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今日のジャズ: 11月3-12日、2024年@R.I.P.

この約十日間で、モダンジャズ全盛期から息長く活躍した第一世代の偉大なるジャズレジェンド、90歳を超えて健在、ジャズ史の数少ない生き証人だった世界のお宝級の大御所三名が立て続けに天に召された。

追悼の意味を込めて、これまでに取り上げたご三方の演奏に関する記事を再掲しますので、ご興味があればご覧ください。

先ずは、主要メディアでも取り上げられたクインシージョーンズ(享年91歳、1933年3月14日イリノイ州シカゴ生誕〜2024年11月3日ロサンゼルス没)抜群のプロデュースとオーケストレーションの才能があり、マイケルジャクソンの諸作品や『ウィーアーザワールド』は、この方無しには生まれなかったのは間違いありません。傑出した才能でジャズとポップスを本流で繋げてポピュラー音楽の発展に寄与した偉大なるプロデューサーです。

Netflix「ポップスが最高に輝いた夜」より、
“We Are The World”収録スタジオの入口にクインシーの
直筆で書かれた「エゴは入口にお預けください」の張り紙
まさにクインシーのプロデュース想像力の象徴です

そして、アルトサックスの巨匠、ルードナルドソン(享年98歳、1926年11月1日ノースカロライナ州バディン生誕〜2024年11月9日フロリダ州デイトナビーチ没)ハードバップ誕生の記録と言われる1954年2月21日録音の『バードランドの夜』とブーガルー旋風を巻き起こして日本でもカバーされた『アリゲーターブーガルー』が有名で、ブルースフィーリングに溢れた演奏が真骨頂です。

ドナルドソンのインタビューを見たことがあるのですが、歳を召しても記憶が鮮明で当事者の生き証人として詳細を語っている内容には重みがあります。以下の『バードランドの夜』の秘話を語ったインタビューでは、主役となったアートプレイキーはカリフォルニア州の拘置所に居たため、レコーディングする為に(ブルーノートレコードの創設者アルフレッドライオンが工面して)保釈金を払うことによって晴れて自由の身となり車で収録当日にニューヨークに到着、司会のピーウィーマーケットにお金を渡して、(ブルーノートオールスターズのはずが)「アートプレイキー」をそのバンド名の頭に名乗らせたと、半ば信じられないような話をしています(当初予定していたドラマーはアートテイラーだったとも語っています)。

そして最後に、黒人清音派ドラマーの代表格、世代と音楽ジャンルを超えて活躍し、名盤創出に多数貢献したロイヘインズ(享年99歳、1925年3月13日マサチューセッツ州ボストン出身〜2024年11月12日ニューヨーク州ナッソー群没)私が敬愛するミュージシャンの一人で、これ迄書いた記事で最頻出のドラマーです。

実は、ヘインズが亡くなった一昨日の日本時間の夜に、近所の「まいばすけっと」に立ち寄ったところ、以下記事のラインナップの上から二番目、ヘインズによるリーダー作品『ウィ・スリー』の冒頭曲『リフレクション』が流れていて、私のプレイリストに入っているので足を止めて耳を傾けていたところでした。そしてヘインズ逝去の記事を今日目の当たりにして、改めて本記事を書くにあたって確認したら、なんとこの演奏の録音日が66年前の今日でした。偶然ですが、このような形でヘインズが立て続けに何らかのメッセージを私に送ってくれているとするならば、それは身に余る光栄なことです(涙)

以下の記事を辿って行くと、バップ、ハードバップ、モード、フリージャズを経て二十一世紀でも一線級のジャズミュージシャンと活躍したヘインズの人生がほぼモダンジャズの歴史と言っても過大評価にはあたらない無いレジェンドです。過去にも取り上げましたが、ヘインズが加わっている、ニューヨークタイムズの記事曰く“the greatest photo in jazz history" という演奏時の写真が確固たる証拠の一つです。

Charlie Parker(当時33歳、翌年没), Thelonius Monk(同35歳、64歳没), Charles Mingus(同31歳、56歳没), and Roy Haynes(同28歳、99歳没) performing at NYC's Open Door on September 13, 1953

ジャズ全盛期の若かりし頃には帝王マイルスとマンハッタンをスーパーカーでカーレースした、という逸話もご本人が語っています。以下紹介曲の中で個人的にどれか一曲を選ぶとするならば、どの演奏も澄んだキレがありリズムの崩し方のスパイスが効いていて素晴らしく甲乙は付け難くて非常に悩ましいのですが、上から四番目のオリバーネルソンの名盤における、ジャズレジェンドに対峙して端正ながら絶妙なリズムによる活気と息吹を送り込むセンスが存分に発揮されている、唯一無二の燻銀の演奏を選びます。NHKのラジオ番組「ジャズトゥナイト」の2024年11月2日放送「ルディ・ヴァン・ゲルダー 生誕祭」でも取り上げられていた曲で、特にシンバルワークが聴きどころです。

ドラムマガジンが追悼記事を掲載していますのでご紹介します。

これらの訃報を聞いて、同世代のドナルドソンとヘインズの共演作を探してみたのですが、何故か見当たらないのが不思議です。私が見つけられなかったのか、本当に無いとするならば、相性の問題なのか、そもそも記録されていないのか、謎が残ります。

さて、90歳を超えた今もなお存命ジャズレジェンドは、ソニーロリンズ(94歳)、穐吉敏子さん(94歳)、ケニーバレル(93歳)、渡辺貞夫さん(91歳)とデイブグルーシン(90歳)が思い付きます。穐吉さん、ナベサダさんとグルーシンは来日公演が今年あるように演奏活動を続けていますが、さすがに高齢だけあって、ロリンズもバレルも引退しています。

精力的にツアーを続けているのは、そこから僅かながら若い、モードジャズ世代のロンカーター(87歳)、ハービーハンコック(84歳)、ボブジェームス(84歳)といった方々でしょうか。今年一月のカーターのブルーノート東京公演のライブレポートはこちらからどうぞ。

健在のジャズレジェンドの更なる活躍を願いつつ、天に召されたレジェンドを感謝の気持ちを込めて偲んで本日は締め括りたいと思います(Rest In Peace/Requiescat In Pace/合掌)。

本日も最後までお付き合い、どうも有難うございました。おやすみなさいませ。

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