おでんを食べたような”ほっ”とした満腹感!
ふらりと立ち寄ったおでんやで「この大根、味がしみているねぇ・・・」とふっと口からこぼれ落ちる。
口に入れた瞬間ではなく、喉元から胃に到着して落ち着いた頃合いに、
じわじわと「そうなんだよね~」と頷き、本を閉じた。
「昨夜のカレー、明日のパン」(著:木皿泉さん)は、ギフと一緒に暮らすテツコさんを中心に描かれ、2人の会話がほのぼのとして楽しい。
その中でも“ギフ”の人となりが一番強出ているのが「山ガール」の話ではないだろうか。
ギフは、テツコの友達「山ガール」(ギフは師匠と呼んでいる)と山登りの下山をしている途中にビールの飲みすぎで体調が悪くなる。
師匠は、“何が何でもやり切ってやる”という力がみなぎり、ギフもその力を感じて今までが嘘のように立ち上がることができ、歩き始める。
ギフは同時に、かつて奥さんから本気の思いをぶつけられて救われたことを思い出し、師匠に「あんなもん見せられたら、体から何かがすこんッと落ちますよ」と語り出す。
この場面を読み、人が変わる瞬間というのは、「真剣な思いや言葉で火がつく」「あるいは吹っ切れる」ことで、その瞬間を日々、待っているのではないかと思った。
ある出会いからまた次の出会いへ、最後まで味わい尽くすことでできる、
まるでおでんを食べたような”ほっ”とした満腹感。
これからの寒い季節に風邪防止になるような一冊をどうぞ召し上がれ!
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