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塩サバ女ってかっこいいと思う。

塩サバが好きな女性を書きたいと思って短編を書いてみました。
自分とちょっぴり似ているようで、一本筋が通った普通の女性でもあるかと思います。
ご覧いただけると嬉しいです。🥰🎀

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タイトル:塩サバ女ってかっこいいと思う。

平日11時45分頃からお弁当屋「ミドリコック」はいつも作業着を着た工事関係者やスーツ姿の男性で溢れかえる。その順番を待っている列の中にただ1人異彩を放っている女性がいる。長身の赤いカーディガンと花柄のロングスカート。
ピンと伸ばした背筋が様になって後ろ姿は美しい。

さて前から見てはどうだろうか。
その感想はひとまず置いといて、女性の行動に目を移してみよう。

スマホをいじるでもなく、空を見上げてブツブツとなにかつぶやいている。
「しお、しお、しお」
頭の中は注文するひと言をいかに発するか。それのみである。

目の前の男性がレジ袋を受け取り、いよいよ女性の出番になった。
深呼吸をして「し」と発音しかけたところで、
「あら、赤りんごちゃん。今日も塩サバ弁当ね」
水玉のエプロンが若々しい印象の50代ほどのおばさまが一瞬にして女性の楽しみを奪った。

「わたしはこのひと言にかけているのに…」と赤りんごちゃんと呼ばれた女性は悔しがる。

いつも赤い服を着ているから「赤りんごちゃん」。
どうせ呼ばれるのなら、「塩サバ女」がいいと思いながら、「はい、お願いします」と大きな声で答えた。


しかしながら、厨房内では塩サバ女と呼ばれていると思っている。

時には香ばしいからあげ弁当に誘われるが、塩サバの味に惚れ込み、オーダーは塩サバ弁当オンリー。

特に「ミドリコック」の弁当は、身がふっくらした塩サバでご飯はたっぷり。それにゆで卵、ひじき煮、肉じゃがが添えられていて栄養満点だ。

会社から徒歩12分ほどかかるのもなんのその、週に2~3回足しげく通っている。

自分で言うのもなんだけど、塩サバ女ってかっこいいと思う。
これから先、塩サバが高騰してもわたしは愛する食事を捨てはしない。

生きる糧であり、明日を生き延びるのだ。

書き続ける楽しみを感じています、その想いが伝われば嬉しいです~