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公衆衛生の世界への扉

”感染症はミクロとマクロ、両方の世界を行き来できるのが楽しい”

そうつぶやいたのは国内外で活躍する感染症内科医である。彼女の何気なく言ったそのひとことが、進路に迷っていた私の背中を押した。微生物レベルから患者集団レベルまで、ズームの段階、つまり視点を切り替えながらアプローチできることが感染症に携わる醍醐味であるという意味であったのだろう。当時はその言葉の真意を正確に捉えることができなかったにもかかわらず、まるでこどものように心の底からワクワクしたのを鮮やかに記憶している。
その出会いから数年の間に、臨床から研究にフィールドを移しながら感染症に携わり、やがて公衆衛生の世界に飛び込んだ。

2020年を迎えた直後、新型コロナウイルス感染症が世界的なパンデミックとなった。この賢く意地悪なウイルスによって、感染拡大の度に保健所の業務はひっ迫し、激務の日々が続いた。

”保健所の仕事は、蛇口をひねれば当たり前のように水がでる水道のようなもの”

心が折れそうになったとき、新規採用職員を迎えた日の保健所長の言葉を思い出す。保健所は区民の命を守るため365日フル稼働することで、健康危機管理における「最後の砦」の役割を担っているのである。
コロナと共生する時代となり、予防的アプローチとして健康づくりの重要性が再認識されている。今後も視点を柔軟に切り替えながら、感染症等の健康危機管理や健康づくりに携わっていきたい。

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