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今日のジャズ: 4月22日、1961年@サンフランシスコ

Apr. 22, 19621 “Well, You Needn’t”
by Miles Davis Quintet with Hank Mobley, Wynton Kelly, Paul Chambers & Jimmy Cobb at the 'Blackhawk' in San Francisco for Columbia (In Person Friday and Saturday Nights at the Blackhawk)

4月21日紹介曲に続く、奇才セロニアスモンクによる1944年作曲作品の、サンフランシスコにあったジャズクラブ、Blackhawkにおけるマイルスのライブ演奏。

The Blackhawk on April 22, 1961 by Leigh Wiener

このジャズクラブは、著名録音スタジオの向かいにあった。そのスタジオは、かのモンタレーポップフェスティバルでジミヘンドリクスやサンタナを野外で録音したウォリーハイダーが設立したもの(気になる方は最下部の記事をご覧ください)。

名盤Kind of Blue(1959年)と同様のリズムセクションながら、ライブのためか冒頭からマイルスが沸騰したヤカンのように熱い。それは、刺激的なジミーコブによる前のめり系のダイナミックなドラムから繰り出されるリズムに起因するかと思われる。

マイルスは何をやってもスタイリッシュで、完成度が高く素晴らしいが、この曲で特に分かる凄みは、演奏していない時にもその存在感が感じられること。

2:55から先に登場したテナーのハンクモブレイがソロを取るが、自己リーダー演奏のような奔放なスタイルではなく、緊張感があり抑制が効いた演奏から始まり、中盤から加速してブロー、盛り上がって行く展開。

後ろからマイルスが睨みを効かせながら、目配せ等で、この展開をコントロールしている姿が想像出来る。4月8日紹介曲のモブレイの演奏も大人しかったが、ジャズメッセンジャーズ時代も同様に個性を主張せず、リーダーの指示に従えるのがモブレイの従順さか。やはりマイルスの前においては、物足りなさを覚える。先の曲の紹介にも書いたが、そんなモブレイを応援したくなって心惹かれてしまうのは、何故だろう。

ピアノのウイントンケリーによるノリの良いピアノソロを経て7:20からの終わりに向けた展開は、モブレイの抑制から放たれて盛り上げるという、出だしと共にマイルスの楽曲に対する統制と構成美の表れ。

そのケリーのマイルスとモブレイのソロの後ろで奏でるピアノを比較すると、明らかに緊張感が違う。マイルスのソロ中はキレキレ、一方のモブレイのソロ中は饒舌で自由度が高いが、顕著なのは、4:10の明らかに音程外れの匙を投げたような音。名手のケリーにしては珍しいから、故意的な仕業かと勘繰ってしまう。

因みに、この曲にはモブレイとケリーのソロが割愛された短い編集バージョンが存在しているそう(以下記事を参照)。両者共に決して悪い演奏では無いが、確かにマイルスのパートと比較すると冗長気味な事もあってカットされたものと推測される。

ああ、憂き目に遭ったモブレイよ、もっとブローしてくれ、と思うのは私だけでしょうか。そんな愛おしいモブレイに心惹かれる方は、以下の物足りない演奏もどうぞ。

収録日は、ベース奏者のポールチェンバースの26歳の誕生日でもある。常に安定感抜群でバランスを重視しながら機関車のように4ビートで邁進する名手の登場作品は以下からどうぞ。

最後に、本ライブ録音場所の向かいの著名録音スタジオが気になった方は、以下演奏と解説をどうぞ。

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