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原田マハ『楽園のカンヴァス』→エンタメとしての美術

ご無沙汰してます書きたいことが多いんだけど怠惰でまとまった時間を取れなかったため折角書き始めても腐らせてしまいがちでその反省も踏まえて今回は一気に書き上げようと思ったんですけど明日予定があるのにめっちゃ深夜に書き始めてしまったせいで詰んでますそりゃあご覧の通り焦った文体にもなるわけです。


焦りは禁物。


大学が終わってから(フル単)しばらく本をしっかりとは読んでいなかったのだが、旅行に行く機会があったのでまた読み始めた。読書っていうのは一度始めたら案外早くに生活に入り込んでくる、ある種幸せなウイルスのようなもんっすね。

原田マハ『楽園のカンヴァス』を読んだ。

小説と美術の両方が好きな自分にとってキュレーターでもある原田氏の作品はとっても相性が良い。中学生の時に読んだ『暗幕のゲルニカ』もクソガキには重めの小説だったはずだが、楽しく読破できた記憶がある。

今作では主題がアンリ・ルソーの『夢』である。この絵とそっくりな『夢をみた』という絵画をめぐって物語が展開していく。

(あ、そうそうこのnoteは小説を紹介したりあらすじを話したりするのが目的なのではなく、ただ思ったことなどを書き、というか打ち殴るという文章である。ゆえにあらすじは省略させていただくよ~)

この小説の全体を通して、特に気にいった点は以下の二点である。

一つ目は単純にストーリーの構成である。

この小説は全部で11章で構成されているが、最初と最後の章は実質プロローグとエピローグである。残りの9章、ほとんど全ての章に「転」がある。それも、毎回異なる角度で。新たな人物の登場や新事実の発覚などが、とにかく休ませる暇もなく降り注いでくる。

作中には物語のカギを握るルソーに関する手記、あるいは小説のようなものが登場する。

その内容とそれ以外の部分の内容のバランスも綺麗に取れていて、手記のことを忘れてしまう前に手記が登場するし、そもそもの話の筋を忘れてしまう前に手記がいったん終わり、もとの話に戻る。単純に俺の記憶力と相性が良いだけの可能性もまあないことはないが、作りこまれた内容であることは間違いないと思っている。

すげ~と思ったし、多分すげ~って言ってた。新幹線の自由席の中で。


続いて気に入ったのが絵画の描写。

絵画を文字で説明することは、本来だいぶ野暮なことだと思う。文字にできないから描いているに違いないからね。

なんだけど、この作品においてはそれが許される。俺のようなクソ素人ではなく、登場人物のような絵画のプロフェッショナルの視点だと、絵画はより詳細に表現されるからだ。そもそも作者がプロフェッショナルだから、とにかく表現が豊か。

こういう絵なんですよ~だけじゃなくって、こういう絵で、この部分はこんな感じで、こういうところが特徴的で…etcと、その絵画を客観的に説明するにおいての正解(たぶんそんなものは存在しないのだけど、それに近いもの)を教えてくれる。学芸員の解説、いやそれ以上の分かりやすさじゃないか?

この小説は「史実に基づいたフィクション」なので、本作の中心となる『夢をみた』という絵画以外は、ほとんど実在する絵画。

読みながらその絵を調べるかどうか本当に迷った。

結果として調べながら読んだんだけど、正解だったなと思う。作者が想定していたものかはわからないが、新たな絵画、そして美術的知識に触れながらページを繰るという読書体験は、ブチアゲだった。楽しいのよ

それであのとってもハッピーな読後感を得て、参考文献のページを目にして作者のリサーチ力すげえなあと思った後は、どこまで史実なんだろうと調べてみる。ブチアゲ:セカンドシーズン

あのドラマティックな瞬間はマジであったんですね?!とか、あれはフィクションなんですか?!あの話を創れるってなんなんですか?!とか二方向のオッタマゲである。俺の美術体験の原点であるパブロディエゴ中略ピカソがかなり登場したので、個人的にはここもブチアゲでした。

このタイミングで登場した絵画について調べてみてもそれもそれで楽しかったかも知れんと思っている。でも後悔はゼロです。


そんな感じで、エンターテインメント性に長けていて、美術の知識がない人も楽しめるいい小説だったな~

と言いたいんですけど、さすがに最低限の美術の知識または関心がないとちょっと疲れちゃうかもなあとは正直思う。

まあでもそれはどの小説でもそうな気はする。主題に興味もてなきゃしんどいのは当たり前で、絵画という特性上それが如実に出てしまうだけだろうな。

あとこれはマジで個人的に、登場人物が途中でややこしくなってしまった。ちょっとページを戻ったりした。これは俺が世界史じゃなくて日本史選択であることと理由は同じで、カタカナの登場人物を覚えることがちょっと苦手だからだ。日本人だったらそんなことはない(今作はそんなに登場人物が多いというわけでもないので)。たぶんこれは慣れだと思う。鍛錬します。


でもおすすめできる小説であることは変わりない。小説と絵画という二つの表現形態が混ざり合った素敵な小説でした。



(一気に書き上げた!!!現在午前4時!!!!風呂は朝の俺に任せる!!!おやすみ!!!!!!!!!)



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