もともと毎年王レイオフに進む強豪アストロズにいたこともあり、プレイオフ通算79試合に出場し、18HR、59打点。
大舞台での経験と勝負強さは誰もが認めるところであり、ポストシーズンになると途端に打てなくなるヤンキースのバッターとは大違いである。
また、英語だけでなくスペイン語も使えるコレアはピンチでマウンドに向かうシーンも数多くあり、そのリーダーシップもチームメイトから頼りにされている。
以上、カルロス・コレアは守備、バッティング、ポストシーズンでの強さ&リーダーシップにおいてヤンキースに欠けているピースを完全に埋めることができ、Make Differenceな存在なのである。
ただし、ヤンキースとしても先発のロドンを次なる補強のターゲットにしているうえに、スタントン、コール、ジャッジに続いて高年俸の選手を抱えることはぜいたく税の存在や選手編成を考えてもよろしくない。
また、ショートにはボルぺ、ペラーザ、カブレラと若手がそろっており、補強の最優先事項ではなかったのであろう。
特に、ボルぺはMLB全体で5位の有望株で、長打の打てるショートストップであり、リーダーシップも含めてジーターの後継者の期待が高い。ペラーザ、カブレラにしても今シーズン終盤にMLBでもプレーした。
さて、ヤンキースにとってコレアがいかに重要な存在だったかを並べたものの、冒頭で述べた通りジャイアンツに行ってしまったのである。
コレアといえば2017年のポストシーズンでサイン盗みをしていたアストロズの一員だったこともあり、ドジャースファンにはかなりアンチが多い。ファン心理を考えると、ドジャースはコレアの獲得には消極的だった模様。
もともと、ドジャースとジャイアンツはライバル関係にあり、2021年のポストシーズン、地区シリーズでは近年まれにみる死闘を繰り広げていた。
そんな緊張感の高い試合にコレアが加わることになり、来年の直接対決は注目である。