
仏像を模したスイーツについて 令和日本の「カワイイ無罪」
こんな記事を見かけた。
奈良県橿原市にあるクレープ専門店「bichecrepe_nara」で、大仏様が鎮座するその名も「奈良クレープ」が発売された。
— Ayako Kimishima (@kimi_aya_) January 7, 2025
大仏様は抹茶チーズケーキで作られており、合掌して瞑想する姿と抹茶の色合いが相まって、どこか厳かな雰囲気が漂っているように見える。https://t.co/QA8EciHEDe pic.twitter.com/oDLA2tvDhw
「大道廃れて仁義あり」ならぬ「信心廃れてカワイイあり」な現代日本を象徴するスイーツ……。そもそも合掌は如来像の印相として変で、アジアで見かける無知な欧米観光客向け土産の定番意匠。ただし、日本には法華経見宝塔品に従い釈迦如来が合掌してる作例(谷中天王寺など)も多くあったりする。
もちろん、昔からこういうの(地蔵せんべい)もあるっちゃあるんだけど、バカ欧米人目線を内面化したブッダ・スイーツを忌避する位のプライドは保って生きたいものだと思う。
さらにこんな記事も読んだ。
編集部員が伊豆の函南町で「あみにょん焼き」というお菓子を買ってきました。かんなみ仏の里美術館が所蔵する実慶の重文阿弥陀如来像の尊顔をモデルにした焼き菓子で、御当地牛乳から出るバターミルクを使用。美味しくて救われる感じ(?)のお味です。グッドデザイン賞も受賞したとのこと。 pic.twitter.com/M4jd0VqqPc
— 仏教タイムス (@bukkyotimes) January 14, 2025
食う(空)に事を欠いて……。令和ニッポソの「カワイイ無罪」には際限が無いのだろうか?
こういうのを観て腹が立つとか怒りが沸くとかはないけど、「うわっ……無知って怖いな。くわばらくわばら」という気持ちになることは否めない。迎合的に報ぜざるをえない(カワイイ無罪という流行に逆らえない)伝統仏教業界の人たちもちょっと気の毒ではある。
日本の伝統芸術として確立された華道にしても、そもそもは仏尊への花供養から発展していったものだろう。和菓子の洗練もまたおそらく仏教の供養儀式と密接に関わってきたと推察する。仏頭を「カワイク」デザインした土産菓子は、そのような文脈から随分かけ離れている気がする。
歴史や伝統と切断され、ただ眼の前に「モノ」としてある仏像を「カワイイ」基準で情報処理して菓子(スイーツ)として売り出す。もちろん前例はあるので抵抗感も生まれない。仏教を伝持する業界の人々も、流行に棹さす経済的効用と伝統に根ざした良識と天秤にかけて沈黙せざるを得ない。なんともお寒い時代ではないか。
(Twitterのつぶやきをもとにまとめました。)
~生きとし生けるものが幸せでありますように~
いいなと思ったら応援しよう!
