奨学金は社会人以後の手かせ・足かせに
私は、大学時代、親が教育費をほとんど負担してくれず、日本育英会(現在の日本学生支援機構)による奨学金とアルバイトで、教育費と生活費をまかない、卒業しました。
当時、漫画家のいしいひさいち氏の処女作である4コマ漫画で、「バイトくん」という作品がありましたが、アルバイト学生は貧乏ながらも、何か楽しげな雰囲気を持っていたと思います。
と言いつつも、私は、アルバイトで、月に25万円以上稼いでいた時期もあり、確かに、アルバイトを週に何日も入れていましたから、忙しかったような気もしますが(忙しさについて、よく覚えていない)、そんなに生活は厳しくもなかったですよ。
奨学金は、社会人になってから、きちんと返済し終えましたが、私は、国立・自宅生・無利子型だったので、大きな貸与額ではなかったこともあり、返済は、7~8年で完了できました。
ところが、今は、国立大学ですら、授業料が値上がりし、貧乏ならば、国立大学へ行け、とばかりは言えない時代になりました。
私立大学は、なおさら、年々、授業料が値上がりしています。
このような情勢で、奨学金を借りると(特に、有利子型)、社会人になった途端、数百万円~一千万円などという大きな借金を背負い、それが手かせ・足かせとなって、その後の人生をしばることになります。
これは、日本よりずっと学歴社会の傾向が強いアメリカではなおさら顕著であり、アメリカでは大学卒とそれ以外とでは、年収にものすごい差が付くので、多額の奨学金を借りて、大学を卒業しようとするのだとか。
その奨学金返済に苦しむ学生は、卒業後に奨学金免除の対象となる軍隊に志願する者も多いと聞き、命を張って大学に行くんだなと感じたものです。
日本でも、奨学金を借りている学生は、現在、2人に1人と言われており、私の時代より、ずいぶん増えていると言われています。
ちなみに、私の時代の大学進学率は、だいたい20%台でしたが、現在の大学進学率は50%台なんですから、その半分が奨学金を借りているとすれば、今の世の中には、奨学金返済に苦しむ人が多いのは、容易に想像できますね。
私の家では、子どもは、幼稚園~大学までオール私立であり、学費はずいぶんかかりましたが、現在の情勢下では、奨学金で社会人になってから、その返済に苦しむ人が多いのはよく知っていましたから、学資保険(こども保険)やら、積立預金やらで、学費は準備するようにし、どうやらこうやら、子どもには奨学金なしで、大学まで行かせることができました。
この奨学金返済に苦しむ人が多い中、日本学生支援機構の奨学金返済について、人材確保を目的に、社員の奨学金返済を企業などが肩代わりする動きが広がっているとの報道がありました。
※朝日新聞、2023年8月18日朝刊一面等
日本学生支援機構は、2021年4月から、奨学金の貸与を受けた本人に代わり、企業が奨学金の全額もしくは一部を日本学生支援機構に直接送金できる形で「奨学金返還支援(代理返還)制度」を始めたと言います。
当初は65社だったものが、増え続け、2023年7月時点で972社で、利用人数も2021年度の813人が2023年7月末時点で2,057人と増えているとのことです。
人員採用が厳しい業界である建設業や医療関連など制度を利用する企業は多岐にわたり、想定以上のニーズがあったとのことで、利用が広がっているようです。
「奨学金返還支援(代理返還)制度」を活用している企業には、企業に一定期間勤務するなどの要件を課しているところもあり、どちらにせよ、社会人になってからの手かせ・足かせになるのは間違いないようですが、返済に苦しむ人には朗報かもしれませんね。