故日野原医師によるオスラー博士の生涯
「恩書」というものがあるのならば、私には、少なくとも2冊の本があります。
①『あなたはこうして成功する』大島淳一著・産業能率大学出版部刊
この大島淳一とは、ペンネームであり、後に、知の巨人と言われた故渡部昇一博士(上智大学名誉教授)が、若き日に記したものです(1968年初版)。
私は、この本を千回以上読んでいますし、今も毎週のように読んでいますが、今も頭に染み入っています。こんなに実践的な本はないと思っています(今、買い換えて4冊目)。
②『道は開ける』D・カーネギー著・創元社刊
この本は、日本で300万部以上売れた世界的ベストセラーで、戦後、まもなく書かれた「悩みを解決し、人生を新たに始める」ための実践的な本です。
私は、高校2年生の時に出会っており、特に、20代までの間、ボロボロになるまで読んでいました。どれだけ、人生の指針になったか計り知れません。
で、②の『道は開ける』の冒頭の章、「今日、一日の区切りで生きよ」の一番初めに出てくる人物、医師のサー・ウィリアム・オスラーという人物が、以前から気になっていたんですよね。
少し前に、医師で、2017年に105歳で亡くなった日野原重明博士の関連書籍を読みました。
日野原重明博士は、京都帝国大学を卒業後、聖路加国際病院院長などを歴任された著名な医師でした。特に、100歳を超えても現役の医師として活動されていたのを記憶されている方も多いでしょう。
その関連書を読むうちに、日野原博士が、米国医師のオスラー博士を信奉しているとの記載があり、あぁ、②の『道は開ける』のサー・ウィリアム・オスラーのことなんだなと気付きました。
何と、日野原博士は、若き日の1948年、そのオスラー博士の伝記をとりまとめ、出版しており、現在は、それが復刻され、『医学するこころ オスラー博士の生涯』(日野原重明著・岩波現代文庫刊)から出ています。
私は、早速、取り寄せ、読んでみました。
オスラー博士は、1919年に70歳で死去されている人ですから、今から100年以上前の医学の黎明期に、カナダ・アメリカ・イギリスの4つの大学で、教授を歴任し、『内科学の原理と実践-臨床医ならびに医学生のために-』など時代を代表する著作も好評を博しました。
ただ、何よりも特筆すべきは、その高潔な人柄であり、患者に接するときも、聖書に記された黄金律、「何事も人びとからしてほしいと望むことは、人びとにもそのとおりにせよ」(新約聖書マタイによる福音書)を実践していたことだと言います。
そして、②の『道は開ける』にもあるように、オスラー博士は、若き日に出会ったトマス・カーライルによる「我々にとって大切なことは、遠くにぼんやりと存在するものに目をやることではなく、手近にはっきりと存在することを実行することだ。」という「今日一日の区切りの中で生きる」ことを実践していました。
「今日のことを精一杯やり、明日のことを思いわずらうな」
オスラー博士が、若き日にカーライルから教えられたこの言葉は、若き日の日野原博士を刺激し、その後、100歳を超えた時点に至るまで、日野原博士に強いインパクトを与え続けていたと言います。
オスラー博士は、シェークスピアのマクベスのセリフを好んで引用したと言います。
「おれの思想に、行動で冠をかぶせるために、思いついたらすぐ実行だ」
伝記を読んで、オスラー博士がものすごいことはよくわかりました。で、私がどうするって? まぁ、早速、シェークスピアの『マクベス』を買って読んでみようっと(^^)/。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?