【読書録】河瀬季『ITエンジニアのやさしい法律Q&A 著作権・開発契約・労働関係・契約書で揉めないための勘どころ』
ざっくりどんな本?🤔
「著作権」「開発契約」「労働関係」「契約書のチェックポイント」の4つの視点から、IT職の人間に関わりが深そうな法律の概要を学ぶことができます。
あくまで概要とこんな判例があるんですよ、の紹介なので、入門書として考えると良さそうです。
以下、目次の抜粋です。
【目的】 この本から得たいことは?🏁
会社の商談や副業の業務委託契約など、契約に関わる機会が増えたため、契約書の抑えるべきポイントなどを学びたい
(主に副業の方は個人で仕事をするので)不利益やトラブルに至らないよう、もしくはそのような事態が生じた場合に備えた知識を身に付けたい
【成果】 この本を読んで得られたものは?🎖
1. 『請負契約』と『準委任契約』の特徴・メリデメを改めて整理、認識できた
請負契約:成果物に対する報酬の支払いであり、受注側が契約不適合責任を負う(= 受注者は納品後の不具合修正などを見越して費用を含めている)
準委任契約:作業(≒ 工数)に対する報酬の支払いである
2. 『契約不適合責任』
受託開発に関わっていると「瑕疵担保責任」は耳馴染みがありますが、2020年4月施行の民法改正で「瑕疵」「瑕疵担保責任」という用語は廃止され、「契約不適合責任」に改められていることを知りました。
契約不適合とは、ざっくり「納品物の種類・品質・数量に関して、契約の内容に適合しないこと」を指す
本書P102の側注によれば、瑕疵は『「期待する性能がないこと」と解釈されており、現行法における契約不適合も瑕疵と同じ意味だと考えられています。』だそう
法律事務所など他資料も参照すると、以下のようなアップデートがあったらしい
改正前民法において解釈の意見が割れていたものが明示的にされた
発注側の救済手段(権利)が「損害賠償請求」「契約の解除」に加えて、新たに「履行の追完請求」「代金減額請求」が認められた
など
3. システム開発の受注者が負うプロジェクトマネジメント義務
PM職をやっているため、個人的には一番大きな学びだったポイントです。
受注者はプロジェクトマネジメント義務を負い、これに反すると債務不履行責任が問われる恐れがある、ということで
本書ではこの内容を以下の通り整理されています。
まさにPjMの役割ですね。
恐ろしいのがこの義務は契約締結の前段階でも課せられる、と考えられているという話。
本書ではP088にて「スルガ銀行・IBM 訴訟」の事例と共に触れられています。
契約前の段階では、要件もまだ定まっておらず曖昧な情報が多い中、
想定している開発の内容やリスクについて、受注者側の責任が問われているという話ですね。
一般的に、提案にあたって説明する範囲とは思いますが、そこで大きな考慮漏れなどがあった場合に受注側の過失とされる恐れがあるのか….. と思うのと震えました。。
【まとめ】 おすすめポイント💡
2020年4月施行の民法改正も反映されており、会社員として粛々と仕事をしている上でも知っておくべき要素はたくさんありました。
概要把握として本書を読み、気になったポイントは深掘りするために他の資料などを参照するとよさそうです。
また、「成果」では割愛しましたが、4章で各種契約書ごとに見るポイントが具体的に書かれており、副業やフリーランスに転向した場合に契約書を締結する際には改めて照らし合わせて確認したいな、と思いました。
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