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曖昧な依頼についての覚え書き

仕事において上司やクライアントから曖昧な依頼を受けることがある。「会議資料作っておいてください」とか「コミュニケーションについてのお話をお願いします」とかである。

依頼を受ける側(以下,請負側)としては,依頼が曖昧だから困る場合もあれば,曖昧だからこそ自由にできてありがたい場合もある。この分かれ道は,依頼主がどのような経緯で仕事を依頼してきているのかによる気がしている。

今回は,請負側として,どのような経緯で依頼された場合に困りやすく,それに対してどのような対処がありうるのかを考えてみたい。

依頼主が曖昧な依頼をする経緯

依頼主が曖昧な依頼をする経緯には最低でも3パターンあると思う。

(1)依頼主にとって仕事内容がどうでもいい場合
(2)依頼主に解決策が思い浮かばず,どうしたらいいのかわからない場合
(3)依頼主にとって仕事内容の具体的イメージが曖昧としている場合

このうち,請負側として(1)と(2)は比較的困りにくく,仕事内容を自由にできる場合が多い。

問題は(3)である。(3)の場合は困ったこと(たとえば,依頼主が仕事内容に口を挟む)が生じやすい。

以下では,「コミュニケーションについて講演してください」という曖昧な依頼を事例に(1)〜(3)の場合について考えていく。なお,この事例における仕事とは講演することであり,仕事内容とは講演内容を意味する。

(1)依頼主にとって仕事内容がどうでもいい場合

依頼主にとって仕事内容がどうでもいい場合,請負側としては大変ありがたい。どのような仕事内容でも特に口を出されることはなく,自由にできるからである。(もちろん極端なことはしないという前提です)

依頼主にとっては「講演をすること」自体が大事であり,その内容にこだわりはない。講演さえしてくれればそれでOKなので,「コミュニケーション能力」について話してもいいし,「コミュニケーションの機能」について話してもいい。「コミュニケーションとは何か」でもいい。内容は何でもいいのである。ただし,「高齢者に向けての講演」や「英語での講演」などの最低限の条件が設定されている場合もあるので,その条件はクリアしている必要がある。

また,(1)の場合,依頼主にとっては請負側が誰であるのかの必然性もそこまでない。すなわち,講演をしてくれれば誰でもいいので,Aさんでもいいし,Bさんでもいい。例外は「Zさんに講演してほしい」という条件を付ける場合である。それでも,仕事内容に対する口出しはないであろう。

(2)依頼主に解決策が思い浮かばず,どうしたらいいのかわからない場合

たとえば,「婚活している男性がコミュニケーションについて悩んでいる。ただしどうしたらいいのかわからないので,コミュニケーションについてお話してくれませんか?」のような依頼が,「(2)依頼主に解決策が思い浮かばず,どうしたらいいのかわからない場合」にあたる。

この場合も請負側は「解決に向けて」という前提をクリアしていれば基本的に自由に仕事内容を設定できる。たとえば,「コミュニケーション能力を高める方法」について話してもいいし,「話すことではなく聴くことが大事です」という話をしてもいい。なんなら,「そもそもコミュニケーションについて悩む必要はない」という話でも問題ないと思う。

依頼主も解決策がわからないから,その道に精通している人(専門家)に仕事を依頼するのであり,専門家の仕事内容には基本的に口を出さない。「もう少しわかりやすく説明してほしい」などの口出しはあるかもしれないが,内容そのものに対して変更を要求したりすることはないであろう。

ちなみに,(2)の場合は,(1)に比べて請負側が誰であるのかの必然性は高い。少なくとも,依頼主の悩みを解決できそうな相手に依頼する必要があるので,誰でも良いというわけにはいかない。専門家の中から選ぶという点で(1)に比べて,請負側を誰にするかの選択範囲は狭まっている。

(3)依頼主にとって仕事内容の具体的イメージが曖昧としている場合

問題は(3)である。この場合に問題が起きやすい。問題とは「依頼主が請負側の仕事内容に口出ししてくる」である。

依頼主は仕事内容に対して熱意(何かしらの気持ち)はある。だから,請負側が呈示した仕事内容に口出ししてくるという問題が起きる。たとえば,「コミュニケーションについて話してください」という依頼を受けたので,請負側が「コミュニケーションにはどのような機能があるのか?」という内容で講演案を呈示したら,「それだと受講者はあまり興味が湧かないと思うので,もう少し面白い話にしてください」などと依頼主が口出ししてくるというように,「ここはこうしてほしい」とか「こういうのを付け足して」とか「こういう話はできないか?」とか後出しで口を出してくるときがある。

請負側としては正直,「そういう要望があるなら最初からそれを伝えてほしかった」と思うのだが,「仕事内容に口出し」問題の根っこには,「目標が依頼主と請負側でズレている」があるのだと思う。

目標のある依頼主が何らかの事情により,それが伝わらない曖昧な依頼をしてしまうと,請負側はその目標を知らないため,独自に目標を設定して仕事内容を考案する。請負側が独自に立てた目標が依頼主の目標とたまたま一致していたら良いが,一致していない場合に,依頼主はどうしても自分の目標を達成したいために,請負側の仕事内容に口出しをしてくるのであろう。

なので,この場合に生じやすい「仕事内容に口出し」問題を解決するには互いの目標を共有するしかない。依頼主としては,自分が曖昧な依頼を出したことにも一因があるのだから,仕事内容に口出しするのではなく,あくまで仕事の目標としてどういうことを考えているのかを丁寧に伝える方が良い。一方,請負側も,仕事内容に口出しされたときは,今一度依頼主の目標を確認すると,仕事の引き受けを継続するか,辞退するか,仕事内容をどうするかなどを決めることが可能になるであろう。

互いにとって気持ちよく仕事をするためには,目標レベルですり合わせをし,コミュニケーションを取っていくのが必要なのかなと思う。

ちなみに,目標がある依頼主が何らかの事情により曖昧な依頼をしてしまうのは以下の3パターンの理由かなと思う。

(3-1)内容の具体的なイメージが依頼主に湧いていない
(3-2)依頼主が請負側と方向性(目標)を共有していると勘違いしている
(3-3)依頼主がただ単に説明不足

まとめ

長くなってしまったので,今回考えたことをまとめておきます。

今回は,「曖昧な依頼を受けた請負側にはどのような問題が生じるのか」「それに対してどのように対処できるのか」について考えました。

まず,請負側が曖昧な依頼を受ける(依頼主が曖昧な依頼をする)経緯は,

(1)依頼主にとって仕事内容がどうでもいい場合
(2)依頼主に解決策が思い浮かばず,どうしたらいいのかわからない場合
(3)依頼主にとって仕事内容の具体的イメージが曖昧としている場合

の3パターンあると考えました。

この中で,(3)の場合に問題が生じやすく,その問題とは,「請負側が考えた仕事内容に依頼主が後から口出ししてくる」というものでした。

この「後から口出し」問題が生じるのは,「請負側が抱く仕事への目標と依頼主が抱く仕事への目標との間のズレ」があるからだと考えました。

なので,「後から口出し」問題を解決するためには,互いの目標のすり合わせのためのコミュニケーションが必要であると結論づけました。

以上がまとめです。ちなみに,「仕事」に関しては中原先生(立教大学)のHP(ブログ)が勉強になりますので,ご紹介をしておきます。


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