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俺の消しゴム

 大学の授業というものはとても興味深いものもあれば、ひどく退屈な授業もある。この差は高校生までの授業で感じる差とは比にならない。差に差があるということだ。差に差があるとかいうスッキリしないフレーズが居心地悪そうにこちらを見ているが、そこはスルーでいこうと思う。

 退屈な授業でも、大教室で大人数が受けている授業であれば別に何をしていてもばれることはないので、それぞれが好きなことをしている。インスタを見てるキラキラさん、ネット麻雀をしているアホ面、課題に追われてるロン毛君、後ろのほうでメイクしてるギャル、真面目に授業を聞いているメガネ、そんな光景を眺めながら若干まじめに授業を聞いているというのが日常だ。
 基本的にノートはiPadで取ることも増えてきていることもあるが、紙媒体も使う。消しゴムを使い、机に軽く置いたつもりが机から落ちてコロコロと転がっていった。誰かの足元にたどり着いた私の消しゴムは怯えながらこちらを見ていた。きっと踏まれそうな、蹴られそうなそんな恐怖に怯えているのだろう。
 その誰かの足元とは、あらあら、なんてこった、課題に追われているロン毛君じゃありませんか。ついていない、実についていない。こういうときはインスタを見てるキラキラさんとかメイクしてるギャルの足元に転がって、拾ってもらって、なんか会話のきっかけが作られる、みたいなのが相場じゃないのか。よりによってマジもんの限界大学生の足元に転がっていくなんて、どういうつもりだ。とか消しゴムに対して怒りそうになったが、よく考えたら消しゴムに今の形を作ったのは自分ではないか?まあいい、そんなことより消しゴムをどうするか。とりあえずは隣の席のやつに借りようか。そんなことを考えていたら、そのロン毛君が軽く足を動かした瞬間、私の消しゴムは蹴られて前の方へ転がっていってしまった。そもそもその消しゴムはパチンコ玉くらいの大きさだったし、もう寿命を迎えるのだからそろそろ変えるつもりだったから別に良いのだ。

 授業が終わり、仲の良い友人がこちらまで来た。いわゆる陽キャ男子だ。何かと思ったら「この消しゴム、お前のでしょ」と言って、掌からパチンコ玉のような消しゴムを出してみせた。ありがたいとは思いつつも、「結局お前かい!」と、ついつい突っ込んでしまう。
 そういや小学生の頃に国語の授業で扱った、消しゴムが転がっていってトカゲが拾ってくれる物語はなんていうタイトルだったっけか。


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